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 薄暗い宇宙港に5隻の艦体が浮かび上がる。  改装、整備を終え、出撃いまや遅しと待機中の土方輸送艦隊の各艦だ。  その中で異彩を放つのは、旗艦・三笠。  冥王星会戦時とは一変したその艦容は、見る者の興味を引き寄せた。  艦首部に銀色に輝くキャップを備えたような三笠は、 200年前の戦艦武蔵が艦体を白色に染め、 自ら標的となり敵の攻撃を一身に引き付けた時のようであった。
 やはり土方は死ぬ気なのか… 三笠に敵の注意を引き付け、 他の4隻を無事地球へ送り返す為の改装だったのか…  輸送艦隊に配属される為、 宇宙戦士訓練学校を繰り上げ卒業した若者に随行してきた教官は、 土方と、そして連れて来た若者たちの身を案じて止まなかった。


「土方くん。 聞いてはいたが、ずいぶん面白い姿になったね」

 三笠の艦橋から宇宙港を見やっていた土方に、 藤堂が後ろから声をかけた。 藤堂には判っていた。  自決覚悟の標的艦とする為の改装であるなら、 格納庫の増大などしないという事に。  この艦容にこそ、無事帰還する為の意図が隠されていると。

「少々、ハデになりすぎましたな」

 土方は苦笑した。 しかし、その笑みは明るいものだった。

「沖田さんが冥王星前線基地を全滅させたそうですな。  油断はできませんが、 艦隊の危険率は大幅に削減されたと思っていいでしょう」

「うむ、私もそう思っている。 輸送が順調に進めば、 地下都市の照明も、食品生産も向上できる。  市民の不安感も大幅に解消できると期待したい」

 藤堂の無心な笑みに、土方は一抹の不安を覚えた。  冥王星前線基地からの脅威が消えたのは好材料だ。  今までの絶望的な戦局が一気に好転したかの様に見えるが、 ガミラスと言う名以外に、我々はガミラスについて何も知らないのだ。  冥王星前線基地以遠にガミラスの気配を感じないのは、 ただの領土拡張の為の侵略と言うよりは、 より強い意志を持っているのではないか。  そう考えている土方には、 ガミラスがこのまま黙っているとは思えなかった。

「ところで土方くん、 輸送艦隊のスケジュールはどう考えているのかね?」

「はい、工程が順調であれば、タイタンまで3日、 物資採掘に3日、帰途が3日。 都合9日を予定しています」

「そうか、9日間か。 今から楽しみだよ」

 満足そうに微笑みながら、藤堂は艦橋を去っていった。  藤堂の後姿を敬礼しながら見送る土方の心境は複雑だった。


 輸送艦隊の出航を3日後に控え、土方は各艦の艦長を集めた。  駆逐艦葵(アオイ)艦長、大久保信太。 雷(イカズチ)艦長、 永倉孝一。 潮(ウシオ)艦長、服部快。 榎(エノキ)艦長、 大森清秀。 戦艦三笠は土方が司令と兼任となった。
 大久保艦長は航海士あがりの慎重派で名の通った艦長で、 航路の障害物と重力干渉に細心の注意を払い、 その注意力は戦闘行動中にも変わらない。  木星空域遭遇戦時に損傷し、その修理が間に合わず、 冥王星会戦には参加していない。
 永倉艦長は勇猛さで知られる艦長で、常に先陣を切り、 肉薄雷撃でガミラス艦隊の陣形を突き崩した。  先の木星空域遭遇戦後、 機関損傷で漂流中の僚艦電(イナズマ) の救援時に、戦闘空域で情報収集活動中のガミラス駆逐艦2隻と遭遇。  単艦突進し、1隻撃沈、1隻を小破させ追い払ったものの、 自身もほぼ戦闘不能に至った。 その時の損傷の修理が間に合わず、 冥王星会戦には参加していない。
 服部艦長はバンカラと言う言葉が似合う、豪放磊落な艦長で、 大柄でいかつい顔つきに似合わず部下思いで、 損傷した艦橋から吸い出される部下を、 素手で引き戻すと言う怪力の持ち主。  火星空域で輸送艦護衛任務中にガミラスパトロール艇と遭遇。  輸送艦を身を呈して守り、パトロール艇を撃沈。  その時の損傷の修理が間に合わず、冥王星会戦には参加していない。
 大森艦長は温厚な性格で柔和な顔つきの艦長で、最近では、 宇宙戦士訓練生の慣熟航行を主任務として活動していた。  冥王星会戦直前の慣熟航行時に、 訓練生の操作ミスにより艦のバランスを崩し火星に軟着陸。  死者は出さなかったものの、艦体を損傷し、 冥王星会戦へは参加できなかった。

「諸君に集まって貰ったのは他でもない。  今回の輸送作戦について、2、3、意識合わせをしておきたい」

 各艦長の顔を見渡す土方に対し、 みな瞳に強い意志を宿し見つめ返してくる。  地球最後の一大決戦となった冥王星会戦へ参加できなかった思いを、 この輸送作戦に込めているのだ。  その思いはそれぞれで、永倉艦長は戦闘によるガミラスの駆逐。  他の艦長は人類存続への希望。 特に永倉艦長は、 ともすれば暴走しかねない勢いだった。

「我々の目的は、地球に物資を無事輸送することにある。  その為には、無用な戦闘は可能な限り避け、 時には全速で離脱することもありえる」

 がたっ、と一瞬腰を浮かしぎみに永倉が反論する。

「司令! 逃げていてはいつまでも状況は変わりません。  ヤマトが冥王星の敵艦隊を打ち破ったのなら、 今こそ残敵を掃討して太陽系内の安全を確保すべきと考えます」

「永倉くん、この艦隊は地球の最後の希望だ。  個艦の能力差を考えれば、たとえ敵が1隻であろうとも、 我々には脅威であることを忘れてはいけない。  あくまでも我々の主任務は輸送であることを忘れてはいけない」

「し、しかし…」

 永倉のさらなる反論をさえぎるように、土方は続けた。

「それに、私はガミラスがこのまま黙っているとは思っていない。  かならず新たな部隊が冥王星に派遣されてくるだろう。  その時まで無駄に艦を減らすわけにはいかない」

 にわかに色めきだつ艦長たち。  新たなるガミラスの脅威に思いをめぐらせなかった 自分たちを恥じるようだった。

「第一航行序列は葵、三笠、榎、雷、潮。  第一戦闘序列は三笠、雷、潮、榎、葵、の単縦陣とする」

「はっ」

「出航は3日後だ。 それまでに兵の休養と出港準備に専念してほしい。  以上だ」

 いよいよ、土方が宇宙へあがるときが近づいてきた。



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初出:2004/10/07




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