●第83回凱旋門賞が10月3日にロンシャン競馬場で行われました。
本命と思われいたスラマニやワールサンやマブタケルなどが次々に離脱。
本命不在のまま本番を迎えたわけですが、やはりこのレース3yo馬に有利なようですね。
日本からは滑り込みでタップダンスシチーが出走。さてどうなったか!?

我が国からの挑戦者タップダンスシチーは敗れ去った。原因はいくつもある。最も大きな原因は輸送の遅れであろう。
トライアルを使わずに優勝することすら難しいこのレースに置いて、レース4日前の到着はあまりに遅すぎる。
夢だからというのは簡単だが、馬の身になれと言いたい。
しかし、ダンスはよく頑張ったと思う。
レース序盤から2番手を追走し、直線の入り口では先頭に立とうとした。
しかし、直線で戦うにはあまりにスタミナが足りなかった。新聞は『惨敗』と書いたが、そんなに悲観すべきモノでもなかった。
惜しむらくは、もう少し早い時期の来仏。トライアルレースへの出走。
逆に言えば、これほど無茶なプランで挑戦しても、あそこまでやれた事はダンスの強さを証明したことになるまいか。
他の馬達の丁度良いペースメーカーになってしまったのであるが、後ろから行って何もできなかったより数段マシだ。
鞍上の佐藤騎手もいつものように、走らせてくれて良かったと思う。
だがしかし、この挑戦は大きな痛手を残してくれた。
おそらくダンスはJCはおろか香港にも間に合わないだろうし、有馬も無理だろう。
下手をするとこのまま引退かもしれんな。ビタミン剤を投与してまで状態回復させていたらしいし、かなりの副作用が出るだろうと思う。

さて、優勝したバゴ(3yo・牡)であるが、この馬は昨年度の欧州最優秀2yo馬に選出された馬である。
しかしながら、今春の初め、呼吸器系の疾患でクラシック路線から脱落。
6月に戦線に復帰すると4日に1800mのG1ジャンプラ賞に快勝。そして27日のG1パリ大賞(2000m)に連勝し、力の片鱗を見せた。
そして、初めての古馬との対戦となったG1英インターナショナルS(10 1/2F)では5yo馬のスラマニの3着に敗れた。
原因は距離にあるのか馬場にあるのか?
それがハッキリしたのが、凱旋門賞トライアルのG2ニエル賞(2400m)だった。
単勝1.8倍の1番人気で迎えたこのレースでバゴはヴァリシールの3着に敗退。
負けるはずのないレースで負けてしまった。このレースは重馬場で行われたわけだが、優勝タイムは2分29秒40であり、特別遅いタイムなわけではなかった。
しかし、陣営は重馬場こそが原因だとの判断を下す。

『バゴの父ナシュワンも良馬場が得意だった。インターナショナルSは重馬場だった。そして、ニエル賞の前には十分な調教ができなかった。』
と管理するJ.ピース師が凱旋門賞後にコメントしている。

本番の凱旋門賞も、馬場が良ならばという条件付きで登録。
その言葉に嘘はなく、直線で鮮やかな末脚を炸裂させて、ライバル達を差しきって優勝した。
出走していた6頭のクラシック馬も彼の末脚には敵わなかったようだ。
バゴのオーナーはニアルコス・ファミリー。彼らにとって初の凱旋門賞の勝利となった。
これまでは3度の2着がある・・・ノーザントリック、エルナンド、スラマニ
父はナシュワン、母父がヌレイエフ。血統から見れば重馬場は大丈夫に見えるのだが・・・。
そして、オーナーの意向により、次走はG1BCクラシックになる模様である。

『今までの私の馬の中で最高の馬だと言ったはずだよ。2yo馬チャンピオンでしかも3yoで凱旋門賞に優勝した。
上手くやってれば、ダービーだって勝てたはずだよ。BCに優勝したときも嬉しかったけど、このレースに勝つことはまた格別なことなんだ。
オーナーのニアルコス・ファミリーはこれまで3度、2着には来たことがあるんだけど、今回は勝てる自信があったよ。
春先に呼吸器の疾患で2ヶ月を棒に振ってしまったし、最初の古馬との対戦の時には(英インターナショナルS)準備が足りていなかったんだよね。』

