喜多方ラーメン食い倒れツアー

2009年4月27、28日(月、火)

僕と女房は共にラーメンが好物である。 もっともマニアとまではいかないし、知識が豊富というわけでもない。 自分の好みに合いそうなラーメンの話を聞けば、 往復 50km ぐらいまでなら車で出かける事もあり、 地方に出かけた際には有名なラーメンを食べてみたりという程度だ。 一口にラーメンとは言っても、味の好みは夫婦でかなり違う。 僕はこってりした豚骨スープが好きで、 女房は喜多方ラーメンや塩ラーメンが好きなのである。

喜多方には一度行ってみたい(連れていってやりたい)と昔から思っていた。 しかし一食か二食食べて終わりでは行った甲斐がないからやはり泊りがけとなるだろう、 となると話が大きくなってしまうし、コスト面の事もあって{ラーメン一杯いくらになるのだ)、 なかなか実現できないでいたのだった。 そのうちに子供が生まれたりもして、さらに何年か企画を放置していたのだが、 この春から期間限定で始まった高速道路料金値下げにより、 満を持して実行する事にしたわけである。


高井戸 IC から首都高速、東北自動車道、 そして磐越自動車道を使って会津若松 IC までのドライブ。 通常(現金清算)片道 \6,700 が、ETC利用で今なら \2,000 である。
首都高速 \500、大都市近郊区間(川口〜加須※深夜)\500、地方部区間 \1,000(上限 \1,000)
2009 年 4 月 1 日から二年の期間限定で始まったこの割り引きは今現在まだ熱狂の中にあり、 土日祝日の高速道路に渋滞を引き起こしている。 僕は渋滞が嫌いで、渋滞の中にみすみす入るぐらいなら家で寝ていた方がマシ、と思っているのだが、 せっかくの割り引きを使わない手はない。 幸い割り引きは、流入と流出のうち片方が土日祝日内に行われていればよく、だから今回は

4/26(日) 深夜、高速道路の入り口ゲートをくぐる
4/27(月) 高速道路を出て、平日旅行
4/28(火) 平日旅行、高速道路に入る
4/29(祝) 未明、高速道路の出口ゲートをくぐる   ←※一泊四日の旅w

というやり方で高速道路の割り引きを享受し、かつ渋滞・混雑のない旅行を楽しむという算段なのである。 ただ、寄る年波に深夜ドライブが少々きつい。 チャイルドシートなので子供も安眠というわけにもいかないだろう。 なかなかの強行軍になりそうだが、事故だけはしないようにしなくては。

───特に訴求力のない事柄は省いて話を進める事にする。

往路の高速道路はガラ空きだった。 しかし、デジタコの付いているらしいノロノロ運転のトラックが以前よりも増えている。 彼らは速度が出ない分、前走トラックをうんと引き付けてからいきなり追い越しにかかる(車線変更してくる)ので、 その手のトラック集団の横を通るのが少し怖い。 それでもまずまず軽快に走り、途中の佐野 SA で仮眠を取って、朝 8:00 頃に喜多方に到着。

まずは「朝ラー(僕の造語ではない。ちゃんと 流通している言葉 である)」だ。 出発前に、行きたいラーメン屋をピックアップしたのだが、 朝早くから営業して朝食に対応している店は本格という感じがする。 というわけで AM7:30 から開店の「まこと食堂(満古登食堂)」に行ってみると…休みであった。 この店は僕が一番行ってみたい店だったのだが…。 今回は二日間の行程だから、定休曜日をあまりよく調べていなかったのだ。 休みなら次の日に行けばいいのである。というわけで二番目に行きたかった「坂内食堂」へ。

ここでちょっと宣言しておくが、今回のレポートにラーメンの丼写真は載せない。 載せたくないのである。そして撮りたくないのである。 僕は都合五軒のラーメン屋に行ったが、どこも超有名店だ。 インターネットで検索すればそれらのラーメンの画像など掃いて捨てるほど出てくるから、 同じようなコンパクトデジカメで同じように撮ったラーメン画像に価値はない。 また、「本当に食べたんだかんな」等という証拠写真ってのもなんかセコい。 例外があるとしたら、真摯にラーメンサイトの制作に取り組む人が、 著作権を気にせず自由に使える画像として撮影する場合、等であろうか。
ここで言うのは丼アップの写真の事である。 ラーメンを食べる私達、というような情景写真にはおおいに意味があると思うから誤解のないよう。


