第130回　ケンタッキーダービー

●第130回ケンタッキーダービーを制したのは無敗の7連勝を飾ったスマーティージョーンズ！
賞金とは別にボーナス500万ドルもゲットしました。（オークローン競馬場100周年記念でレベルSとG2アーカンソーダービーとG1ケンタッキーダービー全てに優勝すると出るボーナス）
一夜にして、585万ドル・・・およそ6億5千万円をゲットした夢の馬スマーティージョーンズ。
しかも、1977年のシアトルスルー以来の無敗での制覇。しかも、先行して逃げ馬を潰すというとても強い勝ち方。
しか〜〜も、マイナーな血統馬。（ゴーンウエスト産駒のエルーシヴクォリティー）まさにアメリカンドリームですな。
でも、ちゃっかりしているとしか言いようないけど、産駒がダービーを勝ったので2004年度の種付け料が5万ドルになってる！！
昨年のファニーサイドも全く無名のオーナー達によるダービー制覇でしたが、今年もドラマチックな事になっています。
それは、ロイとパトリシアのチャップマン夫妻という全く無名なオーナー。（これはシアトルスルーの時に似ている）
調教師のロバート・カマック師が昨年の12月に殺害されるという悲劇を乗り越えていること。
カマック夫妻は義理の息子ワイド・ラッセル氏に銃殺されたらしい。偽造小切手による詐欺問題でカマック師は義理の息子を訴えていた最中の出来事だった。
この事件で健康を悪くしたロイ氏は生産を辞めて、2頭（スマーティージョーンズと1頭の2yo馬）を除いた持ち馬を売ってしまった。。
しかし、この時、チャップマン氏はスマーティージョーンズをも実は売ろうとしていたらしい。
が、馬の目を見た奥さんのパトリシアが『この馬は維持していきましょう。』と言ってくれたため、大セーフとなったらしい。
スマーティージョーンズはこの後、現在管理しているJ.サーヴィス師の元に預けられることになった。
『ジョンとスマーティージョーンズの才能が無かったら、私達はここには来れていなかったでしょうね。』
とロイは言う。
現在、サムデイファームは売却され、その形は無いが、夫妻はサムデイファームの名前で生産と競走活動を続けている。
彼らの厩舎にはたったの4頭しか馬は居ないが、その中のスターがスマーティージョーンズなのである！

レースは逃げたライオンハートが2馬身3/4差の2着。追い上げたインペリアリズムが3着だった。

スマーティージョーンズはペンシルバニア産、いつの日か大レースを勝てますようにと願いを掛けたサムデイファームで生まれた。
ペンシルバニア産のダービー馬はこれで2頭目（Lil E.Tee）
レースは1994年以来の不良馬場で行われた。レース開始2時間前から降り出した雨のために馬場はとても滑りやすくなっていた。
観衆は14万54人！！レースは18時14分にゲートが開いた。

マイク・スミス鞍上のライオンハートが逃げる。その後ろに外枠から発走したクイントンズゴールドラッシュがつづく。
その後ろにポーラーズヴィジョン、スマーティージョーンズがつけた。
2F通過22秒99、4Fを46秒73。
スマーティージョーンズとライオンハートが並びながらラップを刻んでいく、6Fを1分11秒80で通過。
最終コーナーに掛かると先行した2頭を目標に後ろの馬達に鞭が入る。
直線では内側を駆け上がっていくライオンハートと外を上がるスマーティージョーンズの図式になった。
後ろから唯一追い上げてきていたインペリアリズムだが、勝ち馬を脅かすまではいかない。
ライオンハートはよく頑張ったが、この馬場では仕方なし・・・結局スマーティージョーンズが差しきって優勝した。
勝ちタイムは2分4秒0。タイム的には遅いがこの馬場では仕方ないだろう。

『完璧な騎乗だった！』と管理するサーヴィス師はエリオット騎手を評価した。
このコンビはダービーは初挑戦だったが、これは1979年のスペクタキュラービドのB.デルプ師とR.フランクリン騎手以来のこと。
スタンドで観戦していたオーナーのロイ・チャップマン氏（77歳）は車椅子から立ち上がり叫んだ、
『信じられない！！！』
氏は気管の病気で酸素ボンベを常用しているのだが、この時ばかりは調教師と抱き合い、友と抱き合い、関係者と抱き合い喜びをあらわにした。
その後、イスに座って大きく呼吸をしたが、微笑みを絶やすことはなかった。
『私達はこの様なレベルのレースに出るなんて、考えもしなかった。スマーティージョーンズに会える前まではね。』
とチャップマン氏は言う。
2001年2月28日、サムデイファームに1頭の栗毛の牡馬が生まれた。
この馬は後にスマーティージョーンズと名付けられたが、これはチャップマン氏の母君のミルドレッド・ジョーンズさんに由来している。
彼女は祖父母にスマーティーと呼ばれていたし、なんと！誕生日が2月28日で同じだったからである。

これまで17頭の無敗馬がダービーに挑戦したが、見事優勝したのはたったの4頭（Regret in 1915, Morvich in 1922, Majestic Prince in 1969, and Seattle Slew in 1977）
初参加で初優勝したエリオット騎手は
『ただただ、信じられない！どう表現して良いか分からない。残り3Fの時、スマーティージョーンズが戦闘準備が完璧だってことが分かっていた。僕は、ただ、座ってまっすぐ走らせて、ゴーサインを送るだけで良かったんだ。ホントに良く走ってくれたよ。』
と自分の騎乗を振り返った。

スマーティージョーンズは2yo時に2戦して2勝。
今年は1月にカウントフリートSに出走して勝利し、オークローン競馬場入りした。
そこで、レベルSとアーカンソーダービーに勝利していたわけである。
スマーティージョーンズの母アイルゲッタロング（I'll Get Along）は現役時代に12勝して28万ドルを稼いでくれた。
が、最も大きな贈り物はスマーティージョーンズを生んでくれたことだろう。（こういう所もシアトルスルーによく似ている）
後に彼女は13万ドルで売られてしまったが・・・。

同馬は3冠を目指して5月15日のG1プリークネスSに臨む！
尚、3冠ボーナスは500万ドルである。

レース直前、サーヴィス師はロイ氏に声を掛けた。
『なあ、チャップ。どんな結果になったとしても、ワシらは凄いことをやってきたよな！』
『そうともさ、ジョーン、その通りだよな！』
とロイ氏は応えたという。