ガス欠

まずはあまりにもポピュラーなトラブル、ガス欠だ。
一人で何とかするしかなければ
ガソリン携行缶やガソリンの缶詰になるだろうが
通行量のある道路なら極端な話、お金は払いますと千円札でも見せれば
通りすがりの四輪だってガソリンを分けてくれるだろうし、
最悪、ガソリンスタンドまでタンクを抱えて乗せてもらえば
後はタクシーを呼べばいい。
そもそも距離計とリザーブコックという
二段構えの防止策が講じられているのだから、
ガス欠など、本来はないはずのトラブルなのだ
(トリップがなくてオドだけのバイクに乗る人には失礼、
と思ったらリザーブのないバイクもあるらしい、ますます失礼)。
それを危惧して荷物を嵩張らせるのは得策とは言えないだろう。

最低限、充分な長さのビニールチューブがあれば
そいつでガソリンを吸い上げる事ができるらしい。
サイフォンの原理という奴である。
エマージェンシーな事態なら
移し替える容器はコッフェルでもいいし、
漏斗は地図を破ってメガホンのように丸めればいいだろう。

と偉そうに書いたが、言うだけでは無責任なので、
自宅の庭先で、マイカーからガソリンを吸いだしてみる。
ガソリン提供車はごく一般的なコンパクトハッチバックのヴィッツだ。
実験時にヴィッツの燃料計は約1/4を指していた。


まず用意したビニールチューブは内径 6mm の物が 2m である。
こいつを無造作にヴィッツのガソリン給油口に突っ込んで、やおら吸ってみる。
スースーするばかりで抵抗がない。水面に達していないのだ。
一度チューブを抜いて、もう一度探りながらゆっくり突っ込む。
そして吸ってみるが、やはりだめだ。
ガソリンの揮発したガスだけが口の中で不味い。
何度か試したが、チューブは油面に届かなかった。
今どきの車のガソリンタンクは複雑な形をしているから、
柔らかいビニールチューブではかいくぐっていけないのだろう。
どこかの壁に突き当たったら、それ以上は弛むばかりで
前進していかないのだと思われる。
車のガソリン量が少なくて、油面が低いのも関係しているだろう。
しかし、トラブル時に実際に停まってくれた車に
ガソリンがあまり入っていないからといってチェンジというわけにもいかないし
好意で触らせてくれている給油口でガサゴソ手際の悪いところを見せるわけにもいかない。
礼を失しないためには、どうやら車を停めるのはあきらめなくてはならないようだ。
ならば相手がバイクならいいかというと、相手も満タンに近ければいいけれど、
そうでなければやはり相手にとっても少ない積載量のうちの貴重なガソリンなのだ。
こちらから停めて、譲ってくれというわけにはいくまい
(向こうから停まってくれれば勿論ありがたく頂戴する)。
他の方法を検討しなければなるまい。

となると、缶詰か携行缶となる。
まず携行缶だが、SIGG 等の燃料ボトルは僕としては避けたい。
では消防法に準じた物はどうかというと、ちょうどいい1リットルの物が存在しないのだ。
容量2リットルの物は5リットル並にでかいから荷物に加えたくなく、
500ミリリットルの物は、容量として頼りない。
僕の 9R はリッター20km は走るので、500ミリリットルなら10km 走り、
ガソリンスタンドまでたどり着けそうにも思えるが
ガス欠状態に注ぐ事を考えると、
4つのキャブに沁みわたってそれでハイおしまい、というイメージがある。
やはり1リットルは欲しいところだ。
となると選択肢が、500ミリ携行缶×2か、1リットルのガソリンの缶詰という事になる。
携行缶は、2つで3千円ぐらい。中に詰めるガソリン代はたかが知れている。
ガソリンの缶詰の方は(もちろん使い捨て容器で)800円だ。
携行缶のガソリンは知った銘柄で、フレッシュ。
缶詰は知らない銘柄で、3年間保存できるとはいえ、鮮度はわからない。
そして携行缶は嵩張り、缶詰はガソリンの体積その物に近い。

…缶詰を買う事にしよう。
ネット通販だとさらに割高なので、店舗で買いたい。
いくつかホームセンターを回っても見つけられなかったが
東急ハンズ渋谷店の防災グッズコーナーで、あっさり買う事ができた。
本当はハイオクが欲しかった(存在している)が、
非常用なのだからと割り切る事にする。


「ガソリン缶詰株式会社」製だ。
携行缶と違って密封性や耐熱性に信頼が置けそうなところがいい。

ガス欠対策に必要な物
ガソリンの缶詰 1リットル