オケピ!


脚本、作詞、演出=三谷幸喜
作編曲、音楽監督、指揮=服部隆之
ルビ吉観劇記録=2003年(大阪)

■右はプログラム。読み応え充分の内容でした。
【このミュージカルについて】
三谷幸喜が初めて手がけたミュージカル。初演は200年の夏。タイトルの頭に
“The Musical about Musical”とあるように、ミュージカルの裏舞台を題材にした作品。ミュージカルの裏舞台と言っても、それはオーケストラ・ピットに限定される。ミュージカルでは『42nd STREET』や『コーラスライン』などに代表されるように、いわゆるバックステージものは、実にオーソドックスなテーマなのだが、日本製では珍しい??

【物語】
オーケストラ・ピットにいる13人それぞれの、生活や人生をおもしろおかしく、時にはホロリとさせながら見せていく物語…としか言いようがない(笑)。ミュージカルの開演前から、途中の幕間をはさんで終演までを、舞台はひたすらオケピの中だけで、一切の舞台転換もなく進んでいく。
【感想】
長いです。とにかく長い!一幕が1時間50分。20分の休憩を挟んで二幕が1時間20分。6時30分に開演して、終演後に時計を見たら10時を軽く回ってました。もう少し煮詰めた方が完成度も上がるんじゃないでしょうか?
それから大阪公演に限って言えば、会場が「大阪フェスティバルホール」で2800人収容の会場。大きすぎる!俺など幸いにしてSS席が手に入ったんだけど、それでも舞台の間口や空間そのものがデカ過ぎて、とても舞台を見る環境じゃありませんでした。これはかなりのクレームです。

と、感想はこんな文句から入るんですが(笑)、舞台そのものはとても楽しいものです。やはり本がよく出来ていると思うし、三谷さんの書いた本をきっちりとその呼吸で演じられる役者を揃えた…とそんな感じがしました(当て書きなんでしょうケド)。服部隆之の音楽も、ミュージカルのツボを心得た作り。好印象でした。
でもミュージカル・ファンから言えば、これはやはり“三谷芝居”であって、ミュージカルと名乗るにはどうなんだろう?という気持ちも拭えません。役者が個性溢れる面々で本当に楽しく豪華なんだけど、ミュージカルに耐え得る役者は天海祐希、戸田恵子、川平慈英くらい…。つまり“歌”“踊り”“芝居”の三要素が満たないと、ミュージカルはつまらない。ここの役者はもちろん芝居に関しては文句なし。歌はギリギリOKとして、踊りに関してはまったく…。なにしろあれだけの大きな舞台での演目だし、長時間の公演ということを考えれば、大ダンスナンバーのひとつも欲しいところだと思うのです。先に挙げた三要素はいずれも重要なんだけど、やはりミュージカルの場合“歌”と“踊り”が“芝居”にほんの少し優先されるものだと思うから。
【ルビ吉の俳優雑感】
天海祐希(ハープ)…ハープ奏者はおしとやかなお嬢様というイメージで誰しもが思っていたら、とんでもなく“サセ子”だった。という役どころ。天海祐希のような大女におしとやかさとか“サセ子”感があるかないかと言えば微妙なんだけど(笑)、そこを持ち前のコメディエンヌぶりをまじえて見事演じきっていた。それとこの人はやはりいるだけで美しい。動くともっと美しい。ショーの華ですな、まったく。
白井晃(コンダクター)…オーケストラのリーダーでありながらも、主演女優のわがままに振り回され、またオーケストラのメンバーからも突き上げられる中間管理職的な役どころ。バイオリニストの妻と未練を残しながらも離婚し、ハープに恋するも彼女は実はサセ子だしで情けなさ満載。白井さんは芝居全体の中でそんなコンダクターの役どころを、我々に伝えてくれました。しかしながらコンダクターだけを見つめたときに、彼の持つ情けなさはあまり感じ取れませんでした。見ていないけど、初演の真田広之の方がそのあたりは上手く演じていたのでは?と思います。
戸田恵子(バイオリン)…コンダクターの元妻。現在はトランペット(寺脇康文)と熱愛中。戸田さんの恋愛劇って、ちょっと不思議というか不釣合いというか色恋が似合わないというか(笑)。彼女の芝居自体は、おそらく本が戸田さんで当て書きされてるから、彼女の芝居そのもの。いつも見ている戸田恵子さんの芝居でした。それにしても、戸田さんは歌が聞きやすいッス。きっと声がいいんだなぁ、この人は。
瀬戸カトリーヌ(チェロ)…今回イチバンの見っけもの!そこそこ歌えるし、動きも独特のコミカルさ。ピアノ(小日向文世)、サックス(相島一之)、ドラム(温水洋一)と4人で歌う『気になって気になって演奏どころじゃない』というナンバーは、一度聞いただけで頭に刷り込まれ、幕間の休憩中、ずっと歌ってました。この歌の時の瀬戸さんは、見ているだけで笑わせてくれます。
布施明(オーボエ)…ひとりだけ妙に重鎮な存在感でそこにいる、という感じでした。ま、確かに布施さんは芸能界の重鎮なんでしょうケド。芝居のリズムが他の人たちと違い、何て言うか、三谷芝居っぽくないというか、布施明は布施明、とそんな感じ?(笑) 歌もソロナンバーがあるんですが、そちらの方もミュージカルソングと言うよりは『君は薔薇より美しい』そのままって感じでございました(笑)。スミマセン、上手く言えません(涙)。

モドル