Dettori And Italy Reign In Japan
●一体、デットーリ騎手という男は何なのだ!
全く恐ろしい男である。私はJCの枠番が発表されたとき、内側を引いたファルブラヴは不利だと書いた。
しかし、本来追い込み馬であるこの馬を、前々で折り合いを付けながら、好位差しという競馬で決着を付けた手腕は疑いなく凄い!
フジTVの競馬中継でゲストに出ていた社台の吉田照哉氏は『デットーリが乗ったら5〜6馬身は違う。』と言っていたが、その通りだ。
しかも、レース前に1度も乗ったことが無かったと言うから2度驚き!!
レースは、シンボリクリスエスの出遅れで始まった。外から同厩舎のマグナーテンが内に切れ込んで先頭に出る。
第1コーナーを過ぎるとマグナーテンは折り合いのついた逃げの体制に入っていた。
2番手に付けたのはフランス馬のイリジスティブルジュエル。その後ろに何と!ゴーランが位置していた。
注目のシンボリクリエスはやっとこさ4番手グループあたりまで上げてきた。
昨年の優勝馬ジャングルポケットは最後方からの競馬。レースはスローな流れなので、これは致命的なミス!?である。
4角まで各馬ほぼ同じ位置取りでレースを進めていったが、国際G1レースの重圧なのか、本来もう少し早めに仕掛けるべきナリタトップロードやテイエムオーシャンやエアシャカールは動けず。
そんな中でも上位に持ってきたシンボリクリスエスのペリエ騎手と大外から差し上がってきたジャングルポケットの武騎手はさすがと言える。
また、逃げて4着に残ったマグナーテンの岡部騎手のタヌキ親父振りは素晴らしかった。(笑)
中山で行われるG1レースはいつもそうであるけれど、後ろから行った馬は先ず間に合わない。
2500mで行われる有馬記念だって、前方に位置取りをしていないと上位に残ることは難しい。
と言うことは・・・逃げ残り、前残りの可能性が非常に大きいコースなのだ。
直線が短すぎるこ事の影響は計り知れない。加えて、小回りコースならではごちゃつきもあるし・・・。
今回のJCを見て思ったのだが、中山でG1レースをやる意味は無い。今年の正月に書いたけど、新潟の2400mでやるべきだったと私は思う。
レースの醍醐味は・・・騎手同士の駆け引きにもあるが、やっぱし馬同士の力比べにある。
直線での壮絶な叩き合い・追い比べが無いレースはつまらん!
ここからだ!と思ったら、あら〜、もうゴールかいな。みたいな感じで消化不良を起こした今回のレースでした。
ラストの内から上がってきたサラファンとファルブラヴの接触の問題で審議となりましたが、パトロールフィルムを見た感じでは後ろから行ったサラファンの方がファルブラヴに当たりに行ったように見えた。
まあ、ハナ差で勝利を逃した側としてはイチャモンを付けたい気持ちはわからんではないけどね。
さて、ファルブラヴの優勝によって、イタリア調教馬として初のJC馬が誕生したことになる。
今回6度目の挑戦にして初優勝。
1993年のミシル(6着)以来の参戦であったが、スピードのある馬・・・しかも堅い馬場を得意とする馬ならJCにも勝てる事を証明した。
管理するダウリア師の馬にかつて父のジャンフランコ・デットーリがお世話なっていたという因縁もあり、今回の騎乗を依頼されたというL.デットーリ騎手は、感動のあまり涙を流すシーンも見られた。
ヴィバ、イタリアーノ!!
