f l a t d a y s
のんべんだらりを夢見つつ、魂に放浪癖のある一社会人が綴る、カウントダウン的日常の身辺雑記。
弥生三月
三月だ。三月は好きな季節だ。冬のきらきらした青い高い空のまま、日差しは日ごとにあたたかい。桃の節句、花材の木瓜、人の庭先の梅、などなど巷にきれいなピンクがちらほら、お店のショーケースの中の服やかばんや靴たちも、水色やベージュ、淡い黄緑や、シャーベットみたいなオレンジ色、とパステルに色づき、きらきらと小さなビーズが光る。ひらひらと薄い布地がそよぐ。四月になると新入生や新入社員で騒がしい世の中が、この三月は見なれた風景のまんまひかえめに春の色をふくらませていく。楽しいことがいっぱいありそうな、みんながやさしく見える季節。軽いコートをひっぱりだそう。新しいかばんを買おう。ポルトガル語を勉強しなくっちゃ。それから、本来の活動を、モチベーションもがっちりつかんだことだしぼちぼちと、はじめよう。プロ野球のオープン戦がはじまってる。Jリーグもはじまる。頭蓋骨の中の、小さななんとか板一枚のずれにまいっている場合ではない。三月。カスバ三月、ぼくは君の少年時代だ。2000.3.2
神の道化
そうです、ニジンスキー。その響きを耳にするだけで、なにかしら胸が、切なさで締めつけられ、落ち着かなくざわめきをはじめる単語。多少なりともバレエの好きな人なら、そんな思いになるのでは。これの映画がまたきれいで。風邪がうつるから、とハンカチごしにキスするシーン。息が止まるほどの、牧神の午後のシーン。けだるく官能的で密度の濃い大気の中、手も足も、流体のアルファベットを描いて、はああ。詩なんですわ。一編の。そこで、ニジンスキーを演じたのは、若き日のストイコビッチみたいな顔のたいそうきれいなジョルジュ・デ・ラ・ペーニャ。傲慢で繊細で、美しく、エキセントリック。(おお、やっぱピクシーにもあてはまるか。ピクシーは、サッカーやってなかったらバレエをやっててもよかったと思うよ)本日、「ニジンスキー」の芝居を見てきた。シアタードラマシティ。ニジンスキー役、市村正親。………。 どうすんの? と思いません?いや、ぶっちゃけた話。どうするつもり、って思いましたわ。キャスト聞いたとき。まさか猿之助みたいに市村正親をピアノ線でぶらさげるのか、跳び上がるたんびたんびに。(MATRIXはこれをやってる。たんびたんびに。)しかも、ディアギレフ(男の愛人)役が、岡田真澄。てこれ、ツーショット濃いすぎ。でも、東京バレエのプリンシパル首藤康之が、踊り部分はやる、と聞いて一安心。芝居は、既に狂ってからのニジンスキーが、サナトリウムでうつうつとしているところから始まる。これも一安心。頂上を極めて落ちていく話はつらいしね。現実と狂気のはざまで彼の見る、語る、幻想、思い出、情熱、魂、過去の亡霊たち。うまい作りだー。全編、ニジンスキーへのオマージュです。当たり前だけど。バレエの好きな人はたまりまへんで。もちろん、ニジンスキーがセンセーションを起こしたバレエは、春の祭典、牧神の午後、ばらの精、ペトルーシュカ、シェラザード、とどんどんきっちり出てくるんだけれど、首藤さんが見事に、美しく力強く四肢を存分に伸ばし、見せてくれるんだけれど、それではガラやんかまるで、というとこれが、もうちょっと、もうちょっと見せてえな、というとこでバレエシーンは切られる。それに首藤さんはずいぶん踊りを抑えてる。意識的に。バラの精なんか、たーんたらんたんたん!で、ぱぁーーーーーーん、と入ってこんかい、と思うんだけれども、入ってこないんだな、これが。熊川哲也ならどれだけ誇らしげに跳んでくるか。客は全部俺さまのものーーーーーーーー。俺さまを見ろーーーーーー。なのに。華をとってはいけない、芝居をこわしてはいけない、というのがあるんだろうなあ。それとも、足けがしてるかどっちか。そのバレエの入れ方が効果的で、牧神の午後なんか、もう、泣けますぜ、奥さん。おかしくなってるニジンスキーが、療法の一環で、何枚か絵を描いてる。画用紙に円をいくつもいくつも描いてる。ひとりの世界のときには流暢に自分の言葉でしゃべる彼が、医者に絵の説明をするときは、断片的になる。その単語のひとつひとつが、牧神、なんです。「ひくひく」、「はな」、「つの」、「ひづめ」…。泣かせるんです。