磯辺焼きを作ろう

我が家…というよりも主に女房は東海林さだおのファンである。
丸かじりシリーズもかなりの冊数が本棚に鎮座しているのだが
このたび買ってきた「昼メシの丸かじり」の一つ目のエッセイが、
屋台で売られている磯辺焼きについてだった。
ショージ君独自(?)の作り方も記載されていたのだが
それを読んで、あれっ?と思った。
磯辺焼きって、海苔で巻いてから「も」海苔ごと焼くんだっけ?
それに、鉄板で焼く前に網焼きする、なんていうけど
屋台でそんな手間暇かけるか?

うっすらとした記憶では、アメ横の屋台の鉄板の上に、
そういえば海苔をまとった磯辺焼きがいたような気がする。
だが、海苔を焼くか? 炙るのではなく、鉄板で!?
いますぐにアメ横に確認しに行きたい気持ちを抑えて、
磯辺焼き漫画の最高峰である、
小林まこと著・「へば!ハローちゃん」をチェックする。
だが肝心の鉄板の上の描写は残念ながらかなり省略されており
海苔を巻いて焼いているのかどうか判別できなかった。

インターネットで検索してみると、「磯辺焼き」のレシピはなぜか餅以外の物が多く、
また餅での磯辺焼きの記述があったとしても家庭での網焼きについてばっかりで
屋台のような、鉄板で焼く作り方は探し当てる事ができなかった。
どうも磯辺焼きは、餅を焼いて醤油をつけて海苔で巻くだけ、という
説明するのもバカらしい料理として認識されているらしい。
2ちゃんねるの餅料理スレッドではフライパンに油を引いて焼く食べ方が紹介されているが
屋台の磯辺焼きとの関連付けはされていないし
海苔を巻いて焼くのかどうかなんて事には触れていない。

こうなったらもう僕が作るしかないであろう。
そして屋台風磯辺焼きの作り方について言及した唯一の(?)サイトになるのだ。


ネットで唯一、磯辺焼きに関して実用的な情報だったのが、餅をあらかじめ水に漬けておく、という物であった。 2時間以上、できれば前夜から、という事だったので、 タッパー内で朝から3〜4時間漬けておく。

フライパン上では油を使うので、はねないように水気をキッチンペーパーでふき取る。

フライパンにサラダ油を引き、超弱火で餅を焼く。 最も懸念していたのが「餅がフライパンにひっついてどうしようもなくなるんじゃないか」という事だった。 炒飯などは強火のほうがかえってひっつかないが、強火だと餅が一気に膨らんでしまうだろう。 少し悩んで、しかし意を決してやってみると、確かに一番最初は餅がフライパンにひっつく、というかこびりつく。 しかしこびりついてもすぐにカリッとなって粘度がなくなり、剥がれるのだ。 「餅は貧乏人に焼かせろ」という(しょっちゅう触って動かさずにはいられないから)が、 超弱火ならあまり頻繁に動かさなくても大丈夫である。 程よくひっくり返しながら、餅の隅々まで柔らかくなったのを感じ取れるまで焼く。

火が通ったと思ったら、続けて焼きながら醤油を刷毛で「餅の上面、片面にだけ」塗ってやる。 この時にはもうひっくり返さない。熱で乾いてから何度か重ね塗りしてやるといいようだ。 この時、なるべくフライパンにこぼさないほうがいいと思う。 こぼさないようにしても多少はこぼれて焦げる。香り付けにはそのぐらいでちょうどいい。 なお、薄味が好きな人はこの、醤油を塗る過程は飛ばしても構わない。

フライパンから取り出して醤油をまぶす。フライパンの上で、柔らかさを出しつつも形を保っていた餅は 醤油をかけられるととたんにぐったりするので、まんべんなくつける事ができる。 実は僕はこの実験の一度目に、こうやって醤油をつけた後にさらにフライパンで焼いてみたのだ。 だがその結果は、醤油が焦げて餅もかさぶたのようになってしまい、失敗だった。

醤油が行き渡ったら、海苔を巻きつける。海苔は、醤油の水分だけではなかなかしんなりしないので 少しシケらせておくほうがいいかもしれない。 この後もう一度フライパンに乗せるが、その時にフライパンに餅が直接接しないように 海苔は大きく巻く事。

海苔を巻いたらフライパンに戻して、少し焼いてみる。 そんなに変化はしないので、あまり意味はない。 してみると、屋台で海苔を巻いた後に鉄板上で焼くのは保温のためかもしれない。

さて、食べてみる。うまい。ちゃんと、ショージ君言うところのぐったり、にっちゃりしている。
やーもうほんとに美味い。家で作ると安上がりなのでぜひお試しを。