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 宇宙港へ続々と政府関係者、防衛軍関係者が集まってくる。  ついに土方輸送艦隊の第一回輸送作戦が実施されるのだ。  しかし、その見送りはヤマトの時と違い、民間人は誰もいない。  エネルギー事情が切迫している中での改装、整備。  そして、未帰還時の市民に与える衝撃や不安を考慮し、 いまだにこの艦隊は存在すら極秘とされていた。  もちろん、乗組員は家族にすら任務を告げずに出航。  繰上げ卒業で配属された若き宇宙戦士にいたっては、 卒業したことすら家族に伝えられていなかった。

「ヤマト出航後、冥王星前線基地は壊滅し、遊星爆弾の脅威は去った。  しかし、エネルギー事情も逼迫し、今のままでも人類の生存の道は険しい。  市民に対する影響を鑑み秘密裏の行動とはなるが、 諸君には全力を持って任務を遂行してもらいたい。  そして、ヤマトが戻るまで、人類の希望の光を灯し続けてもらいたい」

 藤堂の訓示が続く。 歓声があがるわけでもなく、 静かな会場に藤堂の声だけが響き渡っている。  土方は直立不動で訓示を聞いていた。 かと思えば、 会場内を見渡し、宇宙戦士たちを見やる。  一際、新兵たちを見る目には感慨深いものがあった。

<この若者たちを無為に死なせてはならない。  今の地球の為、そして明日の地球の為にも…>

 土方の脳裏には、彼らの先輩である訓練生たちの顔が、 かわるがわる現れては消えてゆく。 その表情はみな笑顔であった。  それゆえに、土方の心に重圧となってのしかかるってくるのだ。  死なせてしまった若者たちの為にも、自ら陣頭に立ち、 地球とこの若者たちを守る。 そう決意を新たにする土方だった。


 出航の式典が済み、乗組員たちがそれぞれの艦へ乗艦してゆく。  壇上では藤堂と土方、4駆逐艦長が向き合っていた。 
「土方くん、そして諸君、よろしく頼む。 無事に帰ってきてくれたまえ」

「はっ、長官。 必ず全艦帰還し、物資を届けます」

 藤堂が差し出した手に、土方がしっかりと握り返す。  土方の背後に並ぶ4駆逐艦長が敬礼する。  踵を返し、各艦長も乗艦していった。

「全艦、出港準備」

 土方の号令の下、各艦が出港準備に入る。

「出航準備、急げ! 各員、持ち場のチェック怠るな!」

 三笠の機関室で檄が飛ぶ。 機関長の山崎奨だ。  彼は徳川彦左衛門とともに三笠に乗り込み冥王星会戦へ出撃した。  徳川の右腕として幾度の戦闘に機関員として奮闘したが、 冥王星会戦では機関部被弾時に負傷。 ヤマト出航には間に合わず、 地球に残った。 今回の輸送作戦では徳川不在の中、 慣れ親しんだ三笠で初の機関長となった。

「機関は艦の命、すなわちお前たちの命だ。  機関の不調は命に関わるぞ、不調を見落とすな!」

 三笠にも新兵が配属されてきた。 以前、榎で慣熟航行に出たことはあるが、 初めての実戦と乏しい実地訓練のせいで右往左往してしまう。  そんな新兵に容赦なくゲンコツが見舞われる。

「バカモン! 出航前に手順をしっかり頭に叩き込んでおかんかっ!  そんなことじゃ、命がいくつあっても足りないぞっ。  お前のやることは機関内圧力の読み上げが第一だろ、 こんなところにいてどうする。 機関内圧力メーターはこれだっ、 しっかり覚えておけ。」

 山崎は見た目はエリートサラリーマン風でソフトな感じだが、 その性情は職人気質だ。 仕事を見て盗めなどとは言わないが、 事前のチェックと段取りに厳しかった。  しかし、出航前の慌しい中でも、新兵の様子に気を配り、 その指導にも余念のない姿勢に、父親的な温か味があった。

