第17回 G1香港C

●12月24日に香港シャティン競馬場で行われたG1香港Cの結果詳細について報告します。

断然の1番人気に押されたファルブラヴ(単勝1.7倍)が世界1の2000mランナーを証明する素晴らしい走りで優勝しました。
2着にはG1英チャンピオンSの勝ち馬ラクチー(単勝6.4倍)が2馬身差で入着。全くの完勝だったファルブラヴはG1レース8勝という輝かしい実績と共に来年度から日本で種牡馬生活を始めます。

レースでは鞍上のL.デットーリ騎手は中段より後ろ辺りでレースを進め、直線でうちに入れるやいなやゴーサイン。
残り400m時点では先頭を走っていたエレガントファッションからかなり離されていたのだが、アッという間に追いついた。
このファルブラヴをずっとマークしていたラクチーも同じように仕掛けて上がってきた。
が、残り200mからの脚色は遙かにファルブラヴの方が優っており、逆に差を付けられる始末。
そのまま、2馬身差を付けてゴールイン。ラクチーはエレガントファッションとの叩き合いを制してからくも2着を死守した。
3着のエレガントファッションは終始前の方で競馬をし、先頭入り口で先頭に立って逃げ込みを計ったが、上位の2頭は強すぎた。
しかし、香港ナンバー1の意地は十分に見せてくれたと言えよう。
(上がり2Fのタイムを見てみると、ファルブラヴが22秒66、ラクチーが23秒02、エレガントファッションが23秒61)
直線勝負に賭けたブライトスカイが最後良く伸びて4着。
日本のエイシンプレストンはスタートからおかしかった。13番枠からのスタートで、少し出遅れ気味だった。
その為、第1コーナまでに内側に入れることができず、外外を回らされた。
位置的には最後方から3番目辺り。右前にはファルブラヴが居り、見た感じ悪い位置ではなかった。
が、終始外を回らされたのは痛い。
4角でも後ろから3番目。直線では鞍上の福永騎手は迷うことなく外に出した。
そして、末脚不発で7着に敗れた。(上がり2Fタイムは23秒52)
これには少々疑問が残る。もし、直線で内側に入れていたら?
目の前にいた2頭-ファルブラヴとラクチー-との叩き合いにもっていけたのではないか?
入れるだけの十分な空間もあった。外に振ってから上がるには大きなハンデがあった。
ましてや相手はファルブラヴ。安全にゴールインする事よりも、一か八かの勝負に出て欲しかったと思う。
この辺りが勝負師としての福永騎手の経験の浅さかなと思う。

レースのペースを作ったのはフランスの3yo馬ウェイトレス。日本のもう1頭マグナーテンはスタートで躓き、先頭に立てなかった。(大外の14番枠スタート)
ウェイトレスが作ったペースは速くもないが、遅くもない揺るぎない流れとなった。先頭の4頭の馬群と後方5頭ぐらいの馬群との間が少しあくくらいの流れ。
向こう正面から4角までで馬群は一塊りになり、直線勝負の色が濃くなってくる。
直線入り口までリードしてきたウェイトレスはここでレースを終えた。
同じく、3番手を進んでいたマグナーテンも手ごたえ無くズルズルと下がっていく。
まあ、この馬は逃げて最内で粘るのが信条だから、スタートした時点でこの結果は見えていた。
結局、先頭グループを形成していたウェイトレス、ダノマスト、マグナーテン、エレガントファッション、セイフフリットに中で上位に残ったのはエレガントファッションとセイフフリット(5着)のみ。
差し馬有利の流れとなった。
2000mの良馬場の勝ちタイムは2分0秒9だった。

勝利騎手L.デットーリのコメント:
『後ろからの競馬だったが100パーセントの自信があった。ボタンを押したときのファルブラヴの末脚は爆裂的だったよ。
息ができないくらいの加速力でした。
疑いなくこの馬は世界1の2000mランナーです。今までに乗った中でも最上級クラスの馬と言っても良いでしょう。
今日の走りにはゾクゾク(electric)させられました。』

管理するL.カマニ師のコメント:
『世界1の馬らしい勝ち方ができました。これで心おきなく喜んで引退させることができます。
私にとって素晴らしいひとときを迎えることができとても嬉しく思っています。
遠くまでやって来て、しかもこの様なトップクラスのパフォーマンスを発揮できるなんて、本当にファンタスティックな馬だと思います。』
第17回 香港C(G1)
2003/12/14 香港シャティン競馬場芝2000m 3yo以上 馬場:良固 14頭立て
社台の勝負服がシャティンに舞った。これでG1レース8勝目!
着順
馬番
馬名
騎手
調教師
斤量
枠番
優勝馬との着差
人気
1 1 FALBRAV L Dettori L M Cumani 126 5 2分0秒9 1.7
2 2 RAKTI P Robinson M A Jarvis 126 4 2   6.4
3 13 ELEGANT FASHION G Mosse D A Hayes 122 7 3-1/4   6.4
4 12 BRIGHT SKY D Boeuf E Lellouche 122 2 3-3/4   29
5 9 SELF FLIT W C Marwing I W Allan 126 12 7-1/4   51
6 8 DR MORE S Dye J Size 126 1 7-3/4   49
7 4 エイシンプレストン Y Fukunaga S Kitahashi 126 13 8   9.3
8 10 BLUE STITCH D Whyte A T Millard 126 10 12-1/4   65
9 14 TIGERTAIL T Gillet Rod Collet 122 6 12-1/4   99
10 7 PRECISION M Kinane D Oughton 126 8 13-1/2   26
11 3 DENON C Nakatani R Frankel 126 9 13-3/4   39
12 11 WEIGHTLESS T Thulliez P Bary 123 3 15   34
13 6 マグナーテン K Desormeaux K Fujisawa 126 14 16-1/4   66
14 5 DANO-MAST C Soumillon F Poulsen 126 11 17   97
 