踊りたいんだろう。神に愛されていたあの輝きを取り戻したいんだろう。どんな思いで、ニジンスキーの牧神の午後がイメージされていったのか、それが、言葉の断片で、ひとつずつ、パズルのピースがはまっていくように形作られて、けだるい音楽が流れ出、そこに、牧神 登場。見守るディアギレフの亡霊からスカーフを受け取り、あの踊り、です。勘弁してください。ばらの精は、彼の最期のシーンに、あの衣装で現れ、車椅子の彼の周りを舞い、ばらを一輪彼の前に落として、去っていく。そのばらに手を伸ばしつつ、息を引き取る、ニジンスキー。うまいでしょおおお。最期がばらの精っすよ。え。バレエの好きな人には、二度おいしい芝居です。バレエを見ないペガサスは、途中で意識をなくしてた個所があるとかぬかしてた。もったいないい。バレエ見たさで、つい、ストレートプレイの部分を「邪魔」と思ってしまいましたが。若い頃の、「芸術」を追うニジンスキーと、精神を患ってサナトリウムで後悔や自責のうちに暮らす中年ニジンスキーとの対話の中の、若いニジンスキーの、きっぱりとした「もし、生まれ変わっても、同じ人生を選ぶ」の言葉に、救われる。(「そしてあんたはまた邪魔するんだろ」と、良心の中年ニジンスキーへの問いかけが続くのだが)ちなみに、サナトリウムの病院長の役で、段田安則さんが出てて、ひさびさの舞台を見られて、これもうれしかった。この人の、舞台での声が好きなんです。以上。またゆっくり良いバレエの舞台を見たくなった。2000.3.5
注釈: ニジンスキーヴァーツラフ・ニジンスキー、1889年キエフ生まれ。天才バレエダンサー、革命的天才振付家。バレエ界の名プロデューサーにして男色家のディアギレフに見出され、彼の率いるバレエ・リュス(ロシア・バレエ団)で「空中に止まっている」といわれるほどの跳躍力、抜群のテクニック、豊かな表現力、演技力で、天才バレエダンサーの名をほしいままに。一方で、彼の創作した振付は、それまでのバレエの美意識を根底からくつがえし、一大センセーションをまきおこす、っていうか、客が怒り出してえらい騒ぎになって大失敗といわれる。も、実際には、現代バレエに圧倒的影響を残す。南米公演への航海中、追っかけ娘、ロモラにまんまとたぶらかされ(?)、結婚。ディアギレフの激怒をかい、バレエ団を解雇。以後、自分でバレエ団を作ってみたりもするが、いずれも興行的に失敗。徐々に、精神を病んでいく。天才に商売はできまへん。私がつり銭の計算ができないのもこのへんに原因が。ディアギレフの方も、きらめく大スターニジンスキーを失ってバレエ団は行き詰まり、結局、数年後ニジンスキーを呼び戻す。が、ニジンスキーの精神の崩壊は止まらず、入退院、転院を繰り返し、1950年、61歳で死去。
サンドバッグに浮んで消える…
月曜日からマウスピースをしている。なにせ仕事より優先させて病院へ行くということ自体めったにないし、しかもでかい病院で、すべてがものめずらしく、不謹慎なのだが、なんかうきうきするのよね。あほです。病院ですれちがった人に、「あんまり病院に通ってるって、うれしそうに人に言わんときや」といわれてびっくり。振りかえると、その人は、小学生くらいの子供に言い聞かせていたのだった。思わず、はい、と答えそうになった。しかーし。そこに待っていたのは、恐ろしい目をした(マスクで顔の下半分は見えない)ドクターの、身も凍るような治療であった。「白衣の悪魔OLを襲う」 きゃあああああ。なんせ、ひどいんだ。もう人の口に手袋つけた指をつっこんで、ぐわぐわっ!!て力ずくで思いっきりななめに押し下げるんだ。も、なんの予告もなしだ。いきなりだ。心の準備もあったもんじゃない。彼ったら思ったよりずっと強いんです。こらこら。青少年は読まないように。そのときに、こめかみの方で、コキッて音がした。続けてもいっかい、コキッ。そうすると、あーら不思議。口が開くではありませんか!でも、残念ですが、またすぐ口は閉じてきて、勝手にロックされてしまう。「ちょっと時間かかるから、ラクにしてて」と言って、医者は後ろで、マウスピースを削ったりいろいろ加工しはじめる。のはいいのだが、その間、作業しながらずっとそばの看護婦たちとむだ話をして、談笑している。なんやねん、なんやねん、ここに瀕死の白鳥がおるというのに君らはなんやねん。