「どうしたの、兄さん!」
少女の叫び声が、当たりの空気を切り裂いた。
少女の名前はアリサ。ここパルマ星の中心都市カミニート居住区で育ち、今年15歳になる。アリサには、スペースポートで荷揚げ作業員として働いている、3歳年上の兄ネロがいた。幼いころに両親を亡くし、兄妹二人肩を寄せあって暮らしてきた。
ロボットポリスはボロ布のようになったネロを放り出すと、アリサをあざ笑うかのように、冷たく言い放った。
「ラシーク様のことをコソコソとかぎまわりやがって!痛めつけられたくなければ、これからはせいぜいおとなしくしていることだな!」
冷たいコンクリートの上に、アリサと瀕死のネロが取り残された。アリサが手を握ると、ネロはうっすらと目を開け、アリサを見つめた。
「アリサ、聞いてくれ。ラシークは、この星に巨大な災いを招いてしまった。世界は今、破滅に向かっている。オレは、ラシークが何を企んでいるか探っていたんだ。けれど、オレ一人の力では、どうすることもできなかった!」
ネロの目に涙が浮かんだ。それは、アリサが初めて見る、兄の涙だった。
「ラシークのことを探っている途中に、タイロンという強い男のことを聞いた。奴と手を組めば、ラシークを倒し、この星を救えるかもしれない。アリサ...オレは残念でならない...何もできなかったことが...そして、おまえをおいて逝かねばならないことが...」
「兄さん、兄さん!」
アリサの声が悲鳴に変わった。だが、ネロの目は二度と開くことがなかった。
やがて、あたりを夕闇が包んだ。
アリサの目には、涙のあとが残っていたものの、その瞳は強い力に満ちていた。アリサはネロが腰につけていたショートソードを胸に、誓った。
「兄さん、わたしはあなたの遺志をつぎます。きっと、ラシークを倒して平和な暮らしを取り戻すわ!」
そして、アリサの長い闘いの旅が始まったのだ...