TAP DANCE WALTZES TO CUP GLORY |
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写真提供:パリチュルフ紙 |
●第23回JCターフが無事終了しました。
沼地のような馬場も何のその、タップダンスシチーが9馬身もの差を付けてJCターフを楽勝しました。
この勝利は、鞍上の佐藤騎手、管理する佐々木師両人の長年の夢を叶えるものになったようです。
タップダンスシチー鞍上の佐藤騎手はスタートからゴールまで一度も先頭を譲らぬ巧騎乗をみせた。
スローペースで逃げた彼は、最終コーナーの時点で後続に十分の差を付けており、しかも、直線で逃げ込むだけの十分なスタミナも残していた。
800mを50秒1、1200mを1分14秒1、1600mを1分39秒1。
JCの直前に行われたキャピタルS(オープン芝1600m)の勝ちタイムが1分37秒1なので、このペースは激遅というわけではない。
後続馬が、焦って上がってくれば末を失うような絶妙なペースだったと言える。
追い込みの効かない荒れた馬場で最後の3Fを37秒4で上がられては、どうしようもない。
実際、このタイムより速い上がりを記録しているのは、4頭しかいない。(シンボリ、ネオ、タイガーテイル、ダービーレグノ)
初めての重馬場(不良と言っても良かったかもしれないが)に戸惑ったジョハールなどは42秒6というやる気のない走りになってしまった。
昨年の3着馬シンボリクリスSは今年も3着だった。2着には先行した3yo馬のザッツザプレンティが残り粘っていた。
4着には2yo2冠馬のネオユニヴァースが入り、外国馬最先着はフランス馬のタイガーテイル(6着)だった。
8着に入ったデノンの鞍上C.ナカタニ騎手はデノンは十分にこの馬場に対応できていたが、仕掛け時にはスタミナが残っていなかったと言っている。
『着差やこの馬場での疲労を考慮すれば良く走っていると思う。』とも言っていた。
13着に敗れたスルーヴァレーを管理するG.シアッカ師は、最終コーナーを4番手で上がってきた愛馬を見たとき、勝てると思ったと言う。
『これは、いける!!と思ったら、突然脚が止まったんだ、負傷したに違いないと思った。』とコメントしている。
ジョハール(16着)もサラファン(17着)もこの馬場に対応できなかった。
ジョハールの鞍上A.ソリス騎手はヌメってしまって前脚と後ろ足の動きがバラバラだったと言っている。
サラファンを管理するN.ドライスデール師はスタート前から、負けを覚悟していたらしい。
『この様な馬場に対応できないと言うことは分かっていました。だから、こちらに輸送してくる以前から天気予報をチェックしていたし、雨が降るという可能性は無かったはずなんだ。この時期の東京に雨が降るのは普通じゃない。サラファンにとっては本当に不幸であったよ。』
ところで、勝ち馬のタップダンスシチー(6yo・牡)の父はプレザントタップ。母はオールダンス(父ノーザンダンサー)。
タップダンスシチーはケンタッキーのエコーヴァレーホースファームで生産されている。
母オールダンスは、1988年のG1ケンタッキーダービーを牝馬ながらに優勝したウィニングカラーズの半姉であるが、1998年に死亡している。
(ウィニングカラーズはまるで今回のタップダンスシチーの様にケンタッキーダービーを逃げ切って優勝している。)
タップダンスシチーは優駿レースホースクラブのクラブ馬として競走しており、多くのクラブ馬主を喜ばせたことだろう。
さて、週末に行われたJCダート、JCターフの勝ち馬は奇しくもレーンズエンドファームの種牡馬の子供達が制することになった。
佐々木師は第1回JCを勝ったメアジードーツを想い出していた。その豪快な走りに心を奪われた師はいつかはJCを勝ってやろうと思ったという。
佐藤騎手はカツラギエースが勝ったJCを見て騎手を目指し、いつかは出走したいと思っていた。
2人の夢は叶ったのだ。
次は年度代表馬目指して頑張ってもらいたい。おめでとう!