2着に入ったサラファンは低評価ながら無駄のないコース取りと一瞬の脚で好走した。
1991年のゴールデンフェザント以来の優勝を飾ることはできなかった。
欧州馬にとって7度目の優勝・・・スタネーラ(1983)、ジュピターアイランド(1986)、ルグロリュー(1987)、ランド(1995)、シングスピール(1996)、ピルサドスキー(1997)。
優勝馬のファルブラヴには有馬記念の出走権が与えられたが、出走するかどうかは白紙であるらしい。
また、1-2着馬をG1香港Cに招待する旨の知らせが香港JCより発表されている。
【騎手・関係者のコメント】・・・「週刊競馬ブック」「スポーティングライフ紙」「ブラッドホース紙」より
L.デットーリ騎手(ファルブラヴ)
『これまでお世話になった関係者に恩返しができて夢が叶って嬉しい。
この馬には初めて乗ったが、とても乗りやすい馬だし中山コースが合っているようだ。
2日続けてG1を勝てて自分は世界で1番幸せな男だ。』
ダウリア師(ファルブラヴ)
『この馬はここの馬場が大好きな様だね!』
C.ナカタニ騎手(サラファン)
『馬はよく頑張ったしレースは最高だったが、裁定委員がミスをした。
勝ち馬からは4度押された。全くもって不満この上ない。』
N.ドライスデール師(サラファン)
『残念だがアメリカのG1ではよくあること。サラファンに運がなかった。』
O.ペリエ騎手(シンボリクリスエス)
『ゲートの中でガチャガチャしていて出遅れてしまい、前半の位置取りが悪くなってしまった。
でも道中はこの馬のストライドで良い感じで走っていた。ただ、このペースならもっと伸びて良いはずなのだが・・・。』
岡部騎手(マグナーテン)
『いつもより遅いペースで上手に逃げることができた。
最後までよく頑張っているが、後ろの足音が迫ってきていたからね。
そう甘くはないよ。でもみんなヒヤヒヤしたんじゃないかな。面白かったよ。』
武騎手(ジャングルポケット)
『良い感じの追走で4角では抜群の手ごたえでしたからね。
これなら差しきれると思いましたが、意外に伸びなかったですね。
こじつけになりますが、久々だったからかもしれません。』
E.サンマルタン騎手(インディジェナス)
『9歳馬にしては良いレースをしてくれた。最後の直線で馬場を気にして外に膨れたので、ムチを入れたが、やはり9歳馬。
疲れてしまったようだ。良く走ったと思う。』
K.ファロン騎手(ゴーラン)
『BCの時は後ろから行って上手くいかなかったので、今回は作戦を変えて前から行った。
良いペースだったし、素晴らしいレースだったけど、及ばなかったね。馬場は少し固すぎたようだった。』
エビショー(ノーリーズン)
『道中も良い感じにレースを運べたし、4角の手ごたえからこれはと思ったのですが、思ったほど伸びませんでしたね。』
本田騎手(テイエムオーシャン)
『有力馬の後ろで競馬をしようとして抑えました。直線に向いたときにはもう少し伸びると思いましたが・・・・。』
四位騎手(ナリタトップロード)
『入れ込んでいたわけではないし、返し馬の感触も良かった。勝負所で上がっていくときも手ごたえはあったからね。
馬場も良いところを選んだのに追ってからさっぱり。ちょっとよく分からないね。』
P.スマレン騎手(イリジスティブルジュエル)
『3yo牝馬には少し難しいレースだったね。最後にきて疲れてしまった。
これで、この馬にとっての長い1年が終わりましたが、非常に満足しています。』
田中勝春騎手(エアシャカール)
『展開が嵌らなかったのが俺の気持ちとしては最悪の競馬になってしまった。結果的に言えば先行した方が良かったよ。』
T.テュリエ騎手(ブライトスカイ)
『デキは良かったけど、3yo牝馬にとってはタフなレースだった。
後ろからの競馬で直線でゴーサインを出したけど反応がなかった。ペースは速すぎたし、馬場も固すぎた。』
江田照騎手(アメリカンボス)
『お祭りではありませんが、こういう大きなレースでの騎乗は楽しいですね。
自分の思ったレースはできたし、一生懸命走ってくれました。』
M.ヒルズ騎手(ストーミングホーム)
『14番枠はこの馬にとって外過ぎた。スタート後に良い位置を取ろうとしたが、不利があって上手くいかなかった。
それが全てでしょう。最初は快調に走っていたけど、すぐにバテてしまったようだ。』
後藤騎手(アグネスフライト)
『今日は気持ちが戻っていた。スタートしてからやる気を見せていたからね。ただ、まだ全体的に固いし、身体の方がついていかなかった感じ。
これから順調にいけば良くなってくるんじゃないかな。』
第22回 JC・ターフ (G1) | |||||||||||
