ぜんざいを作ろう

SNS の mixi での知人とツーリングをしていた時の事、
関東の SA やら観光地やらには「ぜんざい(善哉)」がないねという話になった
(ついでに冷やし飴もないねという話にもなった)。
僕はぜんざいよりも汁粉の方が好き(子供の頃、粒餡が苦手だった)なのだが
最近は歳をとった事もあって小豆のかたちの残るぜんざいも結構美味しい気がする。
ツーリング先で売ってないなら、
甘党の知人のためにもツーリング先で自分で作ってみよう。

知人に提供する前に、まずは試作してみる事にした。
キャンプツーリングを始めたおかげで道具も大体揃っているから
冬場の火器のテストも兼ねて、というところだ。
基本的にはバイクに積めて、なおかつツーリングの邪魔にならない道具でやる事にする。
小豆を煮るところから始めたら時間もかかるし、
ツーリングの休憩時間にちょっと、というコンセプトからずれるので
茹で小豆の缶詰は積極的に使う事にした。
ただ、自動販売機の缶入り汁粉とは一線を画すべく、
餅は焼いて投入する事を理念とする次第である。


ぜんざいを作るにはそれなりに時間がかかると思われた。 寒い中を走ってきたのに、ぜんざいが出来上がるのをひたすら待ってもらう、のは顰蹙だ。 というわけでまずはお茶を提供するべく 400cc の水をケトルで沸かす。 火器はここではアルコールバーナー(トランギア TR-B25)だ。 この日は穏やかで風もない日だったので風除けはいらなかった。 だがしかし相変わらず炎は見えず、 かすかな音と、かざした手の平への熱気で なんとか燃焼を確認するしかない。

餅は一般的に考えて、炭火で焼くのが常套手段と思われた。 しかしたかが餅を4切れ焼くのに BBQ グリルいっぱいの炭を熾すのもアホくさいので、 木炭3個ぐらいを熾してみる事にする。 ただ着火はなるべくスムーズに行いたかったので、 木炭3個に対して着火ゼリーは2パック使用、と贅沢にやってみた。

着火ゼリーは100均のダイソーで買った安物だが、 めらめらとがんばって燃えている。 ちなみに BBQ グリルは 尾上製作所のフォールディング バーベキューコンロ F-2527 である。余裕でバイクに積載可能だ。 向こうではトラギが無言で湯を沸かしている。健気な奴。

BBQ グリルを組み立てたり、着火剤を取り出して並べたりしていると、 あっという間に時間が経って、400cc の湯が沸いた。 かかった時間は14分ほどだ。気温は10度ぐらいだろうか。

茶を入れた。顆粒の昆布茶だ。甘いぜんざいとのマッチングもおそらくいいはず。

昆布茶を飲みつつ、炭を手製の火吹き竹で吹く。 この竹は自宅の裏の神社の林で拾ってきて、 BBQ グリルのケースに入れられる大きさにカットした物だ。 素抜けではなく、まぶすような空気が出るように、 錐で小さな穴を開けてある。 これは、以前購入して今も我が家で現役の、市販品の火吹き竹がそうだったので、 習ってみたものである。

ぶうぶう吹いて、炎がふわっと燃え上がるぐらいまでにはなるのだが、 まだそれぞれの炭の、ある1面しか燃えていない。 BBQ だったらこのぐらいからしばらく放置なんだけど、 ツーリングの休憩時間という設定からすると、 ちょっとまどろっこしい感じだ。

木炭熾しが低迷したので餡の方をやる事にして、 ガスバーナーを組み立てた。 用意した缶詰は「茹で小豆」と「練り餡」の二種類。 「茹で小豆」っていうのが、小豆の姿煮状態でアンコっぽくなかったら、 「練り餡」を投入してそれらしく仕上げようと思ったのである。

なんと、茹で小豆の缶詰が「パッカン」じゃないじゃない。 少し前の日本じゃ考えられないけれど、 逆に2007年のこの日本だと、 「あぁあるかもね」と思えるこの不思議。 武器ポーチに缶切りは入っているから、 数少ない出番となって結構結構。

中身をコッヘルにあけた後に、その内容量の50%ぐらいの水を計って入れる。 水はさっき沸かしたお湯の残りだ。 また、一つまみの塩も、隠し味として入れる。 この塩がないと、全体として甘く感じられないのだそうだ。 「茹で小豆」はかなり煮崩れていて、「餡」となっている量も結構あったので、 「練り餡」は使わない事にした。

餅は薄めのカットを売りにする、個別真空パックの物。 とはいってもしゃぶしゃぶ用の餅ほど薄くない。

BBQ コンロの金網の上に載せてみる。 木炭から金網までの距離がある事も手伝って、 どうにも火力不足を感じる。

餅、焼けるかなあと心細くなっていると、 餡の方が熱く煮えてしまった。 カセットガスを含むガスストーブは寒さに弱いというけれど、 今日は役に立たないほどには寒くないのだろう。 使えるのはいい事だが、冬期にどのぐらい使えないのかを知る事はできなかった。 経験しておきたかったのだが…またいずれやってみよう。

餡のほうが出来上がったので、もうタイムリミットだ。 やおら餅焼き用の小さい網を取り出してガスストーブに乗せ、 そいつで餅を焼き始める。直火で食材を焼けるのがガスストーブのいいところだ。 だったら最初からそうしておけという感じだが…。とにかくBBQ コンロ、却下。
餅を焼く熱源としては、このガスバーナー(US-TRAIL)は、 さほど優秀というわけではない。 バーナーヘッドが小さいので、包み込むような熱にならないのだ。 金網には一応バーナーパットのような白い拡散網?が付いているけれど、 それでももうちょっと柔らかい火の方がいいのだろう。

焼いた感じとしては、小さな餅なのに焼きムラが激しくて、 ちゃんと柔らかくなるのか非常に不安だったが、 餅は貧乏人に焼かせろとの格言通り、頻繁に動かしていたら、 なんとか膨らむところまでいった。 膨らんでみるとなかなか美味そうである。

焼けた餅を餡の中に投入して、再び火にかけ加熱する。 ドロドロの粘性な餡だから、火から下ろしてあってもそんなには冷たくなっていないが、 気は心、なのだ。

さて、いただきます。

うっ、あ、甘い…。

茹で小豆の缶詰には砂糖があらかじめ入っているのだが、これがかなり甘い。
僕は甘い物もかなりいける口だがそれでも甘いのだ。
かといって水を増やしてはさらっとし過ぎてしまうし、
これは砂糖が入っていないかもしくは少な目の缶詰を探さねばならないな。
ま、でも食べられないほどではないし、餅は美味い。

全体として、缶入り汁粉とはまったく違う物なので、
これが30分でできるなら実戦投入する価値はおおいにあるだろう。
また練習して、タイムを縮めよう。
それと、厳寒期にもやってみなくては。


なんだかんだで、この時点でもう1時間近くが経過している。 却下して放置してあった木炭はといえば、 もちろん燃え続けてはいるけれど、3片では相互に燃えあう効果もなく、 まったく気勢も上がっていない。 火吹き竹で熾し続けてやれば違ったかもしれないが、 がんばっても焼くのは餅数切れだし、効率としてはイマイチだ。 炭で餅を焼く、というのは見栄えもするし美味しいのだろうけど、 ツーリングの休憩時間にはまったくそぐわない。 ガスバーナーで充分である。