そんなんやから、アルコールと蒸留水まちがえるんちゃうんかい。と、いやみのひとつも言ってやりたいものだが、口が痛くて言えねえったらよ。そして、気の狂ったドクターは戻ってくると、あの意地悪い目でのぞきこんで、またしても力ずくで、ががっと。えええーーーーーーーーーーーんんんんん。あほー。おんなじ目にあわしたるー。ぼけー。はげーー。しかし、本当につらかったのは、治療が終わってからだった。なんせ、口が開かないのは元通りだが、今度は、マウスピースのせいで口をつむるのも痛い。もう、いつなんどきもこめかみがずっとずっと痛くて、眉間が痛くて、頭蓋骨が、きしんでおるわああああ。あのマッドドクターになんか埋めこまれたのではないかと思うほどだ。サイボーグは、体のあっちこっち痛いんだろうなあ。家に帰って、逃避するためにすぐ寝た。寝まくった。痛くて眠れないかと思ったが、驚くほど寝た。寝まくった。明日はどっちだ。2000.3.6のこと。
秋田豊な私
マウスピースをして以来、しゃべりにくい。明瞭にしゃべれない。そして、口が開かなかっただけの時より、ものが飛躍的(?!)に噛めない。おかゆ系のものをそれも少量食べているが、やはり咀嚼せずにものを食べていると、てきめんに胃に来る。やっとマウスピースに慣れてきたというのに、今度は胃。ここかと思えばまたまたあちら浮気な人ね、ったら、全く。マウスピースが原因の、人生が嫌になるような頭痛は2日めには格段に収まった。翌日の火曜日に、またあのマッドドクターのところへ行った。「頭が痛いのはしょうがないんでしょうか」と聞くと、「頭も、首も肩も、もうあっちこっちが痛くなってきますよ。」といわれる。心なしか、うれしそうに聞こえる。くそ、喜ばせてしまったか。今度はこっちも覚悟ができてたので、力ずくのぐわわ!も、前日ほどの衝撃はなかった。しかし、新手のぐわわわあわああわあ治療が、きつかった。これはもう、下あごをつかんで、そこから私の頭蓋骨をはずしてしまおうとでもするかのように、体重をかけていろんな方向に引っ張りまくるのだ。あの、犬がかみついて離さないタオルを、ひっぱりっこして遊んでやるような感じ。別に犬を見下してこんなことを言うわけではないが、私は犬じゃなーーーーーーーーーい!鬼畜ぅーーーーー。子供だったら泣いてるね。うえええええええん。が、そのぐわわわあわあわあ!で、ずいぶん口が開く。すぐ戻るので、開けたまま、金具を口の側面からつっこんで、固定。「はい、そのままで2分」と言って、どっか行ってしまう。おおーい、おっさーーーーん。ちょっとは相手したれよ。口あけっぱなしやん。ちょっとおお、おねえさーーーん。今地震が来たら私はどうなる。天井がくずれでもしたら、全部この口の中に入るんちゃうん。ちょっとお。ちなみに、マウスピースについて書くと、寝てるときだけ装着すればいい人もいるらしいが、私の場合は、四六時中ずっと着けていなければならない。寝るときも、食べるときも、お風呂のときも。はずしていいのは洗うときだけ。洗うときにはずすとしても、はずしてる間、ずっと、上下の顎の位置は覚えていてキープしつづけること。明日のために、その1。そのことも、火曜日になって確認できた。聞いてなかったちゅうねん。教えといたれっちゅうねん。熱いものを食べたり飲んだりしてもだいじょうぶ。2分たって戻ってきて、物言えぬ私に、悪魔は、「親知らず邪魔やなあ、抜こか」などとぬかすーーーーーー。思わず、口あけててしゃべらないのにあがあが、抵抗してしまう。奴の目がわらっとる、目が。聞こえたぞー、今、「ふふっ」て笑ったやろーーーー。「ふふっ」ってーー。覚えとれーーーーーーー、おっさんーーーーーーーー。満員電車でみかけたら、足ふみまくったる。ハードカバーの本の角で頭こづきまくったる。この人痴漢ですって言うたる。かばんの中から財布ぬいたる。ワイシャツに口紅つけたる、晴れ着に墨汁かけたる、超小型カメラでズボンのすそから足のぞいたるーーーー。でも、家に帰っても、口が、指2本分開く!これはいい兆候ではないのか!2000.3.7のこと。
平尾誠二来る