しかし、先行した2頭でそのまま決まってしまうとは驚いた。そこまで馬場状態が悪いとは思えなかった。
直前に行われたキャピタルSが行った行ったの競馬で先行馬2頭の1-2だったのでもしや?とは思ったのだが・・・。
馬券を買うとき、いの一番に消した2頭で1-2フィニッシュとは・・・・。トホホ。
【レース後騎手コメント】※週間競馬ブックより抜粋
佐藤哲騎手【タップダンスシチー・優勝】:
いつも言っているようにこの馬の場合は展開云々と言うよりもいかにリズムを守って走れるかがポイント。
今日は枠順とかゲートが後入れと言うのも味方していたね。レースでも好スタートが切れて、2角では後続が離れていたので、その時に何とかなるような気がしたけど、ゴールでまさかあれほど離しているとはね。
この馬とはこの頃ずっとコンビを組んでいるが、馬が攻め馬にも耐えてくれたし、ローテーションを守って使えていたからね。
今日は馬のお陰で勝てたようなもの。僕自身がカツラギエースの勝ったJCを見て騎手に憧れた経緯があるのでとても嬉しい。
安藤勝騎手【ザッツザプレンティ・2着】:
スタートが上手になったので、楽に2番手に行けた。勝ち馬は内ぴったりで、馬場はどこを通っても同じと思ったよ。前が楽なのは分かったが、あれ以上早くは動けないからね。今日は勝ち馬に上手く乗られた。(自馬)は最後まで抜かせず頑張ってくれたよ。
O.ペリエ騎手【シンボリクリスS・3着】:
今日はスタートをちゃんと出てくれたし、思った通りの位置で流れに乗れた。ただ、3角手前から手ごたえが悪くなってコーナーを回る時には押っつけ、押っつけだった。直線に向いた時はもう前を交わすという感じではなくて地力でジワジワ伸びただけ。
状態自体は良かったので馬場が応えたとしか考えられない。
M.デムーロ騎手【ネオユニヴァース・4着】:
直線に向いたときの手ごたえからもう勝つのは難しいと思ったけど、2着はあるとも思っていた。ところがいざ追い出したら完璧に内にもたれてしまった。前走の菊花賞と同じだった。ダービーの時はそんなことはなかったけど。
武幸騎手【アクティブバイオ・5着】:
今日は気合いを付けて前で競馬をさせた。こんな馬場は苦にしなかったし、最後まで頑張っているけど、バテあいになっていたからね。馬よりも鞍上の方が疲れてしまった。
T.ジレ騎手【タイガーテイル・6着】:
長い時間ゲートで待たされるのが苦手な馬なので心配したが、出は良く、長い直線も良く粘ったと思う。外国馬の中で最先着には満足している。
T.ジャルネ騎手【アンジェガブリエル・7着】:
馬のコンディションは良かった。ただ、この馬が苦手とする重馬場であったことで、良いところが出せなかった。良馬場ならね。
C.ナカタニ騎手【デノン・8着】:
スタートは良かったが、重馬場で力を出し切ることが出来なかった。途中でスタミナを消耗してしまったようだ。
K.ファロン騎手【イズリングトン・9着】:
この馬にはもっと速い馬場が必要だった。今日はそれに尽きる。
幸騎手【ダービーレグノ・10着】:
終いから競馬したが、こんな馬場だったし、ジワジワ伸びるのが精一杯でした。それでも人気以上には走っているし、頑張っています。
柴田善騎手【サンライズペガサス・11着】:
馬は前回よりも良くなっていたが、一言で言えば、今日はペースが向かなかったね。馬場も何とかこなしていたが、もっと前が飛ばしてくれないと・・・。
C.ルメール騎手【アナマリー・12着】:
この馬には少し長い距離だったのと、重馬場を苦手としているので、走りずらそうだった。
J.シャヴェス騎手【スルーヴァレー・13着】:
最後に付いていけなくなった。馬場も合わなかったと思う。
武豊騎手【サクラプレジデント・14着】:
この遅いペースでも折り合いはついたし、今回はささる面も見せずスムーズに走れた。ただ、この馬は後ろから付いていって終いで勝負するタイプだけに、今日のペースでは話にならなかったよ。
横山騎手【ツルマルボーイ・15着】:
確かに馬場は悪かったが、なんとかノメらず走っていた。ただ下を気にしてか、走る気を無くしてしまったようだ。切れ味で勝負する馬だけに、こんな馬場ではね。雨がうらめしいよ。
A.ソリス騎手【ジョハール・16着】:
途中で馬が滑ったことにより、馬自身が驚いてしまった。位置取りはパーフェクトだったと思う。
V.エスピノーザ騎手【サラファン・17着】:
馬の調子は良かったが、重馬場で力を出し切れなかった。もう少し馬場が良ければね。
S.キング騎手【フィールズオブオマー・18着】:
残念な結果だった。馬場状態が悪かったことに尽きる。
Japan Cup (Grade 1) | ||||||
2003/11/30 東京競馬場 芝2400m 3yo以上 馬場:重 18頭立て | ||||||
着順 | 着差 | 馬名 | 枠番 | 調教師 | 馬齢 | 騎手 |
1 |
2分28秒70 |
Tap Dance City (USA) |
(1) |
S Sasaki |
6 |
T Sato |
2 |
9 |
That´s The Plenty |
(10) |
K Hashiguchi |
3 |
K Ando |
3 |
3/4 |
Symboli Kris S (USA) |
(5) |
Kazuo Fujisawa |
4 |