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2002年11月24日 中山競馬場芝2200m 3yo以上 馬場:良 16頭立て | |||||||||||
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着順 | 馬番 | 馬名 | 性 | 齢 | 負担 重量 |
騎手 | 着差 | 馬体重 | 調教師 | 単勝 人気 |
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1 | 1 | ファルブラヴ | 牡 | 4 | 57.0kg | L.デットーリ | 2:12.2 | 538Kg | 前走計量不能 | L.ダウリア | 9 |
2 | 8 | サラファン | せん | 5 | 57.0kg | C.ナカタニ | ハナ | 516Kg | 前走計量不能 | N.ドライスデール | 11 |
3 | 7 | シンボリクリスエス | 牡 | 3 | 55.0kg | O.ペリエ | クビ | 536Kg | +6 | 藤沢和雄 | 1 |
4 | 15 | マグナーテン | せん | 6 | 57.0kg | 岡部幸雄 | 1 1/2馬身 | 518Kg | +10 | 藤沢和雄 | 8 |
5 | 10 | ジャングルポケット | 牡 | 4 | 57.0kg | 武豊 | ハナ | 478Kg | +4 | 渡辺栄 | 3 |
6 | 2 | インディジェナス | せん | 9 | 57.0kg | E.サンマルタン | 1/2馬身 | 484Kg | 前走計量不能 | I.アラン | 16 |
7 | 3 | ゴーラン | 牡 | 4 | 57.0kg | K.ファロン | クビ | 496Kg | 前走計量不能 | M.スタウト | 6 |
8 | 9 | ノーリーズン | 牡 | 3 | 55.0kg | 蛯名正義 | 2馬身 | 474Kg | 0 | 池江泰郎 | 4 |
9 | 11 | テイエムオーシャン | 牝 | 4 | 55.0kg | 本田優 | アタマ | 462Kg | +4 | 西浦勝一 | 10 |
10 | 13 | ナリタトップロード | 牡 | 6 | 57.0kg | 四位洋文 | クビ | 498Kg | +2 | 沖芳夫 | 2 |
11 | 4 | イリジスティブルジ | 牝 | 3 | 53.0kg | P.スマレン | 1 1/2馬身 | 470Kg | 前走計量不能 | D.ウェルド | 13 |
12 | 16 | エアシャカール | 牡 | 5 | 57.0kg | 田中勝春 | クビ | 508Kg | +4 | 森秀行 | 7 |
13 | 12 | ブライトスカイ | 牝 | 3 | 53.0kg | T.テュリエ | 2 1/2馬身 | 442Kg | 前走計量不能 | E.ルルーシュ | 5 |
14 | 5 | アメリカンボス | 牡 | 7 | 57.0kg | 江田照男 | アタマ | 486Kg | 0 | 田子冬樹 | 14 |
15 | 14 | ストーミングホーム | 牡 | 4 | 57.0kg | M.ヒルズ | 2 1/2馬身 | 462Kg | 前走計量不能 | B.ヒルズ | 12 |
16 | 6 | アグネスフライト | 牡 | 5 | 57.0kg | 後藤浩輝 | 3馬身 | 462Kg | +2 | 長浜博之 | 15 |
<ファルブラヴ> 牡・4yo 1998年2月28日生まれ 鹿毛 アイルランド産
父:フェアリーキング
母:ギフトオブザナイト(スルーピー)
通算成績:16戦8勝
主な勝ち鞍:G1JCターフ、G1共和国大統領賞、G1ミラノ大賞典。
オーナー:ランカティー厩舎
生産者:フランチェスカ農場(アイルランド)
調教師:L.ダウリア師
※優勝馬ファルブラヴの馬体重は538Kg。これは1983年のスタネーラ(510Kg)を上まわるJC史上最高体重での勝利となった。
また、1〜4着まで全て500Kgを越える大型馬だった。
2002/11/26 UP
<共同記者会見>
Q:JCに優勝したお気持ちをお聞かせ下さい。
ルチアーノ・サルチェオーナー(以下オーナー):
『とても嬉しいです。人生最良の日と言っても過言ではないでしょう。
レース審議に掛かった時間は数分なんでしょうけど、私には何年にも感じられましたよ。
でも、結果がこの様になって本当に嬉しいです。
正直に言うと、今回は100パーセントの自信があったわけじゃないんだよ。
強い日本馬が5頭も出るって聞いていたしね。
(OTEF注:シンボリクリスエス、ジャングルポケット、ナリタトップロード、TMオーシャン、ノーリーズンかな!?)