わが社の講演会に平尾誠二が来た。いい奴だ。関西人で、ネタの振り方、期待されてるおもしろさ、受けどころ、など、ちゃんとわかってる。ラグビーの話がほとんどだったが、サッカーにも通じるものがあり興味深かった。トルシエさんのこともほめてたよ。トルシエさんは、選手の体の「向き」で、その選手の良し悪しを判断してると言ってたよ。また折々に思い出したら、いろいろ書くとして、この日、一番印象に残った言葉を。パスとはなにか。「パスとは、自分より有利な味方に、ボールを渡すこと」。彼は、伏見工業高の時から、ずっとラグビーをやってきたが、このことに気付いたのは、社会人になってからだという。うまいパスの出し方や、蹴り方、技術のことはさんざん練習してきた、毎日毎日練習してきた。が、一番最初に、一言、これを聞いていたら、練習の質も、なにもかも、すべてちがっていただろう。
なるほど。これは、我が日本代表のサッカーにも言えること。「パスとは、自分より有利な味方に、ボールを渡すこと」。なにをむずかしいことやってんだ。そのへんが、中田はわかってる。2000.3.7だったな、これも。
近況〜え〜きんきょ。
とはいうものの、日々、もうマウスピースと顎の不具合のことに尽きる。そんなことを逐一書いてると、また読んだ人が心配してくれるだけなので、まとめて一本化。心配しないでくれたまえ、それは私の本意ではない。こういうことが珍しいもんだから、言葉として記録することに夢中になっているだけなんだから。半分、うきうきしてるのだから。だからといって、全く心配しないのもどうかと思うよ。(どっちなんだ)まあいいや。みんなマイペースでやりなされ。私も自分のペースを崩されない限り、何も言わない。ところで、日々、である。難儀ですわ。まずですね、前からの約束の会食が、この時期、何件かはいってて、その日に照準合わせて体調整えてたのですが、調子にのって、ろくに咀嚼もできないくせに、小さくすれば食べれる、とがんばってたら、胃にストレートに来て、一晩中、七転八倒。痛ぇったら、痛ぇんだよおお。朝まで痛くて痛くて転げまわって眠れず、朝の5時半になって、ようやく吐くことができて楽になる。食べたもの半分は吐いた。もったいないーー。教訓、げろは吐けるうちに吐け。最初、気持ち悪くなったときにやりすごすと、後になって吐きたくても出てこなくて、却って苦しむことになる。おかげですっきり。しかし、その朝、7時すぎに起きあがろうとしたら、ずでんとしりもち。しかも、自分が転倒したという感覚がない。再び立ちあがろうとするが、やはり転倒。なんだこれ。なんということか、生まれたての小鹿ちゃんのように足が立たない。自分ではペガサスだと思うんだけど、本がいうとおり、やっぱりこじかだったのか。この状態でテニスをやったらどうなるのだろう、という好奇心はあったものの、行くまでの道に不安があり、さすがにその日のテニスは断念。まあ、それもこれも、短期決戦で治すためだわ、マウスピースももしかしたら、次の治療日にはもうしなくていいよ、って言ってもらえるかも。と、思って行った次の治療日。こじかちゃん「これって、いつまでしとくんですか。」マッドネス「(後ろを向いたまま)3ヶ月。」…がーーーーーーーーーーーーーーーーーーんんんんんん。さ、さ、3ヶ月ぅぅぅぅ???!! 私、産むわ。短期決戦やと思うから、耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍んできたんとちゃうんかい。え。おかゆで辛抱してきたんとちゃうんかい。え。ぐれるぞ。3ヶ月て、5月や、5月。ひええええええええ。でも、隣のブースでは、さっきまで待合室ではしゃいでた1歳くらいの女の子が泣き叫んでて、別の先生の「軽い手術ですから」という声が聞こえてる。かわいそうにかわいそうに。私なんて、ぜんぜん大したことない。大したことない。そんなこんなのショックな治療日の翌日、がまんにがまんしてた口内炎が、いよいよがまんできなくなった。マウスピースのおかげで、口の中のあちこちを噛んでしまい、同じ個所も何度も噛んでしまい、それが、つながって、巨大な口内炎化。これが、つらいっすわ。ほんま。ただでさえ食べにくいのに、もう、口の入り口のすぐ脇にでかいのがいすわってて、食べたものが辛くなくても熱くなくても、とうふでも冷めたお茶でも、とにかく触れる。ううう。しゃべるときにも、マウスピースがどうしても触れて、そのたびに痛い。食べては涙、しゃべっては涙、お茶のんじゃ涙、うがいしちゃ涙。仏は阿弥陀。