「坂内食堂」は人気ではおそらく喜多方ラーメンで三本指に入る店だろう。 しかし平日朝とあって、9 台分ある駐車場には空きがあり、 入店〜注文〜着席はまったく待つ事がなかった。ビバ平日。
「坂内食堂」のラーメンは、喜多方地方以外に進出しているチェーン店の物とは別物だというのは有名な話であり、 だからこそ非常に期待して「肉そば」を食べた。 チェーン版「坂内」のチャーシュー(煮豚?)はとても塩っぱいけれど、ここのは適度な味付けで、 だからあのスープの表面を覆う量でも難なく食べる事ができる。 スープも、チェーン店版が「へー、醤油じゃなくて塩なんだ」と思う程度なのに比べて、 本店のは完全に塩である。薄味といえば薄味。でも決して物足りなくはない。 麺は僕程度のレベルではチェーン店との差はわからなかった(同時に食べ比べればわかるかもしれないけれど)。 まぁとにかく、美味かったですねぇ。

この日は寒くなるとの天気予報。アウトドアでのレジャーにはあまり向いていなさそうなので、 朝食の後は温泉にでも行こう、という話になった。 いくつか調べてあった日帰り温泉のうち、「 道の駅 喜多の郷 」内にある「蔵の湯」が手ごろな感じの距離なので、 とりあえず行って、道の駅内の土産物屋を見たり、併設された池のほとりを散歩してみたりしたが、 事前の下調べ(ネット上のクチコミ)にあった、 塩素臭が強いらしい&シャンプー等のアメニティがないらしい、という情報が気になって、 結局は別の温泉を探してみる事にした。 温泉地はいくつかあるのだが、日帰り入浴ができるかどうかわからない。 また昼にはまた市街地に戻ってラーメンを食べなくてはならないので、あまり遠くまでは行けない。 …僕も女房も携帯電話でのインターネット利用に金は払わない派なのでこういう時は不便だ…。 女房と協議の結果、桧原湖方面の「 ラビスパ裏磐梯 」に向かってみる事にした。 もしかしたら温泉リゾートみたいな施設で入浴料が \1,500 とか \2,000 もするかもしれないけれど、 そうだったら入るのはやめましょう、という腹だ。 腹ごなしのドライブがてら行ってみると、 この「ラビスパ裏磐梯」のある山の上は寒風が吹きすさぶ冬真っ只中だった。 さて料金だが、プールを使うと利用料はかさむが温泉だけなら大人一人 \500 。手ごろである。 子供二人は女房と女湯。 僕の入った男湯は最初、僕一人で貸し切り状態だった(少し経ってから二人入ってきた)。 ちなみに女湯の方はお婆ちゃん達がかなり入っていて、 子供達をかまってくれたらしい。ありがたい事だ。

さてひとっ風呂浴びて運転の疲れを癒した後の昼食は、 子供を気遣ってラーメン以外の物が置いてある店の中から選ぶ事にした。 というわけで「源来軒」である。ここも駐車場に問題なくすぐに入庫、すぐ入店・着席。 二階の座敷に通されたので、眠ってしまった下の子を畳に寝かせて注文。 上の子にはご飯ものを食べさせるつもりだったのだが、 本人の意向により、やはりラーメンを食べさせる事になってしまった。
さてお味のほうは、かなり濃いしょうゆ味で、油の層も多い感じ。 酸味が結構あるように感じたのは酢がわりと入っているのか、 メンマの漬けダレかなんかがスープに混ぜてあるのか。 僕にはかなりざっくりした味わいに感じられた。 喜多方ラーメン発祥の店という事で、 原点らしい荒々しさがあるといったら明らかに褒め過ぎだけど、まぁそんな感じ。

次は宿にチェックインの予定だったが、 宿のご主人がご不在で手続きがいろいろと煩雑になりそうだったので、 会津若松まで出てちょっと時間潰し。 ショッピングセンターでソフトクリームを食べたり、ゲームコーナーを眺めたり。

夕方、再び戻った宿でチェックイン。今回の宿は家族での利用は初となるユースホステルで、「 会津の里 」である。 かなり古びた建物で、内装の具合もなかなか…だったので、女房が受け入れられるか心配だったが 苦笑いしつつも大丈夫だったらしい。タフな女房でありがたい事だ。 子供達は広い居室に大はしゃぎで大人しくさせるのに大変だったが、 どうやら同じフロアに他のお客さんはいなかったようなのが幸いだった。

