バイクのユーザー車検を受ける

僕の ZX-9R が2回目の車検時期を迎えたので、ユーザー車検で通す事にした。
前回の車検はショップに出したのだが、今回はどうにも資金繰りが厳しくて、
これはいよいよユーザー車検を受けてみるしかないだろう、と実行する事にしたのだ。

ユーザー車検自体には、2年前つまり前回の車検直後から興味があった。
なんといっても低コストである。
また、要らないんじゃないかという整備はしなくて済む=そこに費用が発生しない。
逆にこだわりたい整備に関しては、ショップの行う車検メニューの整備よりもしつこい整備が行える。
さらに、バイク乗りとしてのスキルの向上、バイクとの関わりの増加も挙げられる。

デメリットは、整備がうまくやれないかもしれない不安だが、
前回ショップが行った整備内容を見ると、全部自分でできそうな物ばかりなのである。
あえて言えばラジエタークーラント液の交換の経験がないぐらいで、
これもインターネットで検索してみるとそれほど難しくなくやれそうだ。
日常のメンテナンスとあまり変わらない内容だから、
整備スキルが不足する、なんて事もあまり考えられない。

そもそもショップに出したとしても、
アクセルシャフトの金属疲労具合まで見てくれるわけではない。
いや、オーダーがなければ普通、アクセルシャフトを抜く事もしないだろう
(という事はハブダンパーも見ないわけだ)。
ショップのメニューの「車検のための整備一式」が、
その後の2年を保障する整備ではないという事である。
隠れたメカトラブルは、ライダーが運転中に感じ取るしかないのだ。

もし今現在そうしたトラブルの兆しを感じているのであれば、
ショップにその部分を単独で点検・修理・調整してもらえばいいわけで、
それが大幅に割高なはずはないし、そのほうが明快でいいように思う。

そんなわけで、以下がそのレポートだ。


検査前の整備
・四国へのツーリングを終えた後だったので、まず徹底的に車体を磨いた。
・バッテリー(3ヶ月前に交換したばかり)を充電した。
・チェーンを清掃し、給油した。
・タイヤショップで前後のタイヤを交換した(チェーン張り、タイヤ空気圧含む)。
・タンデムステップを取り付け、2名乗車に合った乗車装置とした。
・スリップオンをノーマルサイレンサーに交換した。
・社外品のキャリアを取り外した。
・社外品のスクリーンの縁にビニールテープを貼った。

前回の車検から変化したところが一つある。フロントウインカーが埋め込み式になったのだ。
しかしかなり大きい物(シビックタイプ)で視認性はクリアしてるだろうし、
粘着テープではなくネジ止めしてあるので、きっと通ると思ってそのまま出してみる事にした。

検査前の点検
・ブレーキパッドの残りを確認。
・灯火類の点灯確認。

エンジンオイルとブレーキフルードの量は、日常的に確認しているので特にはしない。
その他については先日のツーリング時に、特に気になる点がなかったので、それを以って点検とした。

うちにはトランスポーターがないので、車検が切れてしまうとバイクを移動させる事ができない。
つまり車検を取りにも行けなくなってしまうわけで、
だから検査前の整備はスケジュール優先とし、車検に受かるための整備、に専念する事にした。
車検後に、さらにメンテナンスを行う予定である。

予約
車検を受ける検査場は、多摩自動車検査登録事務所。
インターネットでのユーザー車検レポートによると、検査には予約が必要らしい。
その予約はテレフォンサービスで行えるのだが、
なんだかインターネットでもできるような雰囲気である。
断言できないのは軽自動車はネット予約できないと明記されているからで、
軽自動車が予約できないのにバイクが予約できるのかと疑問であった。
インターネット予約画面には車種の入力欄がないので、予約の受付は十把一絡げでなされるのだが、
いざ窓口に行って「バイクの場合はこの予約じゃダメだよ」とか言われたらショック過ぎる。

実際に多摩検査場のインターネット予約でバイクのユーザー車検を取った例が、
インターネット上に見つけられなかったので、ここではっきり書く。
多摩自動車検査登録事務所では、バイクも、インターネット予約で検査が受けられる(2007年5月現在)。

さてこの多摩の検査場は午前中に第1ラウンドと第2ラウンド、
午後に第3ラウンドと第4ラウンドと、1日を4部に分けて検査を行っていて、
それに合わせて予約を取っているのだが、
リンク先を試しに見てもらえばわかる通り、第2ラウンドが人気のようで、
これはたぶん車検を取りにくる自動車販売店の、従業員の就業時刻の関係だろう。
一般的には、ユーザー車検なら朝イチがいいと思われるのだが
(問題があった時に自宅に戻ったり、用品店に行ったりする事になるから)、
好きな時間帯を選ぶなら、数日前までに予約はしておくべきだと思われる。
予約番号は控えておく事。