たまらず、病院に薬くれないかと電話してみる。そしたら診察するから来てくれ、とのこと。今日は主治医のマッドネスがいない日だし、他の先生が見てくれるのかしら、と思って行ってみると、じゃじゃーーーーーーん、そこに、立ちはだかったのはまたしても、ドクターマッドネス! だからといって、踵返して帰るわけにもいかず。実は、非番なのにわざわざ来てくれたらしくて。申し訳なくて申し訳なくて。「昨日、言えばよかったんですが、これくらいがまんしなきゃいけないかと思って」とか「でも、もう、何するにも涙が出るほど痛いんで」とかひたすら低姿勢で言ってみたが、奴はとにかく聞いちゃあいねえ。ノーリアクション。こんなんで騒ぎやがって、ってきっと思ってるぞ、きっと怒ってるぞ。しかーし。口内を見て「ああ、こらでかいわ、こら痛いわ。」と言って、待望の薬をぬりぬりしてくれる。まるでお医者さんのよう。君をこれから、先生と呼ぼう。すぐには治らないけど、気持ち的にちょっと安心。たかが口内炎なんだけどね。こんなもので、集中力のすべてが奪われる。この1、2週間、はっきり言って、仕事が手についてない。一応、目の前にあるものを片付けてはいるが、いつも、終業時間まであと何時間あと何時間って時間ばっか気にして、段取りも考えてないし、だいじょうぶなのか。仕事だけじゃなく、他のほとんどのことも大気圏外の上の空だ。こんなに、仕事のことを大事に思わなくなるなんて。いいことかな。
日本vs中国
もともとは、半休とって神戸に行くつもりだったのだが。ここんとこ通院のために勝手ばかりしてるので言いづらく、終業(5:15)と同時にダッシュすることにする。指定席だしね。1時間半ちょいでいけるとふんでいたが、もう、三宮から地下鉄の切符売り場が大混雑。ホームに降りるまで大混雑。電車の中が大混雑。平日の夜に神戸ユニバでAマッチは無理。スタジアムの自分の席に着いた頃には、すっかり君が代がはじまってた。おかげでひさびさのゴージャスなめんつがそろった日本代表なのに始まる前の雰囲気を味わえなくて、いまいち盛り上がらないぞ。ツレのNも3分後くらいに来る。メインスタンドの結構前の方で、ピッチも近く、アップしてる奥やのぼりやテル、カズ、中沢なんかが近くに見えて、ありがたくも気が散る。試合は、個々にまあまあおもしろかった。いろんなパターンがあって。でも、特に盛り上がりも失望もなかった。なんだか周りのテンションが異常に高くて逆にそれがおかしくて。前の女の子たちはとにかく、中田がボールもつと「きゃああああ!」、日本が攻めこまれると恐怖の「きゃあああああ!」、チャンスには期待の「きゃあああああ!」。かわいい人たちだったが、いちいち瞬間的に立ちあがるのが玉に傷。また後ろの席の青年は、小野くんがからむたびに叫ぶでもなく自身を鼓舞するでもなく、ただ「しんちゃん…」とうれしそうにやさしくつぶやいていた。振り返りたかったができなかった。日本のDF陣は安定してて、ピンチになっても点を取られる気はしなかった。望月はよく働いてた。軽量級だけど、ひざがやわらかいのか、重心が低いんだよね。ヒデはもうさすが。よく通るな、そんなパス。硬軟おりまぜ。見せてくれる。疲れてるだろうによく動いてるし。実は、試合はあとでビデオ見るからと、あんまり見てなかった。何を見てたかというと、ラモちゃん、というのはうそで、そこはやはり、しんちゃんこと、悩める大器、小野くん。日本が攻めまくってる時も、押しこまれてる時も、ひたすら小野くんを見てた。久しくボールもらってないぞ、とか、城くんと重なってるぞ、とか。まだ迷ってるね〜、悩んでるね〜。悩みは深いね〜。受け手のいないところにパスを出してしまった時も、誰かに、そこに出ろよ、と指示するでもなく、自分を責めてた小野くん。でもね、やってくしかないし。やってく中で合ってくもんだと思うし。元気でやってればそのうち道は開けるって。男の子は元気が一番。徐々に、けがする前の感覚に戻っていくと思うし。いや、戻っていったりしないよ。さらに先へ進化していくんだって。戻っていくものなんてなにひとつない。時間は常に流れて、君は常に進化していく。伸二、待ってるぞ。ちなみに、咀嚼あんど口内炎のため口の開閉が不自由な私は、ハーフタイムの間中、買ってきた小さなそうざいパックをもぐもぐ食べていたが、それでも、後半開始までにまにあわず、結局、試合の最初から最後まで席を一度も立つことがなかった。ゴンのオフサイドゴール以外は。2000.3.15のことを書いてる3.16
