ブレーキキャリパーマウントボルトについて

2009年10月10日(土)
9月20日、ロングツーリングから帰宅して一週間後。
キャンプ道具の片付けを優先したので後回しにしていたバイクに、やっと手を付ける事ができた。
雨中走行でのドロ汚れを落とした後、
ツーリング中から効き具合に首をかしげていたブレーキを整備してやる事にする。

効きが弱く感じるのは、立ちゴケをしたのでエアが入ったからかなと思い、
清掃も兼ねて揉み出しとエア抜きをする事にした。
今回は今までのシリコングリスに代えて評判のいい「メタルラバー」を投入。
これでピストンの繰り出しが良好になるといいのだけれど。

揉み出しが終わり、キャリパーをアウターチューブに取り付ける時に事件は起きた。
締め付けトルクは 34N・m なのでトルクレンチでいつものように締め付けると、
なんだかいつまでも締め終わらない。
「うーん、やな感じ……」と思ったけれど規定トルクを守っているのだからと自分に言い聞かせ、
なおも締め続けると、ぐにゅぅうっというなんとも嫌な手ごたえと共にマウントボルトが折れてしまったのだ。
ぎゃああああ!と心の中で叫んでももう遅い。

ボルトが折れたボルトが折れた残ったネジ強くねじ込んであるネジバイク屋でバイク屋に持ち込んで バイスで無理無理無理タガネで少しずついや逆タップ立ててあああ金が金が金が。

しかし実は。
アウターチューブからキャリパーを取り外してみると、
キャリパーのネジ穴は貫通しているので締め付けが解放されており、
残ったネジは難なくプライヤーでくるくる回せたのだった。

ほっとして数日後、バイク屋でキャリパーマウントボルトを注文。
力のかかる場所だけに、材質などの保証されないホームセンターのネジはあまり使う気になれない。

そしてまた数日後。バイク屋に入荷の問い合わせをすると、
なんとそのキャリパーマウントボルトがバックオーダー、つまり欠品になっているというではないか。
ちなみに僕の 9R は6年前のバイクなので、部品の供給期間としては微妙と言えば微妙なのだが、
たかが 8X30 のフランジボルトである。欠品っていうのはちょっとないんじゃないだろうか。
そんな疑問がきっかけとなってちょっと調べてみた。ここからが本題である。

※検索用
キャリパー取り付けボルト キャリパー取り付けネジ キャリパーボルト



カワサキの web サイトでは パーツが検索できる からそこから調べてみると(2009.10.7現在)、

「'02-'03 ZX900-F1/F2(NINJA ZX-9R)」用の「BOLT,FLANGED,8X30」は「92153-1089」で、
そのパーツを使う代表機種は「'09 ZX1200-D9F(ZRX1200 DAEG)」である(ダエグ用がなぜ初年度から欠品?)。
ちなみにこの「92153-1089」を採用している車種には他に「'02-'05 ZX1200-C1/C2/C3/C4(ZZR1200)」がある。
その他にもまだあるかもしれないがそれは探してみていただきたい。

次に、ボルトの値段を調べてみる。
NINJA ZX-9R'02-'03、
ZRX1200 DAEG'09、
ZZR1200'02-'05 用の BOLT,FLANGED,8X30 は税込み \74。

NINJA ZX-9R'00-'01 用の BOLT,FLANGED,10X37 は税込み \410。

ZRX1200R'06-'08 用の ボルト,フランジ,10X38 は税込み \179。

ZZR1100'99-'01 用の BOLT,FLANGED,10X38 は税込み \242。

ここで注目すべきはそのサイズの差と値段の差である。
一般的にこの手の部品がサイズダウンする場合、強度の確保の代償としてコストは上がると思われるのだが、
いったいなぜこんなに安い部品で賄えてしまうのだろうか。

以下に参考資料として各車種用のパーツ番号などを記しておく(2009.10.7現在)。

'02-'03 ZX900-F1/F2(NINJA ZX-9R)
'09 ZX1200-D9F(ZRX1200 DAEG)
'02-'05 ZX1200-C1/C2/C3/C4(ZZR1200)
92153-1089 代表機種 ZR1200D9F
BOLT,FLANGED,8X30
\74(税抜き \70)

'00-'01 ZX900-E1/E2(NINJA ZX-9R)
92151-1610 代表機種 ZX900-E1
BOLT,FLANGED,10X37
\410(税抜き \390)

'06-'08 ZR1200-A6F/A7F/A8F(ZRX1200R)
92151-1288 代表機種 EJ650A8F
ボルト,フランジ,10X38
\179(税抜き \170)

'99-'01 ZX1100-D7/D9(ZZR1100)
92150-1297 代表機種 BN125A8F
BOLT,FLANGED,10X38
\242(税抜き \230)



補足
キャリパーの取り付け時に使用したトルクレンチはスエカゲ製の、
安物であるが評判はまずまず、という物である。
買ってからたぶん 20 回程度しか使っていないので OH の必要性はないだろう。
使用した後はトルク設定を戻し、テンションを抜いて保管しているから
トルクレンチには問題はないと思う。

キャリパーマウントボルトは何回か付け外ししている。
パッド交換や揉み出し等で、五回以上、十回未満といったところだろうか。
定期的に新しい物と交換が必要である、等とは聞いた事がないが、
強いトルクで伸びる事でキャリパーを固定している事を考えると、
定期交換対象としてもいいような気がする。

マウントボルトの締め付けトルクは当然サービスマニュアルに準じているのだが、
実はそこに一つ問題がある。
ZX-9R F 型のサービスマニュアルの 12-9 には
フロントキャリパーマウントボルトの締め付けは 34N・m と書かれているが
1-26 の GENERAL INFORMATION には 25N・m と書かれているのだ。
当然どちらかが記載ミスなわけだが、
「92153-1089」というパーツが選定された時に
25N・m という指示が参照されていた可能性はないだろうか。


この後の話をすると、さして日数の経たないうちにボルトは入荷した。
しかし僕は、ネット通販で買った
BUMAX (ブマックス)の高強度ステンレスのボルトを使う事にした。
堅過ぎてもいけないのかもなと思って強度 8.8 にしたが、
チタンボルトの存在を考えると 10.9 にしておいてもよかったなと思う。

そう、世の中にはチタンボルトなんていう物もあるのだが、いかんせん高すぎる。
BUMAX を知った後、では。

最後に画像を掲載しておく事にする。
これはなかなかぞっとする画像だと思うのだがいかがだろうか。



折れたマウントボルトと、折れなかったマウントボルト。


6年使用のマウントボルト(上の写真の折れなかった方と同一)と、同型の新品マウントボルト。
伸びてしまって明らかにピッチが変わっているし、痩せている。


<おしまい>