晩飯はラーメン以外の物を…と思っていたのだが宿の周りに食べ物屋がほとんどなく、 「じゃあ…ラーメンにしようか…」と非常に消極的にラーメンにしたものの、 ピックアップしてある残りのラーメン屋のうち、「まこと食堂」は前述のように定休日、 「あべ食堂」は営業が 15:00 までなのでアウト。 うーむ、としばし考えて行く事にしたのはピックアップ外の「食堂なまえ」である。 行ってみると、裏道にひっそりと立つ建物はかなり小さく、 大テーブルが一つに小テーブルが二つと、キャパは相当小さい。 かなりの有名店であるのだが、今の状況では到底そうは思えず、 「町内のおっちゃんがやってるラーメン屋さん」としか感じられない。 注文は、大人二人がラーメンの「極太手打ち麺」と「普通麺」を分け合う事にして、 子供にはオムライス(!)をとった。
運ばれてきたラーメンは薄い色の塩味のスープで、「坂内食堂」に近いけれども もうちょっと油が少ない感じ。本当にごくごく飲める味である。 麺は、普通麺の方はあまり好みではなかったけれど、 極太手打ち麺の方が、本当に本当に美味かった! 小麦の匂いが濃厚で、フェットチーネとかペンネとかの美味しい奴、のような感じである。 ここは行ってよかった!ここのラーメンは東京では食べられまい。 行かずに済ませていたかもしれないと思うとくらくらする。 おじさんもとてもいい人だった。 19:00 の閉店前の最後の客だったのだが、 他の客がいない状況でゆっくりできたのもとてもよかった。

スーパーで酒やつまみを買って帰り、テレビを眺めながら女房と飲み、眠くなったので消灯して寝る。 どっと疲れが出たのか、子供より先に眠ってしまったようだった。

翌朝。起きて、身支度をして、チェックアウト。で、朝ラーだ。

何度も周辺を通ったのでもう地図を見なくても行ける「まこと食堂」が本日最初のラーメン。 店の半分はお客が入っていたが、もう半分(向かって右の座敷のほう)はガラガラ、というか、 他に客はいなくて貸し切りのようだった。 ここではラーメンと、ソースカツ丼を注文。 ラーメンは濃い目醤油味だがぎすぎすした所がない。 麺も当たり前のように美味く、 この店が、喜多方ラーメンの平均的な、そして代表的な美味しさと言っていいと思う。 ソースカツ丼は、ソースの味が一般的な物より塩気が少なめなのか、 塩辛くはない。適度な味の濃さで、カツの下に敷かれたキャベツもあいまって、 とてもいい具合に食べられる。朝からトンカツってのもどうかと思うけれど (実際、平日の朝から注文する人は少ないのか、カツは作り置きされていなかった)、 子供ともども美味しくいただきました。

朝食を終えて観光タイム。昨日行った「ラビスパ裏磐梯」の横をまた通って五色沼を目指す。 R459 はなかなか気持ちのいいワインディングロードで、 バイクで走りたいなぁ等と考えながら、途中の「道の駅 裏磐梯」で休憩。 女房は地場野菜を少し買ったようである。

「裏磐梯物産館」の横から五色沼にアプローチする。
後で調べたところによると、本当は逆側の「五色沼入口バス停」から入って 毘沙門沼を最初に見るのが正式な順序らしい。
まだ長い時間は歩けない下の子がいるので、 片道一時間強となる全行程はとても見られない。 最初から、数個の沼を見て引き返す予定で散策を始めた。 右の写真は二つ目の「青沼」である。 自然界の色とは思えない翡翠のようなブルーの沼を見て最初に連想したのは 中国の汚染された湖だった(汗)。 おそらくここのは火山活動と密接な関係にある鉱物質(コバルトとか) の影響でこういう色になっているのだろうが、 瞬間に感じる禍々しさは水質汚染と同じ要素を持つからかもしれない。
「青沼」の次の「るり沼」で U ターン。 この沼めぐりには保険で「かるいdeちゅ」(軽量ベビーカー)を担いで行ったのだが、 果たして下の子は帰り道でギブアップし、ベビーカーに乗せて帰る事になった。 しかし探勝路の路面は非常に荒れており、手のひら大の角ばった石がゴロゴロしていて ベビーカーを進めるのは非常に難儀だった。 僕は薄いソールの運動靴を履いていたのだが、土踏まずが痛くなったほどである。 この探勝路を歩くなら、厚いゴム底のスニーカーやトレッキングシューズを勧めたい。

昼飯時になったので、喜多方市街地に戻る。 今晩の夕食は帰路の時間調整のためにファミレスを使う予定だから、 この昼食がここ喜多方で食べる最後のラーメンだ。店は「あべ食堂」。 すんなり車を停めて、すんなり入店・着席。 ここのラーメンは、私見だけれど「まこと食堂」にとても似ているようだ。 ただ、油の層が少なめだと思う。 少し時間が経ってしまった今となっては、二つの店の違いを書き分けるのは僕には難しい。 とりあえず、ニュートラルで食べやすい味であった。

