ハングルをローマ字でどのように表記するのか 改訂版
Table of Romanization Systems
15 April 2006

    韓国文化観光部による2000年の新しい方式とYale方式などの対照表はこちらを参照. [母音]  [子音]

  日本語をローマ字で表記する方法には,ヘボン式訓令式の2種が広く知られている.「知識」を前者では"chishiki",後者では"tisiki"とする具合である.前者はいわば英語的なバイアスがかかった表記法であり,後者は日本語の立場からの表記法で,小学校で教えるのもこれである.ちなみに日本のパスポートの人名表記には,なんと訓令式は認められていない.

  さて,ハングルをローマ字で表記する方法,即ちローマ字転写の方法には,国際的に何通りかの方法が用いられている.ただし,韓国人の人名については,各個人が自分で決める慣習になっているので,本人に聞く以外に確かめるすべがない.同じ「李」さんでも,例えば韓国の『国語学年鑑』(国立国語研究院1997)には"LEE", "Lee", "YI", "Yi", "Rhee", "Li"といった表記が用いられている.日本のホテルなどに電話をかけて宿泊している韓国からの客を呼び出そうとすると,ホテルの人にスペルを聞かれることがあるが,前もって本人に聞いておかないと,場合によっては取り次いでもらいないことになるわけだ.

  ローマ字転写は,原則的には,どこまでも字母を1対1的に対応させるものであり,発音を表記するものではないが,2000年の文化観光部の方式などのように,왕십리[왕심니] をWangsimniと表記するように,音韻変化の結果を表すものもある.

 以下では,補助記号なしで表記できる,韓国文教部1959年版の表記と,Yale方式, 福井玲方式(志部昭平方式としても知られてきた方式)を対照して示すことにする.Yale方式は,米国の学術書などで主に用いられている. 福井玲方式は,故・志部昭平千葉大学教授の諸研究を始め,日本の中期朝鮮語研究などで広く用いられている.
  表には,他の方式と比べるのも僭越ながら,コンピュータ上のキイで,1対1的に対応させるようにした野間方式を参考 までに付す.原則として初声を小文字,終声を大文字にしている点,3文字表記を廃し,2文字表記を最小限にしようとした点などが他と異なる.半母音はjとwで表記し,これのみが2文字表記になっている.ローマ字とハングルの変換のテーブル作成などに使用すると,変換の条件付けや順序を簡略化でき,かつ初声と終声を区別して直接検索できるなど,コンピュータと朝鮮語の専門家でなくとも検索には便利である.必要に応じて部分的に#や$など他の記号に置換しておくことが簡単にできる.野間方式から他の方式には順序を考えに入れない単純な置換でも簡単に移行できる点も便利. ただし表記などの実用にはおすすめできない.
  韓国の旧・文教部(日本の旧・文部省にあたる)は1983年に改訂した提起した.しかし,この1983年の方式では,母音字に,コンピュータのキーにはない補助記号を用いるので,一般のPCの設定そのままでは表記できない.1983年方式は,画像で別のページに示すことにする.広く知られたMcCune-Reischauer方式は,文教部のこの1983年の方式の原型とも言うべき方式である.朝鮮民主主義人民共和国の科学院の方式もやはり母音字母には補助記号が必要である.

 この他に日本を中心とする学界で用いられている河野六郎方式が知られている.

 

 また,さらに韓国では2000年に韓国文化観光部告示 第2000-8号(2000年7月7日)により新しい方式が提起された.韓国の2000年の新しい方式とYale方式などの対照表はこちらを参照. [母音]  [子音]

●母音字母 Vowels
ハングル カタカナ 文教部1959方式 Yale方式 福井玲方式 野間方式
a a a a
ya ya ia ja
wa wa oa wa
エ(広いエ) ae ay ai E
イェ(広いイェ) yae yay iai jE
ウェ(広いウェ) wae way oai wE
オ(広いオ) eo e e v
ヨ(広いヨ) yeo ye ie jv
ウォ weo we ue wv
エ(狭いエ) e ey ei e
イェ(狭いイェ) ye yey iei je
ウェ(狭いウェ) we wey uei we
オ(狭いオ) o o o o
ヨ(狭いヨ) yo yo io jo
ウェ(狭いオ+イ) oe oy oi W (大文字)