「ゆるゆる ぬる湯 富士川紀行」

美術大学研究室のスタッフと出掛けました一泊旅行
暖かな春の日射しを浴び、富士川沿いに甲斐の国を巡るという、さてその先々では・・

当日は立川駅から、特急かいじに乗り込みます。
今回は富士川に沿って、甲斐路を開示するという・・
甲斐の国といえば信玄公ですが、甲府城は徳川家のもの。
何故かといえば、信玄流の築城とは建造物にあらず、曰く
「人は城、人は石垣、人は掘」民心を重視したのですね。
甲府駅に着くと、調度御昼時分。煮貝と馬刺しで一杯。
仕上げは名物のほうとうです。南瓜など穀類がたっぷり。
かなりボリュームがあり、ゴロリ横になりたい気分・・
これを放蕩息子と云ふ、膨れた腹で山梨県立美術館へ。

名物ほうとう店の前で
それから一行は、鰍沢の町にやってきます。
富士川の支流は、物資の運搬に非常に便利でした。
その荷揚げの港として、大変栄えた町がここです。
鰍沢といえば、落語でもお馴染みの土地ですね。
主人公は身延参りの帰り・・我々は明日行きます。
「材木で助かる」というのも、運河ならではの設定。
例の「毒消しの御札」に絡む、妙法寺というお寺は、
お隣の増穂町にあり、紫陽花の名所だそうです。

鰍沢の風景
ここでは、地元の特産「雨端硯」の工房を訪ねました。
元禄三年から続くこの老舗、当代の主は私の旧友です。
十三代目として家業を継ぎ、日本工芸会の正会員。
伝統的な硯も守りつつ、現代美術も勉強されています。
墨を磨るという行為には、精神的な要素が深いとか、
墨に香りが有るのもその為だ・・など伺いました。
形状は「小判」「唐型」「日月」「蓋付」「猿面」など。
私も、小ぶりな「天然硯」を一つ求めました。

雨端硯本家・雨宮弥兵衛
その夜は、常葉川の辺、下部温泉に宿をとります。
お馴染み、信玄公隠し湯のひとつでございます・・
と・・これが、入ったら出てこられないほどヌルイ!
地元の人に伺うと、源泉はもっとヌルイのだそうです。
しかし、この湯(水?)は、とても肌に良いらしい。
それが証拠、リピーターが実に多い。信頼と実績だ。
シミやアザなど消えてしまうという、まさに薬湯です。
どうせなら私も「手術後」に訪れたかった・・

宿の脇を流れる常葉川
さて、温泉宿の翌日は、身延山久遠寺へ参りました。
何といっても日蓮宗の総本山、寺域も広大であります。
本堂、祖師堂、報恩閣、拝殿、仏殿、客殿と横にズラリ。
本堂の地下に宝物館があるのですが、ここで同行のO君、
ナント七万五千人目の入場者になるという、一幕有り。
たちまち住職や館員に囲まれて、大歓迎を受けました。
彼は記念品を頂いたのですが、我々が回りにウロウロ、
団体客と解り、館では我々にも記念品を配る出費・・

久遠寺本堂の前で
文永年間、日蓮聖人は、領主南部六郎実長の招きで入山。
遺言により、遺骨は身延山へ奉ぜられることになりました。
宗門にとっては、一度はお参りしたい「聖地」なのですね。
「こうふ、おまいり、がんほどき」これも落語のフレーズ。
本堂の奥から、ロープウェイに乗り、山頂へ向かいます。
途中、野鳥の声をテープで聴かせてくれるサービスも有り。
東側正面には富士山がくっきり、見事なパノラマでした。
今にして思えば、山頂は1153メートルもあったのですね。

ロープウェイで身延山頂へ
杉林の間を通り、北側には南アルプス連峰が望めます。
パンフレットに寄れば、全国高さランキング16の内、
7つの山(白嶺、荒川など)が見渡せたのでありました。
聖人お手植えの杉が四本あり、山頂には奥之院思親閣、
房州小湊の御両親を慕って、建てられた霊場であります。
日蓮聖人は九年間、身延から外へ出られませんでしたが、
弘安五年、常陸へ向けて出立、その途上武蔵ノ国池上にて
生涯を閉じられる、これが池上本門寺となるわけですね。

奥之院思親閣門前
昼食は、その名も「聖人そば」湯葉も付いております。
帰路の途中、大白檀を拝見しようと、瑞雲山古長禅寺へ。
樹齢六百年に及ぶ、ビャクシンの大木が四本そびえます。
四天王をかたどり、夢想疎石が植樹されたと云われてます。
高さは十六メートルにもなる、天然記念物でありますな。
寺院の方にも見所があるらしく、興味がありましたが、
そろそろ時間が押してきましたので、駅へと向かいます。
御土産を気になりだす人も・・銘菓といえば「信玄餅」。
「月の雫」もありますが、時季をはずしたような・・

ビャクシンの大木の前で
旅の締めくくりは、サドヤワイン醸造所でした。
地下のワイナリーを見学させてくれるのですが、
元々は江戸時代から続く油屋だったそうですね。
明治期に洋酒屋に転向。昭和初期に自家農園を開墾。
フランス産の品種を栽培することに成功されました。
ここでの特徴は「瓶貯蔵」にあると云われます。
樽で貯蔵したものを、一升瓶に詰め替えて寝かせます。
この行程が、味を良くする為の秘訣だそうです。

地下にある樽貯蔵庫
お帰りは甲府駅から、あずさ24号に乗り東京へ 。
そういえば明日は、筆者の誕生日であった・・・
醸造所で求めた「モンシェルヴァンの白」がある♪
千円以下のワインにしては出来物!(これ、後の感)
帰りがけに吉祥寺に寄り、墨を一本購入しました。
さっそく雨端硯を試してみようという、心積もりです。
これを使って描きましたのが、三月の月例会での
「ふくろくじふ 」の図であったわけでございます。

甲府駅停車場にて