2001白馬日記

北アルプス・白馬岳〜栂池とめぐり、そして白馬村の自然を少し。


    9月21日
   東京は夕方から雨である。
   山の中であればレインウェアを着て歩くことも別に苦にならないのであるが、街中では大きなザックをしょって
   傘というのも不便なものである。

   出かけるときになってもどうも止みそうにない。
   しかたなく、雨の中へと一歩を踏み出した。

   新宿に到着したときにはすでに列車は入線しており、乗車もはじまっていた。
   座れないのではと一瞬不安がよぎったが、無事に席を確保。
   やはり、前回の夏山のときとは異なり、満員列車の乗客のほとんどが登山客である。
   帰省らしい女性が入ってこられて、ちょっとびっくりしたような感じだった。
   登山客以外の人であれば誰でもきっと驚かれたことだろう。(ほとんど貸切状態に見えたことでしょうから)

   こうして、23:50発の急行アルプスにて北アルプス・白馬に向けて再びその車窓の人となった。


   9月22日  天候 くもり のち はれ
   前日までの寝不足のせいか、いつもはあまり寝られない列車でよく寝た。
   目がさめるともうすぐ松本というところであった。
   乗客の半分は松本で降りて行った。
   上高地から、槍・穂高へと向かうのであろう。
   再び動き出した列車は大糸線に入り終点・南小谷へと向かう。
   豊科・穂高(夏にはここで降りたのであるが、今回はさらに先まで行く)と過ぎていくうちに、
   いつしかまた眠ってしまっていた。
   次に目がさめると列車は止まっている様子、あたりもすっかり夜が明けてしまっている。
   ふと、ホームを見ると「はくば」とあるではないか。
   車内を見廻すとわたし以外にはひとりしか乗っていなかった。
   あやうく乗り過ごしてしまうところであったが、どうにか無事に下車。

   駅舎を出て空を見上げると雲があるが、青空も少し覗いている。
   そして、山のほうへ目をむけるとそこには虹がかかっている。
   ほんとうに一幅の絵のような景色が眼前に展開されている。
   駅前より今回もタクシーの相乗りをさせていただいて、登山口・猿倉へと向かう。
   猿倉へ着くとガスっている。
   ここで入山届を済ませて、いざ出発。

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 6:45 猿倉出発
   ガスっていてなにも見えない舗装された林道を登ること30分。
   ガスが薄くなりところどころで切れはじめ、ようやく山頂付近が見え始めた。
   そこにはなんと、青い山並みではなく白い山並みが横たわっているではないか。
   こんな時期に雪化粧をした山並みを見られるなんて。
   山麓では、夏の名残のお花が咲いていると言うのにである。

8:00 白馬尻小屋着
   白馬尻小屋に着くころになると再びガスに覆われてしまい、山頂は望めなくなってしまった。

8:15 白馬尻小屋発
   以前は小屋の直ぐ上から雪渓の登りだったように思うのだが。
   何年か前の豪雨のときに雪渓が割れてしまったのが、いまだにそのままの姿を残しているようだ。
   本来なら2時間近くの雪渓の登りが、30分ぐらいだったのだろうか。
   雪渓を渡る風はかなり冷たいがほてった体には気持ちがいい。
   雪渓の上を行くほうがまっすぐに登ることが出来るので、時間の短縮になって楽なんだけれど。

   雪渓の登りがもうすぐ終わるというころになって、ほんの一瞬の晴れ間が覗いた。
   飛行機で雲間を抜けたときのような感じである。
   そして、山の姿を現してくれたが、そこにはもうあの雪に覆われた白い山並みではなく、夏の装いのような
   山並みが望めるだけだったが、また直ぐガスの中へと消えていってしまった。

13:05 村営白馬岳頂上山荘通過
   稜線に出るとかすかではあるが、日本海が見える。

13:30 白馬山荘着
   1500人収容という巨大な山小屋(とは言わないか)も夏には満員になるのであろうが、今はそれほどでもない。
   晴れていればかなり遠くまで見渡すことが出来るはずなんだが、今はまだほとんどが
   ガスのなかに埋もれてしまっている。

   夕方になって気温がだいぶ落ちて来るにしたがって、先ほどまでかかっていたガスも晴れてきた。
   そして、もう日が沈むというころには視界が開け、立山連峰をはじめ遠く富士山までも望むことが出来た。

   日が沈むと眼下には富山市街や信濃大町などの明かりがまばゆいばかりに輝いているのが望見できる。
   夜には満天の星空となり、天の川も見ることができた。


   9月23日  快晴
   きょうは朝から快晴である。
   かなり冷え込んでいる。
   外に出ると足元からしんしんと寒さが伝わってくる。
   雲海の彼方に八ヶ岳・南アルプス・秩父連山そして富士山がもうすぐ夜明けを迎える茜色に染まりはじめた中に
   浮かんでいる。
   雲海の下の街はまだ眠りの中なのだろう。