とJ.ピース師は言う。

レースの中盤、先行する英ダービー馬のノースライト。そしてそれを追尾するタップダンスシチー。
中段に控えたバゴは仕掛けを直線最期のファロンまで遅らせた。そして、イン側から鋭い末脚を炸裂させてチェリーミックスを差し、半馬身差で優勝。
3着には英愛オークス馬のウィージャーボードが入った。

『私はバゴを信頼していた。レース前から自信はあったよ。直線の入り口で行き場を失ってしまったんだけど、突然前が開けたんだ。
チェリーミックスがモタモタしていたその瞬間、バゴはトップギアに入っていて、一瞬で抜き去ってしまったよ。』

と鞍上のT.ジレ騎手。

ニアルコス・ファミリーのボスであるマリア女史はアメリカに住んでおり、次走はBCクラシックを走るように指示したという。
現時点でのオッズは5-1となっている。
『6月のG1パリ大賞に優勝した時、バゴの3yo時のキャリアはBCで終わらせたいと言いました。
我々は常にバゴは特別な馬だと思ってきたし、鞍上のT.ジレ騎手もその事を証明してくれました。』
『英インターナショナルSの時は馬場が重かったし、初の古馬相手と言うことで、バゴは少しナイーヴになってましたね。
ニエル賞の敗戦は少し驚きましたが、その時に何かを学んだのでしょう。それ以来、良い走り方になったように思います。』

とニアルコス・ファミリーのレーシングマネージャーのA.クーパー氏も言っている。
Prix de l'Arc de Triomphe Lucien Barriere (Group 1)
2004/10/3 仏ロンシャン競馬場 芝2400m 3yo以上牡牝 斤量:3yo-56Kg、4yo以上-59.5Kg、牝馬-1.5Kg 馬場:良 19頭立て
着順 着差 馬名 枠番 調教師 馬齢 騎手 人気
1 2分25秒0 Bago (5) J E Pease 3 T Gillet 77/10
2 1/2 Cherry Mix (1) A Fabre 3 C Soumillon 73/10
3 1 Ouija Board (GB) (9) E A L Dunlop 3 J P Murtagh 9/1
4 2 Acropolis (IRE) (19) A P O´Brien 3 J P Spencer 84/1
5 shd North Light (IRE) (12) Sir Michael Stoute 3 K Fallon 56/10
6 1/2 Vallee Enchantee (IRE) (16) E Lellouche 4 S Pasquier 131/10
7 snk Latice (IRE) (13) J-M Beguigne 3 M J Kinane 40/1
8 2 1/2 Silverskaya (USA) (6) J-C Rouget 3 I Mendizabal 64/1
9 1/2 Warrsan (IRE) (8) C E Brittain 6 K McEvoy 126/10
10 shd Valixir (IRE) (20) A Fabre 3 E Legrix 73/10
11 nk Execute (17) J E Hammond 7 D Boeuf 39/1
12 1/2 Blue Canari (3) P Bary 3 C-P Lemaire 29/1
13 1/2 Pride (10) A De Royer-Dupre 4 T Jarnet 47/1
14 snk Imperial Dancer (GB) (15) M R Channon 6 T E Durcan 107/1
15 hd Mamool (IRE) (14) Saeed Bin Suroor 5 L Dettori 139/10
16 1/2 Prospect Park (GB) (2) C Laffon-Parias 3 O Peslier 5/1F
17 8 タップダンスシチー (USA) (18) S Sasaki 7 T Sato 116/10
18 1 1/2 Grey Swallow (IRE) (11) D K Weld 3 P J Smullen 69/10
19 10 Policy Maker (IRE) (4) E Lellouche 4 T Thulliez 131/10
 
バゴ> 3yo 牡 鹿毛 2001年2月3日生まれ
父:ナシュワン
母:ムーンライツボックス(ヌレイエフ)
通算成績:9戦7勝
主な勝ち鞍:G1クリテリウム・インターナショナル、G1ジャンプラ賞、G1パリ大賞、G1凱旋門賞
オーナー:Niarchos Family
生産者: Famille Niarchos
調教師: J E Pease

2004/10/4 UP