持ち物
・車検証
・現在までの自賠責保険証書
・(現地で入りたくないなら、馴染みの店ででも加入しておいた)今後の分の自賠責保険証書
・軽自動車税納税証明書
・印鑑
・二輪自動車定期点検整備記録簿

今後の分の自賠責保険は、事前に継続手続きしておく事もできるし、
検査場の近くにいくらでも自賠責保険取扱店があるので検査当日に継続手続きする事もできる。

印鑑はシャチハタはおそらく不可だと思われる。

整備記録簿はなくても車検を通す方法があるらしい(前整備・後整備を検索の事)が、
インターネット上で探せば、個人サイトから用紙のダウンロードは簡単にできるし、
なんなら自家製でもいいのだ。
そのぐらいは用意したほうが窓口でスムーズだし、無用な心配もいらなくていいと思う。

大昔に運転時には、自賠責保険料領収証は自賠責保険証書と共に
携行が義務付けられているとバイク雑誌かなんかで読んだ事があり、
以来僕は捨てずに持つようにしていて今回も合わせて提出したのだけれど、
車検時に必要かどうかは不明。

あれば便利かもしれない持ち物
・A4クリップボード
・鉛筆とボールペン
・ヘルメットを固定できるツーリングネット

クリップボードは、ネット上のユーザー車検レポートでは三種の神器のように書かれているが、
まったくその通りである。
検査官が書類を点検するにあたって、あって当たり前のような雰囲気なので、
スムーズに車検を通したいなら用意したほうがいい。

鉛筆とボールペンは両方必要である。書類記入台に備え付けてあるので不要かもしれないが、
インクが出なかったり、混んでいて本数が足らなかったりしたら面倒なので持っていくといいと思う。

検査ラインではヘルメットを脱いだほうがいい。検査官の言葉が聞こえないからだ。
脱いだヘルメットを置いておく場所はない。
両手フリーにしなくてはならないので、背負うかバイクに積むか、だ。
ヘルメットホルダーはぐらつくし、ライダーやバイクの動作に影響して心証が悪そうだから、
やめたほうがいいと思う。

写真はこのユーザー車検のために僕が100円ショップで購入した物。 三文判とクリップボードとツーリングネット。3点で315円だ。


ここからは当日のレポートである。

早起きしたが特にする事がない。バイクの最後の点検をしようかなと思ったけれど、
いくらやってもライン上で突然不具合が出ないとは限らないし、キリがないのでやめた。
変に時間が余るので、いっそ検査場に行ってしまう事にする。
試験場に行く道順も地図を見ながらだから不安だし、渋滞に遭うかもしれない。
早目に着いたら施設の下見ができるってもんだ。
入念に暖機して、多摩自動車検査登録事務所に向かう。
ノーマルサイレンサーは、なんてジェントルな排気音なんだろう。重いけど。

車検の受付は8:45かららしいけど、7:30に着いてしまった。 門は開いているので入っていって、構内のオートバイ置き場にバイクを停める。 ちょっと早すぎたなぁ。 そう思いながらヘルメットをツーリングネットでタンデムシートに固定し、 まずは歩いてそれぞれの施設を見て回る。 すると、検査申請用紙一式の販売が8:30から始まる事がわかった。 書類の記入には自信がなく懸念事項だったので、 受付開始の8:45の前に記入時間が15分あるのはうれしい。

二輪ラインの前に行ってみると、シャッターが閉ざされているし、 両側を挟まれて窓もない施設だったので、偵察ができない。 しかし壁面に受験者への注意書きが掲示されているので全部読んだ。 すると、僕にいくつか不手際があるのがわかったので、 バイクに戻ってそれらを調べる事にする。

・スピードメーターの数値取り出しが、前輪で行われているか後輪で行われているか知らない
  見たところ、僕の 9R のフロントハブにはケーブルが来ていない。
  という事は後輪か。スプロケットカバーに電線が来ているけど、これがそうかどうかわからない。
  ニュートラル検出かもしれない。ま、後輪なのだろう。

・車台番号の場所がわからない
  最初にステアリングネックを探せばよかったんだけど、
  メーカー名プレートが側面にあった印象で、
  フレーム側面から探し始めてしまった。しばらく探して普通にネックに発見し、自分に呆れた。

