シャティン競馬場コース図

●2002年ワールドシリーズ第2戦のクイーンエリザベス2世Cが4月21日に香港のシャティン競馬場芝2000mで行われました。
昨年暮れのG1に勝利した2頭の日本馬-アグネスデジタルとエイシンプレストン-が参戦したことで非常に盛り上がりました。
日本馬有利の噂の通り、またもや旋風を巻き起こした彼ら。
そして優勝したのは2番人気(3.5倍)に押されたエイシンプレストン。
直線入り口で大外にコース取りした鞍上福永騎手の合図に応えて末脚を炸裂!
アグネスデジタルに半馬身の差をつけて快勝いたしました。
この勝利で、エイシンプレストンはレース賞金と合わせてボーナスの100万香港ドルを獲得。
同馬自身初の2000m挑戦は大成功を収めたようです。

さて、レースはスタートで出遅れたドゥバイからの刺客グランデラが第1コーナーまでに好位置をキープするために脚を使うことになる。
第1コーナーまでほとんど距離がないので出遅れは致命的になるのだ。
直線に入ったときに余力が無かったのはそのせいかもしれない。
好スタートを切ったエイシンプレストンは第1コーナー過ぎには8番手辺りに押さえて位置している。
スタート直後には2番目辺りだったが、直ぐに鞍上の指示通りインコースの好位につけた。
その後、第1コーナー、第2コーナー過ぎにはごちゃつくインコースからリラックスできる外側に巧く位置取った。
アグネスデジタルはまずまずのスタートを切り、外からインコースに切り込み4番手辺りを追走。
昨年の方がスタートは良かった様に見えた。向こう正面に到達したときには昨年のG1香港Cとほぼ同じ位置に付けていた。
逃げ馬ヘレンヴィタリティーはやはり大外枠が響いたのか、コーナーで大回りをしながら前方に進出しなければならなかった。
レースを引っ張ったのはオカヴァンゴー、アイドル、ヘレンヴィタリティーの3頭。互いに牽制しあいながら向こう上面を進む。
レースペースは淀みのない流れ。残り1000mからはアイドル、ヘレンヴィタリティー、レベルリーダー、グランデラ(1番人気)、その後ろにアグネスデジタルという順で進み、最終コーナーにさしかかる。
この時、リサルスレディーは他馬に前をカットされ大きな不利を受けた。
直線入り口で内側にコースを取ったアグネスデジタルはおそらくグランデラをマークしていたと思われる。
直線に入ったところですかさず先頭に出たグランデラであったが、残り200mの時点でグランデラの末脚が残っていない事を露呈すると、アグネスデジタルが楽に先頭に立ちゴールを目指す。
先行馬達は総崩れでみるみる後ろに下がっていく。昨年の香港C以上に楽なレースに思えた。
しかし、大外からエイシンプレストンが豪脚を炸裂しており、ゴール前100mでアグネスデジタルを抜き去って1着でゴールインした。
同じく大外強襲したインディジェナス、ユニバーサルプリンスも素晴らしい末脚を見せたが惜しくも3着、4着に終わった。
アグネスデジタルは、昨年の秋の天皇賞のTMオペラオーと全く同じシチュエーションに置かれたと言っても良いだろう。
エイシンプレストンと叩き合っていたらどうなっていたかは分からないが、1頭だけ内側に離れて追われていたのは不利だったし馬自身は負けたという印象は無いかもしれない。
それにしてもエイシンプレストンの末脚は凄かった。スピードが違っていた。馬の状態も素晴らしかったが鞍上の福永騎手の好騎乗が光った。

勝利ジョッキー福永騎手のコメント
『前半はスローやったけど、後半はそうでもなかった。直線に入ったときには勝利を確信したんやけど、アグネスデジタルだけは怖かった。この馬はホンマに香港が好きなんやと思う。』
※怪しい関西弁はOTEFの脚色です。(笑)
『うちの馬の状態は最高の状態やった。手助けしてくれたスタッフ達に感謝しとります。オーナーの平井はんは国際競走が好きなお人やさかい、できれば12月の香港Cを獲りに再びここに来たいと思っています。』
と、管理する北橋師もコメントしました。

一方、2着に敗れたアグネスデジタルだが、立派なレースだったと思う。ドゥバイ遠征を克服してのこのレース振りは賞賛に値する。
『あの馬はホンマによう頑張ってくれよった。今日の状態は最高の状態に比べれば90パーセント位の出来やった。
また、ここに帰ってきます!でも、しばらくは休養させる予定です。』

とは白井師のコメント

6年連続の(◎-◎)このレース出走を成し遂げた9yo馬のインディジェナス。素晴らしい末脚を見せて3着に入線した。
『たまげた馬だぜ!勝ち馬をぴったりマークして、全力を発揮してくれたよ。でも、勝ち馬は速すぎたぜ!』
とはインディジェナス鞍上のF.コーツィー騎手のコメント

昨年度のAJCダービー優勝馬ユニバーサルプリンスの鞍上J.シーハン騎手のコメント
『おいらは勝つためにここにやってきたんだが、200m地点で前がつかえてしまった。ちょっとガッカリしたよ。
前が見えてなきゃ勝てないからね。』


