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 輸送作戦も回を重ね、第五回目の帰途についていた。  第三回目の輸送作戦から輸送艦が静止軌道に待機し、静止軌道上で物資、 人員の入れ替えを行っていた。 輸送艦を運用することで、 無重力化での艦間輸送のシステム化も功を奏し、 艦隊からの搬出作業時間を短縮することに成功した。
 しかし、今回は艦隊を地球に降ろす予定になっていた。  土方が強く要望した波動エンジンが完成し、その取り付け作業が行われるのだ。  波動エンジンの装着により、主砲が荷電粒子砲からショックカノンに換装される。  外見は変わらないまま、ガミラス艦の外装を貫く強力な主砲となるだろう。  また、波動エンジンは外部ユニットとして両舷後方に張り出す形で取り付けられる。  そのユニット上にブラックタイガーの係留装置が取り付けられる。  これにより、ユニット1基に対してブラックタイガー3機、合計6機の搭載が可能となった。  輸送艦隊として30機の攻撃隊は心強さを増すものだった。  ただし、ユニット上に配置したことにより、 メンテナンスが無重力下となってしまったことがデメリットではあった。  ユニットを失った際の格納場所、外部配置のための被弾の危険性など、 不安要素も少なくはなかったが、輸送艦隊として格納庫を縮小させるわけにはいかないため、 最善とは言えなくとも、次善の策と言える改装だった。
 ブラックタイガー隊は2隊に分けられ、三笠、雷、潮の搭載機18機を第一攻撃隊、 榎、葵の搭載機12機を第二攻撃隊とした。 第一攻撃隊は、 第一回輸送作戦時に生起したガニメデ沖遭遇戦快勝の立役者、吉村貫一郎が隊長に就任した。  第二攻撃隊は原田才児が隊長となった。
 また、三笠、葵にはコスモレーダーが装着されることになった。  波動エンジンの高出力で得られた装備で、 従来型のレーダーに比べ格段に広範囲を索敵することが可能となった。  ただし、従来型レーダーと換装してしまうので、三笠、 葵のレーダーは波動エンジン稼動時のみしか使用できなくなった。  波動エンジンを失ったままコスモレーダーを使用すると、従来型エンジンでは出力が足らず、 艦自体が機能を停止してしまうだろう。  そのため、他の駆逐艦は従来型レーダーのままにしておくこととなった。
 土方艦隊は静かに地球へと吸い込まれて行った。


   *    *    *    *    *


 リュディガーが冥王星に到達した。 破壊された冥王星前線基地がある湖の畔に艦隊を着陸させた。

「基地の状況を調査せよ」

 拠点の設置は行わない予定ではあるが、利用可能な設備、施設があれば利用したい。  トパーズ星系制圧から息をつく間もなく銀河系へ移動してきた。  閉塞感のある艦内で生活を続ける兵たちに多少の休息を与えたかった。  冥王星前線基地は、司令部、宇宙港等は破壊、水没していたが、 幸いなことに居住区などはほぼ無傷で残っていた。

「旗艦リュッツォウは基地司令部として、冥王星にて指揮を執る。 地上部隊は居住区整備。  艦隊は調査隊を編成し、太陽系の各惑星系の現況調査を行う。 調査中の交戦はこれを認めず、 敵に発見されぬよう厳に注意すること」

 リュディガーには、地球攻略作戦について不安があった。  それは本星から地球についての情報がほとんど得られなかったことにある。  デスラーをはじめ、軍部高官、軍司令本部も地球の戦力について把握していなかった。  おそらく前線指揮官のシュルツも、戦闘末期には詳細な戦闘報告を行っていなかったのだろう。  驕りや慢心があったのだろう。 ガミラスの強力な戦闘能力を考えれば止むを得ないところもあるが、 最終的に瀕死の地球軍に攻略部隊が殲滅させられてしまった事実を見れば、 侮れない戦力を持っていることは明白である。 敵に存在を知られる前に、 敵のすべてを把握しておきたいリュディガーであった。

「ゲルト、本星との補給線はどうなっている?」

「はっ、バラン星基地のゲール司令に確認したところ、現在はストップしているようです。  再開するよう依頼しておきました」

「うむ、ごくろう」

 やはりゲルトは頼りになる。 なすべきことは心得ていて、先手先手と動いてくれる。  リュディガーの安心材料のひとつがこの名参謀・ゲルトの存在だった。  トパーズ方面からの補給線も、3日に1便のペースで冥王星に送られてくる。  バラン方面からの補給線が再開されれば、攻略部隊は万全の基盤を得られるだろう。  万が一、長期戦になっても対応し得る。 安心材料がまたひとつ、 増えるのを感じたリュディガーだった。


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 調査隊を派遣したリュディガーは、思わぬ拾い物をした。  それは太陽系に残っていた地球侵攻軍の残存部隊だった。  各惑星に配置されていた中継基地や観測拠点の小部隊は、 本隊であるシュルツ艦隊壊滅後、母星ガミラスに戻ることもできず、 地球へ侵攻するだけの戦力も指揮系統もなく、ただ途方に暮れていたのだった。

「地球艦隊の戦力と性能を報告してもらおう」

 リュディガーは本星で得られなかった情報が、思いもよらぬ形で手に入ったことを幸運に思っていた。  敵を知り、己を知らば、百戦危うからず。 これがリュディガーの強さの秘密であった。

「はっ、冥王星前線基地壊滅後の敵戦力は、戦艦1、駆逐艦4、輸送艦2です。  土星の衛星タイタンに地上部隊を配置し、資源の掘削作業に当たっています。  戦力的には一個師団相当。 地球の衛星軌道上に戦闘衛星を複数確認しております」

「敵艦隊の性能は?」

「はっ、速力は低速で20宇宙ノット程度、主砲の射程、レーダーの索敵範囲ともに、 我が方のそれの半分以下であります。 光線砲においては威力乏しく、通常、 至近距離からの攻撃でも損害が出ることはほぼありません。  空間魚雷は威力高く脅威ではありますが、敵艦が低速のため射撃位置につけず、 またついたとしても遠距離からの攻撃となり、回避可能であります。  また、装甲は薄く、撃沈は容易であります」

 静かに聴いてたリュディガーだったが、不意に鋭い眼光を放ち、 報告を続ける指揮官へ疑問を投げかける。

「シュルツ司令はそんな敵に艦隊ごと滅ぼされたのかね?」

「い、いえ、冥王星艦隊は地球の新型戦艦にやられてしまいました。 この新型戦艦は強力ですが、 現在はイスカンダルへ向かったと思われ、太陽系にはおりません」

 リュディガーは腕組みし、思案していた。 敵の残存戦力を鑑みれば、制圧は時間の問題だ。  しかし、我々の存在を確認し時間が経てば、新型艦建造など戦力を向上させ、 前途困難になるのは必死であった。  敵に姿を見せるとき、それは地球を完全制圧する時。 それまでは気配も感じさせてはならない。

「ゲルト、残存部隊を艦隊に組み込め。 制圧艦隊を編成し、1週間後に地球へ進発、一気に制圧する。  艦隊司令はアンスガーとする。 準備急げ」

「将軍、タイタンの地上部隊はいかがいたしましょう?」

「地上部隊のみでは戦力にならん。 攻撃すれば我々の存在を地球に知らせることになることもある。  よって制圧後に掃討する」

 地球が力を回復する前に制圧する明確なビジョンがリュディガーに見えた。  しかし、リュディガーにも把握できなかった危険因子が地球には存在した。  それは、地球艦隊司令・土方竜の存在だった。



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初出:2006/11/20




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