コーラスライン

原案・振付・演出:マイケル・ベネット
作詞:エドワード・クレバン
作曲:マーヴィン・ハムリッシュ
日本語台本・演出:浅利慶太

ルビ吉観劇記録=1993年、2000年(大阪)、2005年(京都)
【このミュージカルについて】
 初演は1975年のブロードウェイ。15年間ものロングランを達成し、1990年の閉幕までに6137回の上演を記録したという。日本初演は1979年。日本では珍しかったオーディションや、キャストを発表せずにチケットを発売することなど、興行の新しい形を呈したことも当時の話題となったようだ。
 トニー賞を独占した大ヒットミュージカルだが、見た目は質素。舞台の床に一本の白い線が引かれ、背景はミラーがあるのみ。衣装もレオタードなどのトレーニングウェアで大半を見せてしまう。こういう見せ方も当時としては斬新で新鮮な驚きを与えたのであろう。
【物語】
 新作ミュージカルのコーラスダンサーのオーディションが行われている劇場。演出家のザックは、最終選考に残った17人のダンサーたちに問いかける。「キミたちの素顔を見せてほしい。履歴書には書いていないことを話してくれ」。それぞれが人前で話すことなどためらわれる話をザックはえぐり取っていく。これは一体どんなオーディションなのか?戸惑うダンサーたち。そしておかまいなしに続けるザックは最後にまた問いかける。「もしこの先、踊れなくなってしまったらキミたちはどうするか?」。
【観劇記】
 はじめて見た時は退屈のあまり寝てしまった。以来積極的に見たい作品ではなかったのだが、それでも誰かに誘っていただいたり何らかの機会があって、2005年の京都公演までに5,6回は見ることになった。そして振り返って思うのは、このミュージカルは見るたびに魅力が増すということ。見るたびに違う魅力が発見できるとでも言うか。作品から受け取るメッセージもその時その時で変わっているのだ。それは自分自身の変化が作品を様々な形で受け止めるからに違いないが、言い換えれば『コーラスライン』という作品が実に色んな側面を持って観客に迫ってくるということなんだと思う。
 と、このように作品全体としては実に奥の深いミュージカルなのだが、ミュージカルの骨格である音楽とダンスに関しても大変素晴らしい。音楽はいずれも印象的な旋律を持っており、耳に残りやすい。最大のヒットナンバーは、キリンビールのCMでもお馴染みであった『ワン』であるが、その他の曲もいずれもが代表ナンバーと言えるほど印象的。ダンスについては俺自身が上手く語れないのだが、見ていて心地よかったり迫力があったり。特に幕開きのジャズ・コンビネーションの迫力は特筆もので、最終場の『ワン』で見せる19人で織り成す群舞は、カタルシスの効果があるのでは?と思えるほど気持が明るくなる。

 さて、2005年の京都公演で見た俳優陣だが、驚くべきほど優れていた。特にダンスはいずれも秀でた役者ばかり。こういう役者を揃えたことで劇団四季の『コーラスライン』はより一層の進化を遂げ、早々から京都公演のチケットが完売という結果を生み出したのであろう。
 中でも印象に残った役者は、役柄とルックスが合っていると思ったマイク役の藤原大輔、キャシー役の坂田加奈子。大人の色気全開のシーラ役は増本藍。これまでのシーラ役と言えばどこか場末感を出す女優であったが、彼女は上品な感じ。やや違和感があった。またコーラスラインと言えば親からもブス扱いされ心の傷を持ったビビという役があるのだが、劇団のブサイク女優がこの役にあたっている。今回の小松陽子は初めて見る顔だが、歴代ビビ役の中でも抜きん出てブサイク。ビビの気持がよく伝わり好演であった。『ワン』に次ぐビッグナンバー『愛した日々に悔いはない』のリードと、『ナッシング』のソロを与えられるディアナは木村花代吉沢梨絵で見た。木村花代は私のお気に入りであるが、残念ながらディアナの雰囲気には合わず。姿も声も可愛い過ぎる。一方で吉沢梨絵は、姿も声も少なからず人生の苦労を感じさせて適役だと思った。

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