ここで喜多方ラーメンについて少しまとめておくと、今回行った店で僕が気に入った順は

食堂なまえ(極太手打ち麺)
坂内食堂
まこと食堂
あべ食堂
源来軒

となる。 しかし、喜多方ラーメンでどれか一軒を紹介してくれと言われたら「まこと食堂」と言うだろう。

結局、美味しいという感覚だけでは語れないのだと思う。 滅多に食べられないとか、食べた事がないとか、そういうレア感も評価に組み入れざるを得ない。 まことやあべは美味いけど、もしかしたら東京でも食べられそう、と思ってしまうのだ。 東京は良くも悪しくもいろいろなものが集まってきていて選択肢が多い。 なんだかんだ言っても美味い物もまた多いわけで、 そういう環境に身を置いていると、異色の味には高い評価を与えてしまう。 だからつまりこのランキングは僕だけのランキングだ。 それは仕方ないだろう。
それと特筆したいのは今回の一連のラーメン屋巡りで、僕が一秒たりとも並ばなかった事と、 全ての店がとても空いていて、おそらくは店側にも余裕があっただろうという事だ。 「並んでまで食べる味ではない」という言葉の裏には 「並ばないで食べられるなら充分アリ」という真理もまたある。 さらに、空いた状況では店側の応対も良かったのだろうし、 ひょっとしたら味だって良い方へシフトしていたかもしれない。
お約束の話題を押さえておきたいだけの人はともかく、 本当に喜多方ラーメンの味を知りたい人は、 平日にこの地を訪れて、ゆっくりラーメンをご賞味する事をお薦めする。



ラーメンツアーとしての行程が終了したため、暇になってしまった。 しかし夕食まで時間はたっぷりある。 昨日から子供があまりのびのび遊んでいないので、 公園を探してみる事にした。 まずは喜多方から程近い、塩川の御殿場公園に向かってみる。 しかしこれが見つからない。 相当量の桜がライトアップされているという話だから、 かなりの規模の公園だと思ったのだが…(Yahoo!のお花見特集 2009 にも掲載されている)。 写真は御殿場公園を探している途中での空と雲。雄大で、美しい。

写真は日橋川にかかる鯉のぼり。 喜多方から桧原湖に向かう R459 にも、同じような鯉のぼりの渡しがあった。 最近流行っているのかしら? いろんなツーリング先でわりと見かけるから、 さほど目新しい感じはしないけれども、季節の風物詩だからやはりちょっと気になってしまう。 たぶん各家で不要になった鯉のぼりの寄付なんだろう。

結局見つからない御殿場公園に見切りをつけて向かったのは「鶴ヶ城(会津若松城)」。 駐車場への入路がわかりにくく、車を停めた時には既に天守閣の公開時間が終わっていたので 中庭で少し遊ぶ事にした。 いくつかの桜は今が見頃を迎えており、 記念写真を撮るのにちょうどいい。 数人のお客さんが帰ってしまうと中庭にいるのは僕達だけとなった。 きれいな中庭が貸し切りだ。 子供達は久々の広い空間に大はしゃぎで、かくれんぼや鬼ごっこをしていた。


日が暮れ始め、空が青く染まっていく。 子供達とこんなに暗くなるまで公園にいる事はあまりないので不思議な感じだ。 しかしもうちょっと時間を潰さねばならない。


城もだんだん影になっていく。この城は後年建て替えられたものらしいが、 なかなか端正な城だ。この写真ではパースがついて、超々々弩級戦艦にも見える。 しかし主役はあくまでも空、なつもりである。

きれいな夕焼けとなった後、日が沈んだ。休暇が終わってしまったようで寂しいけれど、 実はまだ帰りの運転が残っているのであった。

会津若松付近の、またしてもショッピングセンターで時間をさらに潰した後、 見慣れたファミレスに入って夕食をとった。 今日は東北道の東京側、浦和料金所を 24:00を過ぎてから通過しなくてはならない。 どう時間を過ごそうかと思ったが、子供達の食事に結構時間がかかり、 結局出発時間も遅くなったために、あまり時間調整をしなくてもよくなった。 空いている高速道路を女房と交互に運転をして、自宅に帰りついたのが 1:10 ぐらい。 ラーメンともう一つの目的である、高速道路の料金値下げ享受のほうも無事にこなす事ができた。 見栄えのいい旅ではなかったかもしれないが、 自分の好みで構築できたいい旅行だったと思う。 子供達には、本当にお疲れ様でした。     <おしまい>

総走行距離 880km