ガンバvsヴィッセル
ういっす。元気っす。季節から生命力をもらってめっちゃめちゃ元気!ありがとう、3月! 君の少年時代だ!ひっさびさのJリーグコモンディビジョンを見に行ってきたぞ。空は青く、ぽかぽか陽気。朝は3週間ぶりのテニスもしてきて、快調に空腹で、めっちゃサッカー日和! 万博競技場 コモンディビジョン開幕戦!(注:俗に言うJ1のことを、コモンディビジョンと命名。ちなみに我がレッズが属するJ2は、「プレミアム・ディビジョン」。めったに見れないという意味ではなく。…ちょっとあるか。)<開幕を祝い空に飛ばされた風船>ガンバvsヴィッセル、16時〜。結構お客さんも入ってる。ガンバでのコウタを見ておきたくて行ったのだが、スタメンじゃなかった。試合はだるかった。さすが、コモンディビジョン。ヴィッセルの右ウイングの、誰だ、7番。長田だっけ。再三チャンスを作って、20番 薮田といいコンビで攻めの形を作ってた。ガンバの新加入、10番ビタウ。いろんなことをしようとしてるのがわかったし、なんていうか、大人だ。もっと合ってきたらもっと楽しくなりそう。試合は、後半残り15分くらいから俄然リズムがよくなる。コウタです。お待たせしました、後援会の皆様。やっぱりコウタ。なかなかボール回ってこなくて、中盤まで下がって働いてたけど、コウタがヘッド決めてから、急にガンバにスピードが出てきた。が、それも延長に入るとまたまた膠着。なにがうっとおしいって、後ろの座席の男二人組。試合中ずーーーーーっとつまんねえ話をでかい声でべちゃくちゃべちゃくちゃしゃべりやがって。冗談はダサダサの上、しつこく何度も何度もリフレイン。笑い声は耳障り。選手の名前はずっとまちがってる。双眼鏡で交互にベンチ見てはしゃいで、試合と関係ないことで盛り上がって、稲本と宮本をしょっちゅういい間違えて。試合前のアップの時なんか、審判のモットナムさんを、アンドラジーニャと間違えて「でかいな」とか言ってたぞ。私は、ひとりでずっとつっこんでた。「中払は福岡や」(なぜかずっと長谷部のことを「中払!」と呼んでた)「倒れてるのはビタウやビタウ」(金髪やん、なんでダンブリーやねん全然ちゃうやん、君らさっきまでダンブリーほめてたやん)「スタメンにコウタは入ってない!」(前半の終了間際に、まだ、コウタ出てるやんなあ、と言ってた。なんでこんだけ見ててわからんねん)「なんで早野を知らんねん!」(早野ってだれ、って…)夜、スポーツニュースで、市原に移籍の、小倉のゴールを見る。胸が熱くなる。小倉、君を見てるといつも胸が熱くなるよ。お帰り。代表のFWはまだ手薄。だいじょうぶ、まだ間に合う。小倉。2000.3.18
スリーピー・ホロウ
見てきた見てきた、やっと見てきた。もう上映前から待ちきれなくて、映画館の中で暴れそうだった。映画のシンボル的に使われてる「死人の木」が、むっちゃバートン。あの形。あの不自然な曲がりくねり具合。あの下にジャック・スケリントン(ナイトメアのどくろ顔の主役)がいてもおかしくない。全編の凝りよう。美しさ。光。衣装。風景。森。クレジットタイトルの文字が、ちゃんと画面の川面に映ってたり。そして、役者の選びよう。(クリストファー・リーが出てます。自分の趣味で役者選んでます。ヒロインも多分めちゃ彼好みです。そいで、私の記憶が正しければ、彼の奥さんも、イカボッドの母親役で出てます。)クリストファー・ウォーケンがおいしい。セリフは、「うぉーー」だけ。顔のないときも、あれはクリストファー・ウォーケンなのか?数日前に夜中にやってた「ディアハンター」をひさびさに見ただけに。キワモノ俳優にならないように注意してくれたまえ。最後に、彼の「THANK YOU」ってセリフがほしかったが、そこまでコメディにする気はなかったか。前にも書いたが、私は怖いけどおもろい、っていうのがもう最高に好きで、今回のはじまりも、ポランスキーさんの「吸血鬼」ぽくって相当期待した。「ガバリン」ってこれも大好きな映画があって、こわい系なのに主人公がおまぬけでその立ち向かい方が笑わせる。前評判を聞いてそういう映画かな、と思ってた。