検査場を出て、周辺を散策&下見する事にした。
ヘッドライトの光軸検査は難関だという情報があり、
もしかしたらテスター屋さんなるところで調整してもらわなきゃならないかもしれない。
そう思って、いざという時のためにテスター屋さんを探してみたのだが、
予備検査と書かれた店はどうにも小ぶりな店ばかりで、
確か何十メートル先での照射角度を計るはずの、
光軸検査設備を備えていそうな店は見当たらない。
困ったが、なんとなれば自分で調整して、100回も受けなおせば受かるだろうと、
楽観的に構える事にした。
自賠責の更新は行きつけのバイク屋でしておきたかったのだが
なかなか時間が取れず間に合わなかったので、今ここで入らないとならない。
せめて同じ「東京海上日動」にしたかったのだが、その看板を掲げた店が見当たらない。
仕方がないので「損保ジャパン」にしたが、
考えてみれば任意保険ならともかく、
交渉も発生しないような自賠責の取り扱い会社にこだわるのもバカみたいなのであった。

構内に戻って、整備記録簿の、タイヤの溝の残りと
ブレーキパッドの厚み記録欄を空けてあったのを思い出し、これを計って記入する。
さらにホーンの点検もしていなかったので、キーを挿して…
と思ったらキーがない!! げええ、スペアキーは財布に入ってるけどおいおい!
と思ったら、タンデムシートを外した際に、テールカウルの鍵穴に挿してそのまんまだった。
挿したまま十数分も留守にしてしまっていたのだ。
周りは業界関係者ばっかりなのに、迂闊な事だった。
ほっとしながらホーンを鳴らすと、何年かぶりにホーンは鳴った。よかった。

小さなアクシデントがあったからか、あっという間に8:30になったので申請書を買いに行く。 案内窓口に二輪の継続車検なんですがと言うと右の端の窓口に行かされて、 そこで「二輪の…」と言うと即、書類が出てきた。25円。 代書を頼むか聞かれて、予約の有無を確認された。 そして隣の窓口で重量税と検査料の印紙を買う、 排気量は伝えなくていいのかな、と思ったが何も言われず6400円。

検査場を出たところにある事務所で、納税の確認をしてもらってハンコをもらう。 公的施設なんだろうけど、国土交通省と地方自治の縄張りの違いとかで、 検査場内ではできない事になってしまっているんだろうか。 まったく一瞬で済む作業なのに。 まだ書類には何も記入していないけどいいのかな?と思ったが、大丈夫だった。

申請窓口に行って書類を作成・申請する。 記入見本を探したが、求める物が見当たらない。不安になったが、建物に入ってすぐの辺りは 住所等の変更の届けをする窓口が固められており、車検の窓口は奥のほうなのだった。 奥のほうに行くと果たして、車検のための書類記入例も掲示されていたのでほっとする。 書類作成はずいぶん簡単だった。車検証と合わせながらすらすら書ける。 昔、他地区からの転入による住所(ナンバー)変更をした時は、 書類が作れずに結局音を上げて代書屋に頼んだのだが、 車検の場合は記入見本を見ながら書けば楽勝だ。 こんなので1500円とか取られたら悶死する。 書き終わって、壁に掲示された「必要書類」の順に書類を重ねて窓口に提出すると、 ちょっとこわごわだった整備記録簿も難なくパス。 しかし、僕が書き込んだ「車体重量」は二輪の検査には不要だったようで、 赤鉛筆で打ち消し線を引かれたが、それだけで済んだ。 書類チェックの後、検査ラインに行くように指示される。

さていよいよ検査ラインだ。入場口は事務所の建物とは反対側にあるので、 ノーヘルでバイクに乗って移動する。 車は既にずらっと並んでいるが、バイクはまったく待っておらず、 ラインの中に、検査中の車両が1台いただけだった。 ラインのすぐ手前にバイクを停めて、どうしたらいいかオロオロしていると ツナギ姿の若い検査官が来てくれたので、初めてのユーザー車検の旨を伝える。

まず、ハンドルロックをかけるように言われるのでそうする。
ロック状態を確認した後は、長いハンマーで要所要所をコツコツとやられる。
これが締め付けの確認なのだろう。
次にヘッドライトのハイロー、ウインカーとストップランプの点灯チェックを行い、
ホーンを鳴らさせられて、ステアリングネックの車台番号をチェックされる。
車台番号の場所は聞かれなかった(恥)。
スムーズに行くかと思ったが、総走行距離をチェックされたところでミスがあった。
提出した書類とメーターの数値が合致しなかったのである。
百の位の6と9を間違えて書き込んでしまったのだ。
一つ間違いが見つかったら、書類全般の信用度が落ちるな、これはまずい!と思ったが、
書き込んだ距離数を赤鉛筆で修正されただけで、特にお咎めなしだった。
しかしどぎまぎしたので、以降はとても神妙な態度で臨む事になったのであった。