<ファルブラヴ> 5yo 牡 鹿毛 1998年 アイルランド生まれ
父:フェアリーキング
母:ギフトオブザナイト(スルーピー)
目立たぬ母系から突如現れた同馬は、同父のエリシオに似ている。
距離適正が、マイルから2000m。2000mの持ちタイムは1分57秒8というサイレンススズカ並みの快速馬。
しかも、古馬になってから数段強くなっている事などから、日本での種牡馬として成功する確率は高いと思われる。
ミスタープロスペクター系或いはサンデーサイレンス系の牝馬との配合が楽しみだ。

通算成績:26戦13勝(今季10戦5勝)
主な勝ち鞍G1共和国大統領賞、G1ミラノ大賞典、G1ジャパンC、G1イスパーン賞、G1エクリプスS、G1英インターナショナルS、G1クイーンエリザベス2世S、G1香港C
オーナー:Scuderia Rencati & T Yoshida
生産者: Azienda Agricola Francesca
調教師:L M Cumani
●レース写真:HKジョッキークラブのページから拝借。
返す返すも残念なのはエイシンプレストンの位置。道中5〜6番手で進めれていたら結果は変わっていただろう。

●レースコメント:HKジョッキークラブのHPから引用

1着:ファルブラヴ
L.デットーリ騎手:『後ろからの競馬だったが100パーセントの自信があった。ボタンを押したときのファルブラヴの末脚は爆裂的だったよ。
息ができないくらいの加速力でした。
疑いなくこの馬は世界1の2000mランナーです。今までに乗った中でも最上級クラスの馬と言っても良いでしょう。
今日の走りにはゾクゾク(electric)させられました。』

L.カマニ師:『とてもファンタスティックな馬だ。まるでシービスケットを見ているようだった。』

2着:ラクチー
P.ロビンソン騎手:『フランキーに少しぶつけられたが、2馬身も負けていたからね。それは理由にならないよ。』
M.ジャーヴィス師:『少し出遅れて後ろからの競馬になった。が、勝ち馬とは同じ位置でレースを進めれた。
少しぶつけられたようだったが、それは負けた理由にはならないだろう。来年もう1度挑戦したいと思います。』


3着:エレガントファッション
G.モッセ騎手:『良く走ったと思うが、前の2頭は強すぎたね。』
D.ヘイズ師:『これぞ本当のワールドクラスのレースだ。彼女は本当に本当に良く走ってくれたが彼女にとってタフなレースだった。』

4着ブライトスカイ
D.ブフ騎手:『良く走っているが、レベルの高いレースだったからね。僕が思うにはBCの疲れが残っていたんじゃないかな。そうでなければもう少し差を詰めれたと思うよ。』

5着セルフフリット
W.マーウィング騎手:『このきついレースで先攻してこの位置によく頑張ったと思う。』

6着ドクターモア
S.ダイ騎手:『ベストの走りができた。これ以上言うことはないよ。』

7着エイシンプレストン
福永騎手:『直線では競馬をしていない。でも、引退レースを無事に終えることができて嬉しく思う。』

8着ブルースティッチ
D.ホワイト騎手:『ベストは出せたが、周りの馬が強すぎました。』

9着タイガーテイル
T.ジレ騎手:『この馬には馬場が速すぎたようだ。リズムをつかめなかった。』

10着プレシジョン
M.キネーン騎手:『今年はゆっくりと進んだ。その時点で直線勝負になるのは分かっていたのだが・・・。』

11着デノン
C.ナカタニ騎手:『本気で走っていない。JCの疲れが残っていたんだろう。』

12着ウェイトレス
T.テュリエ騎手:『(このレースを勝つには大きな問題点が2つあったが)1つは3yo馬にとってはあまりにタフなレースであること。そしてもう1つはファルブラヴがいたということ。』

13着マグナーテン
K.デザーモ騎手:『スタートで躓いてしまい、先頭に立てれなかった。3番手でレースを進めたが残り600mでガソリンが切れていたので何もできなかった。』

14着ダノマスト
C.スミヨン騎手:『仕掛け所で既に脚が残っていなかったし、力強さもなかった。』

2003/12/16 UP