が、案外、今回のバートンは大人で決めてて、ストーリー性がうんぬんといわれることにいい加減飽き飽きしてたのか、きちんとストーリーを押さえて作ってあって、その分フリークな感じが薄まってる。凝るのは美術的な部分に集約させ、ギャグも、壊れたい壊したいはちゃめちゃさもぐっと我慢してる。よしよし、よく辛抱したね。こういうプロフェッショナルにもなれるんだね。好きなのは、やっぱジョニー・デップのわけのわからない小道具類。わけのわからない書きこみがいっぱいの彼のノート。そして、なにより私を狂喜させてくれたのは、映画本編には関係ないけど、パンフレットにあった、ジョニー・デップのインタビュー記事。ロディ・マクドウォールと個人的に親しくて、彼の演技も参考にしたとかかんとか。(お亡くなりになってたのは知らなかった)ロディさんというのは、子供の頃から私の好きな役者5本の指に常時ランクインされてる、男前の、ふざけた立派な人です。「猿の惑星」のコーネリアスといえば、わかってもらるでしょうか。顔はわからんか。なにが気に入ったんだか彼は、サルワク全シリーズにひとり出続けてます。そのへんキワモノですが、もともとは、むっちゃ男前で、「わが谷は緑なりき」の端正な少年が彼です。また、クレオパトラになびかなかったオクタビアヌスを私が好きなのも、彼が「クレオパトラ」でその役をやってたからです。やっぱ、ジョニー・デップは趣味がいいわ。その上、最新作にポランスキーさんの作品がひかえてるらしい。もう、ジョニー・デップには運命的なものを感じるね。うんうん。苦しゅうない。運命にはさからわれへん。てわけで、バートン、大人に一歩近づく、の巻でした。次回、その分、はじけることを期待して。ストレス貯めるのはよくないよ。2000.3.20
ノイズロードショーが今日までというからあわてて会社帰りに行ってきた。いいかい、私は、「スリーキングス」の試写会と秤にかけて君を選んだんだよ。どははは。なーんじゃこら。「ローズマリーの赤ちゃん」を凡人が作るとこうなります、ということか。なーんだろうねえ。愛がないね。女優への愛は感じられたけど、映像に対する愛がない。なぜ、ここで女優のくるぶしばっか撮ってんだろう、とか、ここまでベリーショートにするのはやっぱミア・ファロー意識してるのか、きれいなうなじやなあ、とかはある。もおおおおおおおおおっとおもしろくできるでしょうがああ。こういう映画は、小道具とか細部とかが命だと思うのです。ラジオ、いいやんか。なんでもっとラジオ使えへんのん。そこまで来てるのに。そいで、もうちょっと賢い、論理的な、理科系の部分もないと、いくらなんでもそれで客は納得するのか?のかのか?? あまあまでんがな。別にエイリアンでもジョニー・デップが旦那ならいいじゃん、とさえ思える。ぜいたく言うなって。映画本編よりも収穫は、近日公開予告。あら、またえぐえぐのどろどろのバイオ粘液バーチャル系きわきわホラーのおもしろそうなのが来る、と思ったら、クローネンバーグ! ひゅーひゅー。やっとるなあ。元気やなあ。よっしゃあ、と思わず、気合はいってしまった。あと、「太陽がいっぱい」のリメイクも出来てたの、知らなかった。開演時間を待ちの間、ロビーのポスターで「リプリー」というタイトルを見て、もしや、タレンテッド ミスター リプリーかと思ったらば、ぴんぽん。映画もおもしろいけど、原作のパトリシア・ハイスミスのリプリーシリーズが私は大好きで、映画はラストつかまっちゃうけど、原作は、もう作者がリプリーらぶらぶ完全加護で(レスタト完全加護のアン・ライスのように)次々軽々完全犯罪をやってのける。シリーズ全般、リプリーの軽い感じがそのまま変なユーモアみたいに漂ってて、映画のあの、まーずーしさにーまけたー、っていう暗さがない。今度のリメイク版は、どっちに近いんだろう。2000.3.24
金じゃ金じゃ、世の中金じゃ
