●第134回ベルモントSは大番狂わせな結果に終わりました。
24年ぶりの3冠馬の誕生を目にしようと期待して集まった103,222人(過去最高)の観衆の目がテンになったことは間違いがないだろう。
何しろ、優勝したサラヴァ(K.マクピーク厩舎、鞍上E.プラド騎手)の単勝オッズは71倍!
これは、134回の歴史を持つベルモントSにおいて最も人気薄の優勝馬だ。
(これまでの記録は1961年のシェルラックの66倍)
一方、単勝2.2倍の1番人気に押された2冠馬ウォーエンブレムはスタートで躓き大きく出遅れた。
向こう正面で前方に出ようとしたが、直線に入ったときには余力が無く8着に敗れ去った。
またもや、3冠馬の誕生が阻止されたわけである。管理するB.バファート師にとって3回目のチャレンジは藻屑と消えた。
調べてみないと分からないが、これも珍しい記録なのかもしれない。
B.バファート師は次のように語る:
『鞍上のヴィクターとも話していたのだが、もし負けることがあるとしたらスタートに失敗したときだろう。
彼は馬群の中で折り合いを付けるタイプではなく、自由気ままに走らせて(フリーランニング・ホース)やらないと力が発揮できない馬なんだ。
ヴィクターはできる限りのことをしてくれたと思う。もし無線があったら、やっぱり前に行けと言っただろうね。』
優勝馬のサラヴァを管理するK.マクピーク師はG1ケンタッキー・ダービーに有力馬ハーランズホリデー(1番人気)を送り込んだが6着。
続いて出走したG1プリークネスSも4着に破れた。
ハーランズホリデーはG1ベルモントSの週にT.プレッチャー厩舎にトレードされている。
また、マクピーク師は今季最も有力馬だと目されていたリーペント(故障により離脱)も管理している。
サラヴァはステークスレースを1つ勝っていたが、それは断念プリークネスSとも言うべきサー・バートンS。
優勝馬サラヴァはスーザンとポール・ロイの夫妻とG.ドラケ氏のニューフェニックス・ステーブルの共同所有。
ロイ夫妻は英国在住、ドラケ氏はケンタッキーに住んでいる。シェアーは50パーセントずつ。
レースの模様はロイ夫妻は英国でTV観戦、ドラケ氏はベルモント競馬場で目撃した。
サラヴァの父はワイルドアゲン。母はデピティーミニスター産駒のリズムオブライフ。
さて、レースである。
予想した通り、ワイズマンフェリーがスタートと同時に飛び出した。スタートで出遅れたウォーエンブレムは第1コーナで先頭争いに加わってきた。メダグリアドーロ(鞍上はK.デザーモ)とワイズマンフェリーが先頭を走る。
プラウドシチズンとサンデーブレークも良いスピードで追走する。
最初の2Fの通過は24秒11。半マイルが48秒09。ウォーエンブレムが空いたスペースを探している。
6F、1分12秒98。ワイズマンフェリーがこの辺でバテ始めて後ろに下がり始めた。
メダグリアドーロが先頭に立つ。リードを広げようとする。
残り10Fの地点でウォーエンブレムが前に出てメダグリアドーロの右側に並ぶ。
1マイル通過、1分37秒01。メダグリアドーロがまだ先頭。ウォーエンブレムは2番手。3番手がプラウドシチズン。
勝ち馬サラヴァが4番手に上がってくる。
10F通過、2分3秒50。サラヴァが先頭でリードを奪おうとするがメダグリアドーロがしぶとく食い下がる。
しかし、1馬身差でサラヴァが先頭でゴールインした。
大きく離れた3着にサンデーブレーク。日本産馬が米クラシック競走で3着である!
