チャーリー・ガール
演出=山田和也
作曲・作詞=ジョン・テイラー/ディヴィッド・ヘネカー
原作=ロス・テイラー 脚本=レイ・クーニー
ルビ吉観劇記録=2002年(東京) |
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【このミュージカルについて】
1965年にロンドンで開幕したこのミュージカルは、40年近くを経た今年が日本初演。今回は宝塚の元トップスター・愛華みれの、女優デビュー第一作として上演されました。ロンドン・ミュージカルはどちらかといえば、「レ・ミゼラブル」「オペラ座の怪人」「ミス・サイゴン」「エビータ」など重厚な作品が多いのですが、これは軽快なコメディー。「ミー・アンド・マイ・ガール」と同じ流れを汲む作品といっていいでしょう。全体的には、やはり古めかしさを隠し切れない印象。
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【物語と感想】
チャーリーことシャーロットは、由緒正しい伯爵の令嬢。3人姉妹の末っ子。お色気たっぷりの姉たちとは違い、男まさりで色気はゼロ。ところでこの3人姉妹の家は大邸宅ながらも、金欠で今やその存続自体が厳しい。母親・ハドウェル伯爵夫人は娘たちをなんとか金持ちに嫁がせて、その難を切り抜けようとする。母親の友人・コナー夫人は石油王と結婚し、金は余るほどある。しかし金では買えない由緒正しき家柄が欲しい。しかもコナー夫人には、息子がいる。そこで母親2人は、なんとか子供たちをくっけようと画策するが…。
イギリスのコメディーって、とにかく笑えない。少なくとも俺は、何が面白いのかよくわかりません。専門誌などで解説を読むと、イギリスのコメディーは“階級の違いなどをベースに笑いを組み立てているので、日本人には理解しづらい”と書いてあったりする。そう言えば「ミー・アンド・マイ・ガール」も階級ネタのストーリーでした。なんだか納得。でも役者に力量があれば、多少の笑いは誘導できると思うのです。そういった意味では、今回の主役は明らかに力量不足。いや、コメディエンヌとしての素地は感じたので、経験不足としておきましょう。
コメディーという部分に目を瞑ったとしても、他にも際立って目を引くところはありません。耳に残らない音楽、散漫な群舞…。俺が信頼している山田和也の演出なのに、今回ばかりは少々ガックリです。ピンポイントで言うならば、チャーリーが薄汚れた整備服から、はじめて舞踏会のドレスで登場するシーンは、オーバーなほどに盛り上げていいはず。あんなに何気に登場されては、メリハリも何もあったもんじゃない。
まずは主演の愛華みれがコメディエンヌとしての力量を磨くこと。そして演出の手直し。12,500円も(?)投資した俺は、それを強く求めたいのでした。今年秋の大阪公演は、全然違ったものを期待しております。
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【ルビ吉の好きなシーン、好きなナンバー】
■♪契約を交わそう
■♪ベルが鳴るのよ、きっと
■♪風に吹かれて
音楽は残念ながら、一度で耳に残る曲がありませんでした。何度も聞いていたら、好きになれる曲があるのかもしれませんが…。
好きなシーンということで言えば、コナー夫人の出てくるところは面白かった。ただこれは今回の役者(森公美子)のおかげ。
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【ルビ吉の俳優雑感】
愛華みれ(チャーリー)…歌は下手ではないものの、上手くもない。高音部は特に辛い。少し前まで男役だったので、と言われても主演をはってる以上、そんな理屈は通らない。ダンスも同様のことが言える。優雅さに欠けている。キレも悪い。演技力はまぁまぁと思うものの、笑わせる部分での間の取り方が下手くそ。笑いを誘導できる大きな要素は“間の取り方”にあることを認識するべし。
と、ここまで書くとミもフタもない女優に思われますが、この人の素晴らしい所は、大きな華があること。俺は初めて愛華みれを観たのですが、登場するだけで、パァ〜ッと舞台が華やぐのです。宝塚で相当な人気があったというのも、これでうなづけます。
錦織一清(ジョー・スタッドホーム)…チャーリーを密かに想う、ハドウェル邸の管理人役。いつもながらの芝居で、俺はもう飽き飽き。でもミュージカル・ファンには人気の高い役者です。
森公美子(ケイ・コナー夫人)…ハマリ役。この人がいなければ、観た後に何の満足感もなかったでしょう。迫力ある歌、ダイナミックな笑い、細やかな演技力も評価していいでしょう。テレビでは大味に映る芝居も、舞台では丁度いい大きさになります。
鈴木綜馬(ジャック・コナー)…コナー夫人の息子で、プレイボーイの役。鈴木綜馬の三枚目って、初めて見たような気が…。キレてるんか?と問いたくなるような芝居に、恐くなったというか、演技力の懐を感じたと言うか…。
初風諄(ハドウェル伯爵夫人)…『エリザベート』に続き、今回も豊かな歌声は健在。見た目も身のこなしも優雅。森公美子のコナー夫人と対照的に映り、今回の伯爵夫人にはピッタリだったと思います。 |