腹ぺこで作らない

美味しい料理を作る秘訣とは・・こういう質問は料理の教本などにも、
著者である料理人や、栄養士達がそれぞれの意見を述べていますが、
大筋は愛情をもって作る事と言っているような気がします。
怒って作った物はおいしくないそうで、確かに厨房で恐い顔をしている職人はいますが、
あれは怒っているのではなく、真剣だという事なのでしょう。

私の経験からいうと、「腹ペコの状態で料理をしない」という事が、まず言えると思います。
これは一見矛盾しているようですが、あまりにも空腹では「料理をする元気」が出て来ないのです。
味見も的確に出来なくなります。

特に人に食べてもらう場合にはなるべく余裕をもって取り掛かった方がよいのです。
和食、洋食に限らずなにごとも丁寧に作ったほうがうまくいくに決まっています。
よく中国料理の職人が鍋をふりふり、アっという間に一品作ってしまう仕種に憧れますが、
あれとても午前中に下ごしらえを充分にやっておき、
閉店後は道具の手入れを怠らないからこそ出来るわけです。

とにかくなるべく「腹ペコの状態で料理をしない」。
なにそんなに詰め込んではいけません。
飲める人ならワイン一杯、飲めない人なら菓子パン半分、お菓子少々、飴玉ひとつ。
本当は目一杯腹が減る前の時間から炊事を始める事がお勧めです。
忙しい方は中々難しいと思いますが、簡単な料理でも段取りをきちんとすると、
一味違うという、ただそれだけの一節。

では、腹もペコペコで身体はくたくた、時間は深夜におよびなじみの店はなし、
それでもできることなら何かを作って食べたい、そんな際はどうしたものか、
弁当は出来合いにして、みそ汁だけつくる・・即席スープでも器に移す・・など
「暖か物」があるだけで、随分違うと思います。