ラジエター冷却水(クーラント)の交換

ユーザー車検に伴い、各整備を自分でしなくてはならない。
一通りの日常整備はできるつもりなんだけど、ラジエターの整備は自分でした事がなかった。

そもそも僕が熱心にバイク雑誌や入門書を読んでいた頃は空冷エンジンが主流で、
だから整備のハウツーにも、ラジエターの事はあまり出てこなかったのだ。
とはいえRZやγが出てき始めていたのではあるけれど、
残念な事に僕はカワサキ派だったので、水冷バイクに乗り始めたのは人より遅かったし、
水冷に乗り始めてからは、ずっとバイク屋任せにしていたのだった。

さてそんなわけで初めてのクーラント交換である。


まずアンダーとセンターのカウリングを外す。 ラジエターへの注入は右で、排出とリザーブタンクは左だから両方外したほうがいい。

リザーブタンクを外して中のクーラントを排出し、タンク内を水でゆすぐ。 この時、ホース類は付けっぱなしでやればいいとあちこちで見かけるが、 付けっぱなし「でないとならない」わけではないだろうから、洗いやすいように外す。

ラジエターキャップを外す。キャップの外し方は独特で、 まず止まるところまで緩めると気密性が抜け、そこから押し回すとキャップが外れるようになる。 相当圧力がかかるだろうからこの方法なのだろう。

ZX-9R の場合、オイルポンプカバーのところにあるボルトが、 ラジエターのドレンボルトだ。これを外すと勢いよくクーラント液が排出される。 勢いよくと書いたが本当に勢いよくて、冗談抜きで小便の勢いのようだから それを受ける措置をしっかりとしたほうがいい。 ボルト穴に近いところまで、洗面器を持ち上げておいたほうがいいだろう。

雫も垂れなくなって全部出きったように見えても、エンジンオイルと同じで、 ラインの中に古いクーラントがまだ少し残る。 なので、クーラントの代わりに水道水を入れてフラッシングしてやる事にする。 ドレンを閉じて(この時ワッシャーは古い物でいいと思う)、 リザーブタンクは僕は付けなかったけど(別に出てこない)付けたい人は付けて、 水道水を規定量まで入れてやり、エンジンをかけてアイドリングさせてやる。 さして水温は上げないから、ラジエターキャップは閉めなくても構わないだろう。 周囲の環境が許せば、軽くアクセルを煽ってもいいかもしれない。 9R には水温計が付いているから、60℃ぐらいまで水温が上がったところでエンジンを切り、 水を排出→また水を注入、というプロセスを、排水がほぼ透明になるまで何度かやってやる。 これで、ラジエターの内部はクリーンだ。

水を排出し、今度はしっかりとドレンを締め(ワッシャーも新品に)、 リザーブタンクも取り付ける。 ドレンボルトはワッシャーをパッキンとしていて、締め付けトルクが指定されているので注意。 先にリザーブタンクにクーラント液を満たすが、 この時はペットボトルなどを使って、しっかり濃度を合わせた物を、 タンクを満たす分量だけ作る必要がある。

次はラジエター本体に新しいクーラント液を注入するのだが、 この時は、クーラント原液と水は溶液にしなくてもいいとされている。 つまり、原液と水とをバラバラに入れて、 ラジエター内で混じればそれでいいじゃないかという事なのだ。 30%の溶液が3.1L必要であれば、原液を0.93L入れて、水を2.17L入れればいい。 注意する事は、リザーバータンクで使った分をちゃんと計算に入れる事だ。 また、3.1L入るはずでもそううまく全部は飲み込まない。 ライン内にフラッシングの水等が残っているためだ。 それを考えると、水よりも原液を優先で入れたほうがよいだろう。

アッパーラインまでクーラント液を入れたら、 キャップをしないままでエンジンを始動してエア抜きを始める。 エンジンが温まるにつれ、クーラント液が少しづつ溢れ出すので慌てない事。 どうせ溢れるのでアッパーラインまで入れなくてもいいのだが、 せっかくエア抜きをしているので、気は心である。 ここで気泡がボコボコと出てくると言われるが、僕の場合はさして出てこなかった。 出てこないので、しばらく待っていたら…

ラジエター液が沸点に達して、ものすごい勢いで噴き上がってしまった。 これでは失敗である。

エア抜きはしっかりやらないといけないが、 実質のところ、普段のラジエター液なんて物は、 H2Oを使いつつ100℃を超えて煮え立たせているのだから、 気体をシャットアウトするなんて事はどだい無理という物だ。 ラジエターのエア抜きは、 アイドリング→サーモスタットが作動したらアクセルを何度か煽る、でいいらしい。 その後、水温がやたら上がってしまう前にエンジンを止め、 エンジンが冷えたところで減った分のクーラント液を足してキャップを閉めたら 基本的には終了だ。

あとは後日、乗る前にラジエターキャップを開けて、液量の確認をし、 減っていたら足してやる事を何回か続ければいいという事である。
しかしまぁクーラント噴き上がらせてわかったけれども、 ラジエターという物は相当な圧力を封じ込めている危険物である。 圧力鍋みたいなものだ。 これはしっかりメンテしなければならないな、と実感した整備であった。