【観劇記】
渡辺プロダクション創始者の渡辺晋さんと、その妻・渡辺美佐さんのドラマ『ザ・ヒットパレード』がミュージカルとなって登場した。テレビドラマは晋役に柳葉敏郎、美佐役に常盤貴子が演じたが、ミュージカルではそれぞれを原田泰造と戸田恵子が演じた。
ドラマもミュージカルも見たが、この物語のいちばんの魅力は主人公を始めとする登場人物がみんな魅力的であるということだ。実際にそういう方たちだったのかどうかは知る由もないが、少なくともここに登場する人たちは前向きで希望があり、そして思いやりにあふれている。『ALWAYS〜三丁目の夕日』の登場人物にも同じ感想を持ったが、高度経済成長期の日本がいかに良い時代であったということなのか。見終わったあとに、何とも言えず優しい気持ちになれる。
音楽は渡辺プロダクション所属歌手の、まさしくヒットパレード。高齢の方には懐かしさ満載の聞きごたえがありそうだが、俺的には退屈なところもあった。しかしこのミュージカルのために書かれたオリジナル曲はいずれも素晴らしく、特に「ギブ・ミー・ミュージック」「昭和33年の東京」は耳馴染みもよく、終演後もメロディーを口ずさめるような出来栄え。ミュージカル・ソングはこうありたいと思わせるような佳曲であった。
役者は主役のふたりが突出して素晴らしかった。戸田恵子は歌、芝居ともに申し分なく、原田泰造は歌に難アリだったが、主人公の明るさや希望といったキーワードを見事に表現していたと思う。渡辺晋さんが明るいばかりの人ではなかっただろうが、この物語、特にミュージカル版はそれで十分。そういう意味では原田泰造は適役だったと思う。ザ・ピーナッツを演じた堀内敬子、瀬戸カトリーヌは、双子なのに似てなさ過ぎということはご愛嬌として、ふたりとも明るく可愛らしいキャラクターを演じ、舞台に光を添えていた。そのほか、出演者で唯一ともいえる踊れる役者・北村岳子も好演。全員で踊るシーン(踊るというよりは歌の振付?)では、北村ひとりが上手すぎて浮いていたのが面白かった。
舞台美術には特筆すべきことはなく、どちらかというと安っぽい感じで残念。昭和30年代の家だとかオフィス(?)などは時代的に暗めであることは仕方がないが、せめてヒット曲のメドレーシーンなどは、もっと華やかで豪華な雰囲気が欲しかった。
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