ルビ吉のミュージカル・福岡オフ会作品
42nd STREET
ブラッドフォード・ロペス「四十二番街」より
音楽=ハリー・ウォーレン
作詞=アル・デュービン
ルビ吉観劇記録=1997年、1999年(東京)/
2002年(福岡) |
|
【このミュージカルについて】
ミュージカルは、舞台を映画化するパターンが多い中、この作品は映画を舞台化している。映画は1933年にワーナーから発表された同題のもの。舞台は映画から50年近く遅れて、1980年にブロードウェイで開幕。意外にも新しい作品なのです。内容はいわゆるバックステージものであり、シンデレラ・ストーリーものでもあり。まさしく旧き良き時代のブロードウェイそのもの。…って、俺はその時代を生きてませんよ、念のため(笑)。
いずれにしても「これこそ、アメリカン・ミュージカル!」というくらい、底抜けに明るく、そしてアタマを使わず見られる作品の王道でしょう。そういった意味では、日本人キャストで演じることに難しさを感じるのですが、青井陽治の演出は素晴らしいものでした。 |
【物語と見どころ】
物語はジュリアン(錦織一清)が演出する「プリティー・レディー」という新作ショーの制作現場裏側(バックステージ)が舞台となっている。「プリティー・レディー」の主役は大スターのドロシー(前田美波里)。しかしジュリアンはスターというだけで、ダンスが下手なドロシーが気に入らない。ペギー・ソーヤーは田舎から出てきたコーラス・ガール。華はないがダンスは抜群に上手い。ある日、ショーの練習中にペギーは誤ってドロシーにぶつかってしまう。ドロシーは骨折。ペギーはカンパニーをクビになる。ショーは止むなく中止かと思われたところへ、中止に納得できないコーラス・ガールたちがジュリアンにある提案を持ち込む。それは自分達コーラス・ガールの中に、主役に相応しい人間がいる、と。その名もペギー・ソーヤー。しかしペギーは失意の中、田舎に帰ってしまった。一方ドロシーは、たかがコーラス・ガールでありながら、また自分を骨折させたペギーを自分の代役にさせるなど納得がいかない。
果たして「プリティー・レディー」は初日の幕を開けられるのか…?
ほとんどがレビューの連続と言っていいほど、全場とも華やか。その中で主役のペギー・ソーヤーという田舎娘が、どのように変化していくか。初めは華やかな中での垢抜けない存在。そして最後は華やかな部分を一気に背負い引っ張っていく存在。もちろん演じるのは最初も最後も同じ女優。かなり難しい役どころといえるが、逆にそこがみどころでもある。 |
【ルビ吉の好きなシーン、好きなナンバー】
■幕開け
出演者全員でのタップ・シーン。ここでまず圧倒される。
■マギーがコーラス・ガールを食事に連れて行く場面
マギーは「プリティー・レディー」の作家であり、作詞家でもある。そしてコーラス・ガールの面倒を見てくれる母親(?)のような存在。彼女の陽気さ、そしてやさしさが表れる、何気ないけど心休まるシーンがここ(♪Go
into your dance)。
■♪We are in the money
1幕でもっとも華やかなシーン。劇中劇の場面である。明るい音楽、楽しい照明、圧倒されるタップの群舞…。一階の客席通路にもダンサーたちが下りてきて、タップダンスを踊るので、ステージのみならず劇場全体が華やぐ。
■コーラス・ガールの楽屋シーン
「プリティー・レディー」が中止となると聞いて、落ち込む出演者たち。仕事がなくなって明日からどう生きていこうかと、ひとりひとりが順に歌っていく。そこでペギーと仲の良かったアニーがあることを思いつき、「どんな状況にも希望はある」と全員の合唱に繋がっていく(♪There
is a sunnyside to every situation)。
■ブロード・ストリート駅のシーン
失意のペギーは駅で田舎へ向かう列車を待っていた。そこへコーラス・ガールの仲間たち、そしてマギー、ジュリアンまでもが、彼女を追いかけて来る。「こんなに楽しいブロードウェイを本気で去るつもりなのか」と、全員で歌う(♪The
lullaby of Broadway)。この曲は「42nd…」最大のヒット・ナンバー。メロディーを聞けば、知っている人も多いはず。 |
【ルビ吉の俳優雑感】
涼風真世(ペギー・ソーヤー)…俺はとにかく彼女が好きなので、どう演じてようが合格(笑)。が、正直に言うと、幕開きからしばらくの「垢抜けない田舎娘」を演じるあたりは辛い。本来スターである涼風真世なので、その華を隠そうとしたって無理があるというもの。それを隠そう隠そうとするから、ただのヘンな女になってしまっている。しかしペギーが主役に抜擢されてからは、涼風真世のスター性とあいまって違和感なく役どころを演じ、一気に芝居をフィナーレまで引っ張っていく。歌は申し分なし。タップもダンサーたちに引けを取らず素晴らしい。
錦織一清(ジュリアン)…まったく個人的な嗜好性による意見だが、はっきり言って邪魔。たいして面白くもないのに「自分はコメディーが得意」と言わんばかりの芝居が、本当に鼻につく。アンタが骨折すればよかったのに、って感じっす(笑)。←ファンの人、ごめんちゃい。
前田美波里(ドロシー)…お姉さま、さすがでございます。溢れて止まらないオーラ、華やかさ。でもドロシーには不適かも。ペギーと反対にこの役は、最後は普通の女性になっていくんだけど、最後の最後まで美波里は美波里でした(笑)。ドロシー役は東京再演で見た寿ひずるの方が合ってるような気がする。
春風ひとみ(マギー)…マギーはもともと冨士眞奈美の持ち役。しかし福岡公演から、キャスト・チェンジ。マギーは言わば“気のいいオバハン”なので、冨士にピッタリの役。彼女より20才近く若い春風に、この役が出来るのか?と疑問だったけど、なんのその。めっちゃ面白かった!新しいコメディエンヌを見つけた気分で、今後は注目の女優です。こうして新しい女優を見つけることも、ミュージカルを観る楽しみのひとつであります。 |