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 葵を先頭に、土方艦隊の各艦が再び宇宙へ進出してきた。  各艦とも波動エンジンユニットを備え、艦容を変えて初めての出撃となる。  その波動エンジンユニット上には、1ユニットあたり3機、 1艦で6機のブラックタイガーが搭載され、ショックカノンと合わせ、 絶大な戦闘力の向上をもたらした。
 月軌道上に到達した艦隊は、 共に宇宙に上がってきた輸送艦を相手に演習を開始した。  まずはブラックタイガーの離着艦訓練から始まった。  ユニット上に並ぶ3機のブラックタイガーは、ユニット後方の機体から離艦する。  ブラックタイガーの脚を係留している装置が機体を艦体の上後方へ放出し、 艦体から10m離れたところで発進する。  着艦に関しては、ユニット前方の機体から行う。  ユニットの上方に飛来、艦との相対速度を0とし、 ユニットから射出される牽引索にてユニット上へ引き寄せられる。  その後、甲板作業員の手によって脚を係留装置へ繋ぐ。  この着艦シーケンスでの最大の問題は、 戦闘行動中には機体を艦に収容できないと言う事だ。 離艦についても、 戦闘に突入する前に離艦する必要がある。 ブラックタイガーは戦闘前に離艦し、 攻撃完了後は戦闘宙域を離脱、戦闘終了まで待機する。  1回の戦闘で1度しか出撃できないが、 それでも艦隊にとっては強力な戦闘力であることには変わらない。  離艦、着艦を繰り返しながら、輸送艦をガミラス艦に見立て襲撃訓練を行う。
 ブラックタイガーの武装は、機首のパルスレーザー砲6門、 翼下パイロンに対艦ミサイル2発、または対空ミサイル6発。  翼下パイロンは、ヤマト搭載のブラックタイガーにはない。  対艦/対空ミサイルとも、新たに開発された、 小型ながらガミラス艦/ガミラス機を破壊しうる威力を持っている。  まさに強力無比な武器を、土方艦隊は手に入れたのだ。
 艦隊の各艦では、波動エンジンユニットの切り離し作業の訓練を行っていた。  ユニットを切り離した後、 補機としての従来型エンジンに切り替えての運用を如何にスムーズに、 スピーディーに行えるかが、生き残る鍵になる。 訓練では、波動エンジンの停止、 補機起動、運用開始と、繰り返し体が勝手に動くようになるまで行われた。


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「今回は、早くガミラスへ帰れそうだな」

 リュディガーから制圧艦隊の司令に任じられたアンスガーが呟く。 冥王星から発進し、 土星経由で地球へ進発中の独白だった。 アンスガーはリュディガー揮下で頭角を現し、 ガミラス本星でも一目置かれる青年将校だ。 先のトパーズ戦線での戦闘においても、その非凡な才能を発揮し、 大いにリュディガーを助けた。 ゲルトがリュディガーにとって右腕なら、 アンスガーは左腕。 どちらも失い難い存在だった。 この若虎はいずれリュディガー、 ドメルを超えた、ガミラスを支える大将軍になる。 アンスガー配下の兵のみならず、 多くの将兵が認めざるを得ないのであった。
 その若虎が、制圧艦隊の司令部に新たに1名部員を追加した。  先に地球の兵力をリュディガーに報告した、残存部隊の指揮官だ。  太陽系について、まだ十分な知識がないままに短期決戦となるにあたり、 駐屯期間の長い彼の知識が役に立つと考えてのことだった。 だが、 それが後々判断を誤らせる結果になるとは、その時は誰にも判らなかった。

「この星は美しいなぁ。 イスカンダルを思い出す。 この星の名は?」

「はっ、地球人は海王星と呼んでおります」

「海の王の星か・・・ 穏やかな王なのだな。  我が星の海の王はご気性が激しいが・・・」
 アンスガーの言葉に、笑みが広がる。 しかし、 海王星は見た目ほど穏やかな星ではない。

