ハウ・トゥー・サクシード

作詞・作曲:フランク・レッサー
脚本:・エイブ・バローズ、ジャック・ウェインストック他
原作:シェパード・ミード
演出:菅野こうめい

ルビ吉観劇記録=1996年(宝塚)、2000年(大阪)
2007年(東京)
【観劇記】
 このミュージカルで驚くべきは、初演が1961年だということ。ここで描かれるサラリーマンの出世物語は馬鹿馬鹿しいながらも、現代になお共感させる何かがある。もしかしたらサラリーマンの内面は、この40数年であまり変わっていないのかもしれない。思えば新入社員こそ毎年“新人類”だの“宇宙人”だのとその変化が取り沙汰されるが、不思議と彼らも30代で結構平均的なサラリーマンに落ち着いていくのが現実。「あんなオヤジにはなりたくない!」と意気込んで、格好こそお洒落にしてみても、サラリーマンとしての根っ子の所は結局今も昔も大して変わらない気がするのである。

 サラリーマン談義はさておき、ミュージカルである。2007年版の今回は主役に西川貴教を迎え、コメデイ色の強い楽しい舞台となった。俺は音楽番組などで聞く彼のトークから、笑いのセンスを大いに評価していたが、舞台でもそれを裏切らなかった。ただ歌についてはミュージカルとあまりにもかけ離れているため微妙なところ。しかし彼なりにミュージカルを意識した歌い方であったため、まるでダメということはない。むしろフランク・レッサーの名曲が新鮮に聴こえたと評価するべきか。
 ヒロインのローズマリー役は大塚ちひろ。この役は彼女のように“美人系”ではなく“可愛い系”が合うと俺は思う。ローズマリーの友人・スミティ役は入江加奈子。コメディ・リリーフの味わいを持つスミティだが、入江加奈子は加減よく弾けていて好演。この演目を見るとき俺が注目するキャストは、ミス・ジョーンズ役。ジョーンズは最終場近くでBrotherhood of Man」というソウルフルなナンバーを歌うのだが、今回の浦嶋りんこは見事であった。さすがFUNK THE PEANUTS!

 あまたあるミュージカルで俺の五指に入る作品が、この『ハウ・トゥー・サクシード』だ。作品のいちばんの魅力は音楽と脚本。フランク・レッサーの曲はバリエーションに富んでおり、いずれも心地よかったり元気にさせてくれたりでとにかく楽しい。ストーリーは単純なようで、ビジネス、恋愛、ヒューマンと多くのテーマを内包していて飽きさせない。また全体はコメディで見せながら、時々考えさせられるシリアスタッチになるのも魅力的だ。この作品を初めて観のは、真矢みきと純名りさ主演の宝塚版。それ以来上演を楽しみにしているのだが、2000年に大阪だけで上演された高嶋政伸&高嶺ふぶき主演版と今回くらいしか公演されていない。残念である。

 ちなみに95年のブロードウェイでの再演では、主演が『プロデューサーズ』のマシュー・ブロデリックと、『Sex and The City』のサラ・ジェシカ・パーカー。このセレブ夫妻(97年に結婚)が主演を務めるという、豪華な舞台であった。これは雑学として。

stage reviewへモドル