「機関正常、出力上昇パーフェクト!」

 山崎の報告が三笠の艦橋に響き渡る。 それに引き続き、 各艦からの出航準備よしの報告が土方の下に集まる。

「全艦、発進せよ」

 土方の静かな、そして重みのある声で発進命令が下された。  各艦は発着床から静かに垂直上昇し、前進を始める。  地球の赤茶けた地表では、ゆっくりと発着扉が下がり発着通路が覗く。  その通路から赤、黄、白に塗り分けられた三笠と駆逐艦が地表に現れた。  各艦は艦首を上げ上昇を開始する。

「全艦、大気圏航行速度から重力圏脱出速度へ」

 青白く尾を棚引かせ、5隻の艦隊は雲のかなたに消えていった。


「リュディガー将軍、総統がお呼びだ。  すぐに総統の下へはせ参じるように」

「はっ、了解いたしました、ヒス副総統」

 直立で右腕を横に水平に出し、肘から垂直に折り曲げ、 指先をそろえ、手のひらを相手に向けて答える。  これがガミラスの敬礼だ。  トパーズ戦線から帰還したリュディガー将軍は、 戦果報告へ赴く前に呼び出された事に疑問を感じた。

<やけに慌しいな。 いつもならこちらから総統に面会を求めるのに…  さほどトパーズ星系に期待するところがあるとも思えんのだが>

 正装へ着替え総統府へ向かった。  総統府につくと入り口までヒスが出迎えていた。  いよいよもって尋常ならざる事態が発生しているらしい。  ヒスとの挨拶もそこそこ、二人はデスラーの元へ急いだ。

「やあ、リュディガー。 ご苦労だったね」

 リュディガーの思いとは裏腹に、デスラーは上機嫌のように見えた。

「は、トパーズ戦線では敵の戦意の高さに手こずりましたが、 無事制圧することができました」

「ふっ、手こずったか。 君は相変わらずご謙遜だな。  ドメルと言い、君と言い、有能な人間は謙虚だ。  見ていて清々しいものを感じるよ」

「恐れいります」

 リュディガーは拍子抜けした。 普段と変わらぬデスラーの応対、 総統府内も別段変わった様子もない。  だとしたら、この異例な早さの召喚はなんなのか。  表情には出さないが、リュディガーは戸惑っていた。

「リュディガー、帰ってきたばかりで申し訳ないが、 実は君に頼みたいことがあるんだが…」

「なんでしょう? 私にできることでしたら」

「なに、君にとっては簡単な事なんだが、太陽系に行って、 地球を制圧して貰いたいんだ」

「地球? シュルツが担当しているのではありませんか?」

「うん、シュルツは死んでね。 つまらぬ仕事だが、 君に代わりにやってもらいたいんだ。 どうだろう?」

「はっ、総統のご命令とあれば」

 リュディガーは驚いた。 地球とは、 さしたる技術力もない星だと聞いていたからだ。  シュルツが失敗したと言うのも驚いた。

<総統はかなりこの星にご執心のようだ…>

「どれくらいでできる?」

「先遣艦隊を派遣し、冥王星前線基地の再建に3ヶ月、 本隊の進出と補給線の確立に3ヶ月、 制圧に1ヶ月といったところでしょうか」

「もう少し早くならないかね?」

 デスラーの目が少し険しくなった。 7年もの歳月をかけ、 制圧目前のところで頓挫したのだ。 もう待ちたくないのであろう。

「地球は既に戦力を持っていないと聞いております。  先遣艦隊に地上部隊を搭載すれば、十分制圧可能と考えます。  しかし、補給線の確立だけは確実に行いたいので、 3ヶ月ほどお時間を頂きたいと思いますが…」

「ふむ、さすがだね、リュディガー。  君はいつでも私の期待に応えてくれる。  任せたよ、では3ヶ月後の朗報を待っているよ」

 デスラーの機嫌を損ねれば、功績を重ねてきた自分とて命が危うい。  リュディガーにはそれが判っていた。 普段の彼なら、 遠征先で拠点を構えずに攻撃を開始することなどありえない。  ましてや、銀河系オリオン湾方面はガミラスの版図からも遠いのだ。  辺境の原始的な星、地球。  この攻略戦に言いえぬ不安を感じるリュディガーだった。



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初出:2004/10/24




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