7:25 白馬山荘発
   このときの気温5.1℃

7:40 白馬岳(しろうまだけ:2932m)頂上着
   駅名は「はくば」であるが山の名前は上記のように呼ぶ。

   ここからの展望は、眼下に能登半島・富山市内・そして北へと新潟の海岸線が延びている。
   雲間には佐渡島も浮かんでいる。
   いままで背にしていた側に目を向けると上越方面の山々が遥かに続いており、噴煙たなびく浅間山・秩父連山・
   八ヶ岳・南アルプス、その間には初冠雪で山頂を白くした富士が見える。
   また、立山・剣から槍・穂高と北アルプスの主だった山々が一望のもとに望まれる。
   小さくではあるが黒部湖が緑色に輝いている。
   まったくいつまで見ていても飽きないのであるが、本日は下山しなければならないので
   後ろ髪を引かれる思いではあったが、山頂をあとにした。
   それでも30分ほども山頂にいた。

8:10 白馬岳頂上発
   白馬岳を過ぎた北斜面になると2日前に降った雪がまだ残っている。
   5〜6cmはある霜柱も立っている。
   秋を通り越してすでに初冬といったところである。
   枯れ草についた水が凍ってまるで花を咲かせたように朝日を受けて光り輝いている。

8:40 三国境を通過

9:30 小蓮華山着

9:45 小蓮華山発
   風もなくほんとに穏やかな日である。
   途中小ピークにて日を受けて横になるとたいへん気持ちが良い。
   目をつぶるとそのまま寝入ってしまいそうである。

11:30 白馬大池着
   ここで昼食。
   白馬大池周辺でようやく紅葉がはじまったばかり、あと2週間もすれば見ごろとなるのだろうか。

12:30 白馬大池発
   白馬大池に沿って歩きそのあと少しの登りで乗鞍岳の山頂である。
   大きな岩がごろごろとした広い山頂である。ガスっていたりすると迷ってしまいそうである。

12:55 乗鞍岳通過

   下りになると樹林帯となった。
   木々の間を渡ってくる風がまことにここちよい。
   木々を振るわせる音もまた涼しげである。
   笛吹大池への分岐、ここより10分ほど木道の続く湿原の中を行く。
   天狗原を過ぎると再び樹林帯の中である。

14:30 ロープウェイ乗り場着
   ここはもう登山客より観光客のほうが多い。きょう1日歩いてきた山並みが一望できる。
   なごりおしいが終わりである。
   ロープウェイを乗り継いでいっきに山麓まで降りて来てしまった。
   夏であればこの時間になれば雲が湧いてきて山並みを望むことはできないのであろうが、
   冷え込んだお陰か雲に覆われることまなく白馬三山をはじめ、それに連なる唐松・五龍岳も仰ぎ見ることが出来た。

   ああ、今回もまた良い山行となった。


   9月24日  快晴
   きょうも朝から秋の風が心地よい。
   車を借りて村の中を走ってみる。
   コスモス・銀色に輝くススキ、そして黄金色に輝く稲穂が頭をたれている。
   村はすっかり秋一色となっている。

   白馬三山が圧倒的な大きさで迫ってくる。
   白馬に来るようになって20年近くになるが、いままでこれほど大きく感じられたことはなかった。
   あと2ヶ月もすれば山頂は雪に覆われ、少しずつ山麓も雪に覆われ一面の銀世界となる。
   そうなればここは、登山客・観光客に代わってスキーヤーの世界となる。

   帰りはTea Potさんに南小谷まで送っていただき始発の特急に乗って帰京の途についた。
   帰りの車窓からは北アルプスの山並みが続く。
   松本近くになれば、この夏に登った常念も望むことが出来た。
   さらには、夕日のなかシルエットに浮かぶその長大な峰々を横たえている南アルプス。
   白馬からでは小さくしか見えなかった富士も、甲府近くになればその大きさを誇っている。

   列車は新宿へと向けて急ぐ。
   車外は東京に近づくにしたがって少しずつ闇につつまれていった。

   いつも思うことであるが、列車が高尾を過ぎ八王子となると急に人が増えてくる。
   以前は新宿まで乗っていたのであるが、いまは立川までとなってしまった。
   新宿まで乗っていたころは、新宿に着くと山から帰ってきたものにとっては、あまりの人の多さに酔ってしまう。
   このまま折り返しの列車に乗って行ってしまおうかと何度思ったことだろうか。


  最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。m(_ _)m


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