O Peslier |
4 |
hd |
Neo Universe |
(8) |
T Setoguchi |
3 |
M Demuro |
5 |
1 1/4 |
Active Bio |
(11) |
H Sakiyama |
6 |
K Take |
6 |
nk |
Tigertail (FR) |
(17) |
Rod Collet |
4 |
T Gillet |
7 |
1/2 |
Ange Gabriel (FR) |
(9) |
E Libaud |
5 |
T Jarnet |
8 |
1/2 |
Denon (USA) |
(2) |
R J Frankel |
5 |
C Nakatani |
9 |
1 1/4 |
Islington (IRE) |
(14) |
Sir Michael Stoute |
4 |
K Fallon |
10 |
1 1/2 |
Derby Regno |
(12) |
S Takahashi |
5 |
H Miyuki |
11 |
1/2 |
Sunrise Pegasus |
(18) |
S Ishizaka |
5 |
Y Shibata |
12 |
nk |
Ana Marie (FR) |
(6) |
P Demercastel |
4 |
C-P Lemaire |
13 |
nse |
Slew Valley (USA) |
(15) |
G Sciacca |
6 |
J Chavez |
14 |
1/2 |
Sakura President |
(3) |
F Kojima |
3 |
Y Take |
15 |
3 |
Tsurumaru Boy |
(7) |
K Hashiguchi |
5 |
N Yokoyama |
16 |
大差 |
Johar (USA) |
(13) |
Richard E Mandella |
4 |
A Solis |
17 |
2 |
Sarafan (USA) |
(16) |
N Drysdale |
6 |
V Espinoza |
18 |
大差 |
Fields Of Omagh (AUS) |
(4) |
T McEvoy |
6 |
Steven King |
<タップダンスシチー> 6yo 牡 鹿毛 1997年3月16日生まれ ケンタッキー産 父:プレザントトップ 母:オールダンス(ノーザンダンサー) 通算成績:32戦9勝 主な勝ち鞍:G1JCターフ、G2京都大賞典、G2金鯱賞、G3朝日チャレンジC オーナー:(株)優駿ホースクラブ 生産者:エコーヴァレーホースファーム 調教師:佐々木晶 ※JC勝ち馬アラカルト※ 9馬身差の圧勝:JC史上最大の着差。従来の記録は1998年のエルコンドルパサーが付けた2馬身半。 19年ぶりの逃げ切り勝ち:1984年にカツラギエースが記録して以来2頭目。 日本馬強し:2001年に掲示板を独占して以来2回目。 6yo以上のG1勝利:ジュピターアイランド(7yo・1986年)、ホーリックス(6yo・1989年)以来3頭目。 京都大賞典からの勝利:1993年のレガシーワールド、1994年のマーベラスクラウンに続く3頭目。 まあ、前者の時代には外国産馬は天皇賞に出られなかったから京都大賞典から直行は当たり前だったし例外ですな。 |
2003/12/2 UP
●インタビュー
佐々木昌三調教師:
『今日はパドックで”タップダンス”を踊ることもなく凄く落ち着いていて、これ以上は望めない状態でした。
でもまさか勝ってくれるとは思ってなかったですね。
調教師になれたらまずJC出走、これを目標にやって来たんですが、この夢が叶って、じゃあ勝つにはどうすればいいかと考えたら、天皇賞は辞めた方が良いという結論に至りました。
今回は一世一代の大仕事をするくらいの気持ちで馬を仕上げたので、有馬に向けてはこれを維持するだけです。
シンボリクリスエスが人気になるでしょうから、気楽な立場で臨みます。そして年度代表馬を狙います。』
佐藤哲三騎手:
『僕が騎手になろうと思ったきっかけは、カツラギエースが勝ったJCでした。
実際ジョッキーになってからはJCなんて出られないだろうと思っていたので、騎乗機会を与えてくださった先生に対して結果を出すことができて、本当に嬉しく思います。
今日のタップは、スタートやコーナーも見事にクリアしてくれて、この馬らしい走りを見せてくれました。
僕自身も、馬がピークなのに乗り役が仕上がってないんじゃ話にならないので、馬に負けないように体力をつけてきました。
これが結果に出て、自分のやって来たことは間違って居なかったんだと思っています。』
塩入和洋氏(友駿ホースクラブ代表):
『クラブとしては、昭和61年ゴールドシチーの阪神3歳S以来17年ぶりのG1勝利となります。
この間も、たくさんの方の意見を取り入れながら、自家生産馬を作れるような体制作りや血の入れ替え等の努力をしてきました。
今回、外国産馬ながら、こういう結果が出て大変嬉しく思います。
この馬の成長は当歳時から写真などをとおして見ていましたが、早い時期からガンガン行くタイプなのか、血統的な面から奥手なタイプなのか判断の難しいところがありました。
でもここにきてようやく血統的な良さが出てきたなという印象を受けます。』