1番人気で5着に敗れたグランデラの鞍上L.デットーリ騎手のコメント
『前半ちょっと落ち着きが無かった。(掛かったと言うことだろう)だから直線に入ったときには余力が残っていなかった。
多分、ベスト状態には少し足りていなかったのだろう。』


6着:チアーズホンコン鞍上D.ホワイト騎手のコメント
『よく頑張ったと思う。我々は言い訳はしません。』
7着:プレシジョン鞍上のSHKイム騎手のコメント
『馬は頑張ったと思う。もう少しで賞金をもらえる着順だったけど。長いシーズンを戦っているので馬は疲れているようだった。』
8着:オリンピックエクスプレス鞍上W.マーウィング騎手のコメント
『良く走ってはいるが、これはもう1段階上のクラスに上がるための試練だと思う。走り方に問題は無いんだけど、決め脚が無いって事が大きいね。まだまだレース経験も少ないから来年には素晴らしい馬に成長してくれると思います。』
9着:リサルスレディー鞍上D.ボニーラ騎手のコメント
『最終コーナーの所で、前をブロックされて、直線でも残り200mの所でブロックされた。馬は良く走っていると思う。』
10着:オカヴァンゴー鞍上のO.ドゥールーズ騎手のコメント
『前半、ちょっと自由に行かせちゃったみたい。本当はもう少しペースが速い方が良かったんだけど、思った位置に付くことができました。良く走ってくれたけど、最後はバテてましたね。』
11着:レベルリーダー鞍上のE.ルグリ騎手のコメント
『先頭とは大きく離れていたけど、直線に入った時にはイケると思った。でも残り200mで前がつかえてしまった。』
12着:レインボーアンドゴールド鞍上G.モッセ騎手のコメント
『今日の彼は全然本来の走りが出来なかった。』
13着:ヘレンヴィタリティーを管理するD.ヘイズ師のコメント
『枠順が全てだった。第1コーナーの手前で巧くインに入ることが出来なかった。ああなったら諦めるしかなかった。
次のレース香港チャターで頑張ります。』

14着:アイドル鞍上C.ウィリアムス騎手のコメント
『馬はよく頑張っていたけど、周りはワールドクラスの馬ばかりだからね。』
●地元香港は8頭も出走させたのに、最先着したのは期待の薄かったインディジェナス。
最も期待されていたヘレンヴィタリティーは前半掛かってしまったのか!?直線に入る頃には終わっていた。
結局、13着。
オリンピックエクスプレスも良いところ無しの8着に敗れている。
レース後、香港JCの理事が記者会見を行ったが、面白いことをコメントしていたので紹介します。
地元香港勢がことごとく日本馬に蹴散らされた残念な結果を踏まえた上で・・・
『しかし、我が香港にとって良いニュースが少しはあります。それは、今年の12月のG1香港Cにエイシンプレストンが来てくれることです。
これが何を意味するかと言えば、G1香港マイルに出走する地元のエレクトロニックユニコーンに勝機があると言うことですからね!』

だってさ。(笑)
レース後の国際ハンデではエイシンプレストンに120、アグネスデジタに118が与えられたようです。


●香港C(国際G1) 芝2000m
Audemars Piguet Queen Elizabeth II Cup(G1)
2002年4月21日シャティン競馬場(香港) 芝2000m 3yo以上 馬場:良 14頭立て
着順
枠番
馬名
騎手
調教師
馬齢
着差
1 5 EISHIN PRESTON (USA) Yuichi Fukunaga Shuji Kitahashi 5 2.02.50
2 13 AGNES DIGITAL (USA) Hirofumi Shii Toshiaki Shirai 5 1/2
3 12 INDIGENOUS (IRE) Felix Coetzee Ivan Allan 9 クビ
4 3 UNIVERSAL PRINCE (AUS) Justin Sheehan Bede Murray 4 1/2
5 10 GRANDERA (IRE) Lanfranco Dettori Saeed bin Suroor 4 1-1/4
6 9 CHEERS HONG KONG (FR) Douglas Whyte Ivan Allan 5 クビ
7 6 PRECISION (FR) Simon H K Yim David Oughton 4 クビ
8 1 OLYMPIC EXPRESS (GB) Weichong Marwing Ivan Allan 4 1-1/4
9 7 LETHALS LADY (GB) Davy Bonilla Robert Collet 4 クビ
10 2 OKAWANGO (USA) Olivier Doleuze Christiane Head-Maarek 4 3-3/4
11 8 REBEL LEADER (GB) Eric Legrix Geoff Lane 5 2-1/4
12 4 RAINBOW AND GOLD (USA) Gerald Mosse Brian P C Kan 5 3/4
13 14 HELENE VITALITY (NZ) Dwayne Dunn David Hayes 5 1-3/4
14 11 IDOL (NZ) Craig Williams David Oughton 5 3/4
 
エイシンプレストン】 牡・5yo
父:グリーンダンサー
母:ワランティアプライド(モンテヴェルディ)
生産者:JEゲール
オーナー:平井豊光
調教師:北橋修二
通算成績:22戦8勝
G1香港マイル、G1クイーンエリザベス2世C
G1朝日杯3歳S

2002/4/22 UP