しかし、調教師から馬は良い状態にあると聞いていたし、デットーリ騎手の様なトップジョッキーが乗ってくれる幸運に恵まれましたからね。』
ダウリア師:
『ファルブラヴはとても良いレースをしてくれたし、馬場もこの馬に合っていたことがこの結果を導いてくれたのでしょう。
この馬は、今年は本当に素晴らしいシーズンを送ってきました。ここ20年間で最も優秀なイタリア馬だと思います。
(かつてはトニービンと並び称されるサーラッドと言うイタリア馬がいた)
ただ、凱旋門賞は馬場が合わず残念な結果となってしまいましたが・・・。』
Q:イタリア馬として6度目の挑戦で初のJC制覇となりましたね。そして、有馬記念への出走権も得ました。
この後、香港の開催もあります。今後の予定をお聞かせ下さい。
オーナー:
『まず、今日の勝利に酔いしれる時間を我々に与えてください。一段落ついたら、今後について話し合い、皆様にお知らせします。
私は日本のレースに招待されたことをとても名誉に思っているし、彼らの我々に対するもてなしも素晴らしいものでした。
そういう意味では、将来私の馬を再びJCに連れてきたいと思っています。』
(OTEF注:有馬も香港もやんわりと断りましたね^^)
Q:フランキー騎手に聞きますが、貴方が週末の2つのG1レースに優勝したことはとても印象深い出来事でしたね。
アスコットで1日7勝した時の気持ちと比べてどうですか?
デットーリ騎手:
『ひどい時差ボケで、何も感じないんだよ!でもこの2レースの優勝は僕にとってとても特別な意味がありました。
まず、僕はイタリアに14歳まで住んでいたので、競馬への情熱を教えてくれた母国への恩返しができたと言うこと。
・・・これは運命のようなものを感じました。
そして、良き友人でありイーグルカフェの調教師である小島太師に勝利をプレゼントできたことです。』
Q:どの時点で優勝を確信しましたか?レースはどの様に進めましたか?
デットーリ騎手:
『調教師が言ってた様に、キーポイントは中山の馬場でした。ここは雨が降ろうが晴れだろうが固い馬場ですから。
僕達は1番枠を引いてしまいましたが、このことはコーナーを鋭く回ることに有利になったかもしれません。
僕はゴーランの後ろに位置取っていました。ゴーランが導いてくれ、後はファルブラヴが全力を振り絞ってくれました。
ゴールラインを過ぎた時は勝ったと思いましたが、サラファン鞍上のコーリー・ナカタニ騎手が優勝したようなポーズを取っていたので、僕には確信はありませんでした。
僕はファルブラヴには今まで乗ったことはなかったんだけど、シンボリクリスエスや内側から迫り来るサラファンを押さえ込んでくれた。
その後で、ファルブラヴにとってもう1つの戦い(OTEF注:審議のことだろう)があるとは思わなかった。
JCの大観衆とこの雰囲気は恐いくらい凄かったが、彼らの前には柵があったので良かったよ!』
2002/11/28 UP