仕事で腰を痛めた。仕事の材料を新宿の東急ハンズで買って、市ヶ谷の仕事場まで持って帰った時に痛めたんだと思う。 長尺物を、地面に引きずらないようにちょっと腰をひねり気味にして運んだからだろう。 途中で「これはヤバい」と思った時にタクシーを使っておけば良かった。

…とにかく翌日から、立ち上がったり座ったりの動作の時に、腰に激しく刺激を感じてしまうようになってしまったのだ。 近所の整形外科で見てもらうと幸いヘルニアではなく、ぎっくり腰との事。 2週間安静に、と言われたがそんな事はできようはずもない。 1日置きに出社していてそのためか全然回復のきざしが見えず、先日の深夜のロケでとどめを差してしまった。 とにかく何をしても腰に響くのだ。歩く度に踵から衝撃がくる。深く息を吸えばまた響く。 もはや湿布と痛み止めの薬じゃ太刀打ちできない。

そんな折り、会社の同僚からとある治療院を紹介してもらった。 聞けばその治療院は、整体のような、気功術のような、不思議な治療だと言う。 頭からは信頼する気にはなれなかったが、紹介してくれた人の他に、同じ会社の同僚でもう一人治療してもらった人がいて 「不思議に治っちゃったんですよ」と言う。今まで、僕はテレビ等で見る気功術(功夫も含めて)を、どこか信じていなかった。 半分は、心理を操る催眠術に近い物かと思っていたのだ。 だから例えばタウンページでその治療院を発見しても、絶対に行かなかっただろう。 しかし同じ環境で日々同じように労働している者が勧めるならば信じてみる気にもなる。 また、会計も明朗だと言うから心身共に弱っていた僕は行ってみる事にした。

都心から少し離れたその場所は、電車で行くならちょっと手間取るが、車で行けば渋滞こそあったがほぼ一本道。 そして行き着いた予想外に洒落た建物がその治療院だった。 出迎えてくれたのは、おおよそ医学を「参考書で学んだ」とは見えない(失礼)、 どちらかと言うと「師に学んだ」とか「修行した」とかいうのがぴったりな、存在感のある先生だった。

診察用紙に住所や生年月日を書き込んで、いよいよ診察。 腰が痛い、と訴えると、まず僕の身体のコンディションを見る事になったらしい。 腰が痛いと言っているのに上腕がどのぐらい後ろに反るかとか、上に伸ばした両手の長さが違うとか、 やられている方はチンプンカンプンである。その後、指摘した不具合を一つずつ治して… いや、直してと言った方がいいのだろうか…いったのだが、 とにかく身体の部位をちょっと(ほんとにちょっと!!)押してみたり、さすったりするだけで身体の具合が変わってくるのだ。 ツボを押しているというような感じじゃない、身体にスイッチがあってそれを操作しているような感じ。 しかしそれで背骨がなだらかになったり関節が反るようになったり腕が伸びたりするのである(!)。 「こんなもんかな?」と背骨を押して、「もうちょっとかな?」と押し直して。 たいした力も入れていないそのひと押しで、僕の身体の調整がなされていく。 ほんと、バイクのサスペンションのアジャストみたいなもんである。僕は笑えてきてしょうがなかった。 理解できなくて、自然に笑ってしまうのだ。信じられなくても、身体がその治療に反応している。 身体が先生の指の言う事を聞いてしまうのだ、驚くほど従順に!。笑うしかないではないか。

今日の治療の最後の微調整、と言って先生は、僕が痛みを訴える尾てい骨に指(たぶん)を添えた。 すると、ピリピリという刺激が徐々に尾てい骨に伝わってくるではないか! なんらかのパワーが、電気のように僕の身体に送られたのだ。これには参った、感動した。

話を聞くと、僕の身体は相当ひどいらしい。何回か治療をしないと完治はしないという事。 しかし腰の痛みは不思議な事に消えている!多少重い感じがするが、この治療院に来る前と比べると、 ほとんど「治った」とさえ言えるぐらいの劇的な治癒である。 来週ぐらいにもう一度来なさいと言われて、もちろん来よう、と僕は思った。

今の僕は気功術を全面的に信じている。下手したら「北斗の拳」の秘孔だって信じてしまうかもしれない。