その後ろ1馬身差でプリークネスS2着馬のマジックワイズナーが4着で入線。
優勝タイムは2分29秒71。このタイムでは後ろから行った馬は追いつくはずもない。
ゴール後、プラウドシチズンの前脚に異常が発見された。
L.ブランレージ医師によれば
『左前脚に腫れがみられました。重傷ではないが念のために救急車に乗せました。手術は行いますが、レースキャリアにどう影響するかは分かりません。』
という事らしい。(追記:3〜4ヶ月で完治するらしいことが分かりました。)
優勝馬の共同オーナードラケ氏の喜びのコメント:
『(ベルモントSに勝てるなんて)驚いたよ!でも、ホントは驚きでもないんだ。我々は彼がずっと成長していたことを知っていたからね。
ケニー(K.マクピーク師の事)と私はずっと調教を見ていたしね。ただし、こんなにも成長していたとは思ってなかったですけど。』
このドラマチックな勝ち馬には数奇な運命がある。
サラヴァは2yo時にファシグ・ティプトンの2月セールで25万ドルで購入された。
送られたのは英国。同馬はロイ夫妻の英国での馬主生活のスタートの為に買われたからであった。
彼はロイ夫妻のために3戦したが、芝のレースに適応できなかった。(B.ミーハン厩舎)
そこで、代理人のR.ガルピン氏はドラケ氏に興味があるなら買わないかと持ちかけたわけである。
そして、彼のアメリカでのキャリアがスタートした。
ガルピン氏は次のように振り返る:
『2yo時(セールの時)に見たときからこの馬はダート向きだと思っていたよ。』
後からなら何でも言えるよ!(笑)
また、実はこの馬、1yo時のミッドランティック・セールで19万ドルというまあまあの値で売られている。
同馬の母リズムオブライフは未勝利馬であったがこの値が付いた。
生産者のティンバー・ベイ・ファームはリズムオブライフがサラヴァを身ごもっているときに、キーンランド・ノーベンバー・セールで18万ドルにて購入していたのです。
サラヴァのアメリカでのキャリアはB.ケッシンガーJr.厩舎から始まった。彼はここで2レース出走している。
初戦の未勝利戦を勝ち上がったが、この時も人気薄だった。
昨年の12月にマクピーク厩舎に移籍。今季初出走は4月14日だった。
事実は小説より奇なりとはよく言ったものである。
第134回 ベルモントS(G1) | ||||||||
2002/6/8 ベルモント競馬場 ダート12F 3yo 馬場:良(速) 11頭立て | ||||||||
![]() |
||||||||
着順 | 馬名(騎手) | 1/4 | 1/2 | 1m | 1 1/4 | Str | 着差 | 人気 |
1 | Sarava (Prado, E.S.) | 5-Head | 6-1/2 | 4-Head | 3-Head | 1-1/2 | 1-1/2 | 70.25 |
2 | Medaglia d'Oro (Desormeaux, K.J.) | 2-1/2 | 2-1/2 | 1-Head | 1-1/2 | 2-5 1/2 | 2-9 1/2 | 16.00 |
3 | Sunday Break (JPN) (Stevens, G.L.) | 7-1/2 | 7-1/2 | 6-4 1/2 | 4-1 1/2 | 3-3 1/2 | 3-1 | 8.10 |
4 | Magic Weisner (Migliore, R.) | 6-2 1/2 | 5-4 1/2 | 7-1/2 | 6-2 1/2 | 5-1/2 | 4-1 1/4 | 7.30 |
5 | Proud Citizen (Smith, M.E.) | 4-1 1/2 | 3-1/2 | 3-1 | 2-Head | 4-2 | 5-1 1/4 | 7.00 |
6 | Essence of Dubai (Bailey, J.D.) | 10-2 1/2 | 10-1/2 | 10-8 | 8-5 | 6-1/2 | 6-4 1/4 | 20.60 |
7 | Like a Hero (Day, P.) | 11 | 11 | 9-1/2 | 7-3 1/2 | 8-22 | 7-1 3/4 | 25.50 |
8 | War Emblem (Espinoza, V.) | 3-Head | 4-2 1/2 | 2-1/2 | 5-2 1/2 | 7-5 | 8-30 3/4 | 1.25* |
9 | Wiseman's Ferry (Chavez, J.F.) | 1-1 1/2 | 1-1/2 | 5-1/2 | 10-12 | 9-Head | 9-1 | 18.80 |
10 | Perfect Drift (Delahoussaye, E.J.) | 9-2 | 9-6 | 8-6 | 9-Head | 10-24 | 10-24 3/4 | 5.60 |
11 | Artax Too (Santos, J.A.) | 8-Head | 8-1/2 | 11 | 11 | 11 | 11 | 71.75 |
通過タイム: 24.11, 48.09, 1:12.38, 1:37.01, 2:03.50, 2:29.71 |
Sarava - 牡・3yo 黒鹿毛 1999年3月2日生まれ ケンタッキー産 父:ワイルドアゲイン 母:リズムオブライフ(デピティーミニスター) |
2002/6/12