黒柳徹子さん著『チャックより愛をこめて』

★「綴方・ニューヨーク」より、清須邦義さん言及箇所の抜粋です ★

 

X月X日 気分のいい天気 暑くもなし

 今日は前に、ニューオーリンズで買った「誰でも、グラマーになれるシャツ*」を着てみました。木綿のローズ色の胸のとこだけ、写真で写した「いいもの」がついているんです。
 でも、これは、やっぱり外に着て行くのは、いくらTシャツでも恥ずかしいように、私は思います。でも、家の中なら、かまわないから、着て、NHKの「ステージ101」でギターと作曲をやってて、いま、ニューヨーク中でやっているいい音楽を、はじから聞いて歩いている清須邦義(きよすくによし)君に来て貰ってこの写真を撮ってもらったの。
 そいで、やっぱり「ステージ101」で踊ってて、いまこっちの凄いダンスカンパニーに入って活躍してる茶屋正純(ちゃやまさずみ)君と、岡みちひこ君も招んで見せて、ついでに、「ステージ101」の脚本をずーっと書いてらした井上頌一さんも仕事で来てらして、清須くんのアパートに同居してらっしゃるからお招びして、「ステージ101」の司会をしてた私が、しゃぶしゃぶを作って、みんなでおいしくたべながら、昨日、日本に帰ってしまった「ステージ101」の演出をしてらした渡壁輝**(あきら)さんの噂などしたのです。
 地球は本当に、せまくなりました。


*  清須さん撮影の、黒柳さんの写真2点が掲載されています
** 文中では、火へんに軍となっています。

 

 

X月X日 別れが近づく日

 私が古道具屋で買った家具は、全部、この前にも書いたNHKテレビジョンの「ステージ101」で私と一緒に出ていたダンサーの茶屋さんと岡さんが買ってくれることになり、おまけにやっぱり「ステージ101」でギターを弾いていた清須くんと三人で、日本に送る荷物などの荷造りをしてくれました。
 その上、この一年の間に増えたもので、日本に持って帰れないもの(おなべやチリトリや残った台所の洗剤や冷蔵庫の中のもの=シオカラ・梅干し・納豆・野菜など)を全部整理してくれたので、私はノイローゼにもならないで、笑ってニューヨークにさよならがいえるわけです。こんなうれしいことってないと思うのです。
 ありがとう、お友だち!!

 

 

1973. 9. 30 文芸春秋刊 1979. 2. 25 文春文庫刊