 海王星は太陽系第8番惑星で、直径で4番目に大きいガス惑星だ。  太陽からの距離、45億400万キロ(30天文単位)、赤道直径49,528km、 両極直径48,600km。 楕円軌道を持つ冥王星と軌道が交わる惑星である。  海王星の大気のは水素とヘリウム、わずかなメタンで構成されている。  そのメタンが赤い光を吸収するため、海王星は青く美しく輝く。  しかし、その美しさに反して、海王星には太陽系でもっとも早い、 時速2000kmにも達する風が吹き荒れ、嵐や渦を発生させている。

 アンスガー地球制圧艦隊は戦艦2、空母2、巡洋艦3、駆逐艦16の大部隊。  地球艦隊の約4倍の戦力だ。 海王星の衛星トリトンを背に、 輪形陣で悠然と進軍する。 誰一人、勝利を疑わぬ無敵艦隊はタイタンへ向け、 虚空へ消えてゆくのだった。


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 月軌道で輸送艦と別れ、タイタンへ向けて航行を始めた土方艦隊は、 アステロイドベルトに到達した。

「これよりアステロイドベルトにて、艦隊戦闘演習を行う。  コスモレーダーのチェックも兼ね、三笠機は索敵に出せ」

 地球を出てからコスモレーダーは使用していたが、その索敵範囲については、 まだ実効性が確認されていない。 ブラックタイガーに索敵させることによって、 その実効性を確認したかった。 6機の三笠機は艦の前方、木星方面へ3機、 左右後方へそれぞれ1機ずつ索敵へ出た。 コスモレーダーには、 6機の機影が鮮明に、そして広範囲にわたって追尾していた。

「おおっ、こりゃ木星の裏側まで見えちゃうぜ」

 三笠のレーダー手が感嘆の声を上げる。 実際にはコスモレーダーと言えども、 星の裏側までは索敵できないが、従来のレーダーに比べその索敵範囲は広く、 感動を覚えるほどであった。  イスカンダルのオーバーテクノロジーに驚かされるばかりの地球人なのだ。 

「こちら1番機、吉村、オールグリーン」

 6方向すべてのブラックタイガーからオールグリーンが報告される。  その結果は、コスモレーダーの索敵結果にも合致する。 密な試験結果ではないが、 信頼するに足る結果であると、土方は見ていた。 ブラックタイガーの帰投を待ち、 アステロイドベルトでの艦隊演習が始まった。

「目標、前方3宇宙キロ、岩石帯。 斉射開始」

 艦隊の目の前、アステロイドベルトの全長数百メートルの岩石に、 ショックカノンが火を吹く。 数条の光の筋が一直線に進み、岩石に直撃する。  三笠の倍はある岩石は、一瞬にして崩壊してゆく。

「・・・す、すげぇ・・・、これが波動エネルギーの威力か・・・」

 艦橋クルーに止まらず、 その威力を目撃した乗組員すべてが絶句するほどの威力だった。  従来の荷電粒子砲であれば、継続的に連射して、初めて破壊しうるものであった。  それがショックカノンの一撃で、一瞬にして崩壊してしまったのだ。  感動を通り越して、呆然としてしまうのだった。
 その威力には、さすがの土方でさえ、言葉を失うほどであった。  身を乗り出すように岩石が崩壊して行く様を見つめ、 次の指令を出すのを忘れてしまうのだった。

<戦える・・・ これなら戦えるぞ>

 先のガニメデ沖遭遇戦で、彼我距離10メートルにも関わらず、 ガミラス艦の装甲を破れなかった屈辱を思い起こした。 次は必ず、 このショックカノンで撃破する。 そう固く誓うのだった。
 アステロイドベルトでの演習は、隊列を組み替え、航空機との連携もあわせ、 数パターン行われた。 ブラックタイガーを収容し、 第一航行序列に組み直った土方艦隊は土星に進路を取った。  この先、長きに渡る土方vsリュディガーとの戦いが始まろうとしていた・・・



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初出:2007/05/10




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