次はラインの中に進入する。
僕の 9R はガス検がある。アイドリングのまま、マフラーにプローブを入れられて計測。
わりと長い時間やっていたが、問題なし。
スピードメーター値の取り出しが前か後ろか聞かれ、
後ろと答えると、ではという事でフロントブレーキの効きから点検する事になった。
すごい勢いでローラーが回ってそこからフルブレーキするのかな、怖いなぁと思っていたが、
なんだかよくわからないが、もっとずっと穏やかな測定方法であった。
フロントが終わったら、バイクを少し進めてリアブレーキも点検する。
そしてスピードメーターの精度チェックだ。
リヤタイヤを所定の位置に合わせて、
メーターが40km/hを指したら左足で踏んでいたペダルを離すのだけれど、
一度目は失敗してしまった。
前輪はまったく関係ないだろうと思ってフロントブレーキを握りっ放しでやっていたのだが、
それでは計測できなかったのだ。
その場で穏やかにやり直しになって事なきを得たが、
どういう構造でそうなったのかはよくわからない。

さて、少し前進して次は光軸検査だ。
…と思っていたら、レントゲン装置ぐらいの、箱で構成されたような機械が
バイクのヘッドライトの前にあてがわれた。
長いスペースを使って測定するかと思ったのにそうではなかったのだ。
テスター屋さんも同じ機械でやるのだろうか…。
ハイビームにするように言われたのでそうして、
後は検査官の人が操作しているのを眺めているだけだ。
これはちょっとどきどきした。
9R は二灯なのだが、片方ずつ二つとも計って、両方とも「○」が出た。
おやおや、そんな事もあるんだ…というのが率直な気持ちで、
なんだか肩透かしを食らったような感じだが、うまくいったのはめでたい。

検査官の人に、これで終了ですと言われたので、礼を言ってラインの外に出る。
駐車スペースにバイクを一旦停めて、
四輪のラインの詰め所に行って書類を差し出し、合格のハンコをもらう。
時計を見ると、検査は10分ぐらいで済んだようだ。
再び建物内の申請窓口に行き、書類一式を提出する。
先ほどの、総走行距離についてちょっと問診があったけれど
聞かれた、といった感じであって、怒られるわけでもなんでもなかった。
そしてたちどころに新しい車検証と車検期限のステッカーが交付されて
これで終了、晴れて車検をパスというわけだ。本当にあっけない。

ナンバープレートのステッカーを、もらった新しい物に換えようと
古いほうを爪で少し剥がそうとしてみたが、
透明シールがかなり食いついていてきれいに剥がれなかったので、
自宅に戻ってからやる事にした(自宅で剥がし剤を使って剥がしたが、
青いシール本体も相当強力に引っ付いていたので、あの場でやらなくてよかった)。

ヘルメットを被り、検査場を後にする。9:25だ。
本当に朝飯前だなぁ。
「初めてのユーザー車検です」と言えば、各部署とも親切だったし。
もっとも、簡単なのは検査であって、それと整備とは別物だから、
整備にはそれ相応の時間と手間をかけなきゃならないわけだ。


車検に通った、ノーマル状態からの変更点(参考程度に自己責任で!)
・社外スクリーン
・ステンメッシュブレーキホース
・フロント埋め込みウインカー(かなり大きめ)
・フェンダーレスキット
・リアインナーフェンダー

この後やろうと思っている整備
・エンジンオイル交換
・ラジエタークーラント液交換
・エアクリーナーエレメント清掃
・ブレーキ揉み出し、エア抜き
・ワイヤー類給油

今回の車検費用は、26,665円+パーツ・消耗品代+タイヤ交換工賃だった。
前回のショップでの車検は、26,020円+パーツ・消耗品代+工賃50,925円だった。
タイヤは時期的な物として外すとすれば、
今回は5万円分ぐらいの工賃を、自分で整備する事で浮かせた事になる。
その自分でやった整備を労働とするなら、収支はまぁトントンだろうか。
ホビーとするなら、楽しくて金が浮いて、いい事尽くめだ。
車検の検査形態が変わらない限り、
僕は今後、自分の二輪をショップの車検に出す事はないだろう
(クルマは…ちょっと門外漢なので、残念だが無理そうだ)。
自己責任で整備する事が前提だから、
無責任に他人に勧めるのはどうかと思うが、
ユーザー車検でクルマ、バイクを維持していくのは、なかなかにいい趣味だと思う。