自分の知ってる人間に、保険金をかけ、殺し、金をせしめる。次々と。あんな奴は生きててもしょうがない。何の役にも立ってるようにも見えないし、死んだところで泣く人間もいない。どうせ寿命が来れば人間は死ぬんだ。その命に金を賭け、多少死を早めることに手を貸し、その金を俺が活かして何が悪い。ただ同然のものが億の値打ちになるなんて奴とて名誉なことじゃないか。あんな名も無い、ほうっておけばクズ同然の奴。これはビジネス。無から有を、つまり金を作り出す。なんでそんなに金がほしいかって。当たり前だろ。人間と畜生の差は、金という価値観があるかないか。人間の作る社会は金でできてる。金を持ってるものが勝者。金の無いものは負け犬。それがルール。金があれば、人は言うことを聞く、ついてくる、頭を下げる、笑い顔も見せる、人を人として扱う。行きたいところへ行ける、ほしいものが手に入る。女たちもそうだ。金がないみじめさを俺は知ってる。着るものもなく、いつも空腹で、人からはえらそうに言われ、あごで使われ、見下され、足蹴にされ、大事にされない。野良犬のように。さびしい、寒い、ひもじい、誰もいない、誰もふりむかない。母親がどなる。金がないから。でも、今の俺はちがう。ここまではいあがってきた。もう二度とあんな思いはしない。俺は勝者になる。まだまだだ、まだ足りない、もっともっと、まだ満たされない。まだまだ積めこめる。もっと積めこめ、もっと金を。もっともっと。この心いっぱいに。大事にされなかった顧みられなかったこの大きな空洞いっぱいに。どうやっても何をやっても、潤うということがない。満たされたという安心がない。なにがこんなに不安にさせるのだ。もっともっとだ。もっとだ。もっと。あの服を買おう。あの指輪を買おう。次は時計。次は車。驚いた奴らの顔を見たか。どうだ、どこへ行ってもVIP扱いじゃないか。勝者だから。金があれば。
誰から生まれたのだ。金の亡者になってしまった元人間。誇りも自尊心も、自身の中にはないのか。誰が言わなくても、何が立証されなくても、自分のやったことは自分がわかってる。それで、してやったり、と思うのも、償っても償いきれない、と思うのも、大した違いはない。やったことに変わりはない。それを知ってる自分がいる。どこまでも自分についてくる。自分に最後までつきあうのは自分。だましおおせないのも自分。耐え切れるのか。耐え切ったとして、だましおおせたとして、心にはなお、風が吹くばかりだ。かわいそうな人間。小さな頃、顧みられたのか、愛されたのか。やさしい言葉ややさしい手に。その虚勢を見るたびに、救われない、愛を信じられない、彼の孤独が見える。すぐそこにいつでも道はあったのに。2000.3.27
vsニュージーランドざんす
ひさびさにFWらしい高原。そうそう、そうやっていつもゴールをねらうのがFWだよね。昔は、ごっつあんゴールの多い選手を好きじゃなかったけど、今はちがう。ポジションも判断もいいってことだし。ごめんね、武田、昔は。どこが相手でもいろいろやってみせてくれる俊輔。どこが相手でもがんがんやってくれる稲本。市川が思うように上がれなくってちょっとさびしい。市川、なんかでかくなったね。ちょっとおっさんぽくなったね。ごめんごめん。あとはー、えっとー、最近、ちょっと試合がつまんないと正直にすぐ寝てしまう。眠くなる、んじゃなく、すぐ寝てしまう。なもんで、後半、北島が入ったあたりから熟睡。すんません。目のさめるような試合がみたい。2000.3.29
さようならエロエロ大王
またも送別会。エロエロ大王が東京へ転勤。昨日の今日なのに、人望のなせるわざか全員送別会に出席。今までの数々のセクハラ発言あんど行動。いつも酔いつぶされて、二次会のカラオケでは寝てるんだけど、持ち歌がかかると、目をつぶったままなぜか服を脱ぎ始め目をつぶったままマイクをもって歌いまくり跳ねまくり女子にせまりまくり顰蹙かいまくり、部内旅行の時にはパンツいっちょにバラをさしてて他の客にちくられ注意され、大阪で大目に見てもらえるもんだから調子に乗って、東京本社での飲み会の時にもぬいじゃってとてもえらい人の頭にちょんまげを乗せて、本気でお叱りを受けた、お人よしの恐妻家の野球小僧のエロエロ大王。みんな君が大好きだったよ。汚い机の周辺も含めてね。(机周りの汚い男に悪い奴はいない、と、私は思う)むこうでは、ちょっとみんなついてきてくれないかもしれないけど、君の良さは必ずわかってもらえるよ。ただ、東京本社のカラーとして下ネタはマジでやばそうだから控えたほうがいいよ。さびしくなったら大阪でまたはじけてくれ。健闘を祈る。2000.3.31
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