セム人の神々


バビロニアの人々は、偉大な先人であるシュメール人の文化を受け継ぎ、また神々も名前を変えて受け継いだ。
ここではセム人の信仰した主な神々の説明を・・・



☆アヌ

天神。天空を主宰する。妻はアントゥ。
シュメール語形はアン。妻は地の女神キ。


☆エンリル

アヌの子。ニップール市の主神。風と嵐の神。中空を治める。「英雄」の添名を持つ。
妻はムリッス。


☆シン

エンリルの子。月の神。語源はシュメール語「エン・ズ(王冠の主)」。これがひっくり返ってズ・エン>ス・エン>シン(正確にはスィンね)となまったものとされる。彼は王権の付与者とされていた。この時代、月は太陽よりも上位にあった。象徴は三日月。

シュメール語形ナンナ。


☆シャマシュ

エンリルの子。太陽神。生命保持と正義の神。別名バッバル。バッバルの語源は輝かしい光輝の形容「バル・バル」。

シュメール語形はウトゥ。戦いの神だった。


☆エア

アヌの子。大地と水の神、また知恵の神。「ニンシク(意味不明)」の添名を持つ。
アヌ(天空)、エンリル(中空)、エア(大地)の三神が世界の柱となる。

シュメール語形はエンキ。彼と山上の貴婦人ニンフルサグの結婚により植物が生まれた。この頃はまだ水の神でしかなかったが、後に地母神キの役割を奪い、大地の神とされた。


☆アルル

ベーレト・イリー(神々の女君)と呼ばれる創造の女神。人間を創造した。


☆イシュタル(イシュハラ)

アヌ、またはシンの娘。愛の女神、また金星の神。時代が下り、アッシリア時代になると戦闘神の一面も持つようになり、祭儀ではライオンが捧げられた。以後ライオンは彼女のシンボルとなる。フェニキアのアスタルテ、エジプトのハトホル(あるいはセクメト)、ギリシアのアプロディーテー、ローマのウェヌスに相当。

シュメール語形イナンナ。


☆エレシュキガル

イシュタルの姉。冥界の女王。冥界の書記、ベーレト・ツェーリ女神を従える。


☆タンムーズ

植物神。彼の死と復活の神話は、のちにフェニキアを経てギリシアで「アドニス神話」として発展する。イスラエルにも、彼の死を悼む祭礼が伝わっていた(エゼキエル書8:14)。
シュメール語形ドゥムジ。


☆アダド

アヌの子。天候神。嵐と雷の神。「運河監督官」の称号がある。象徴は二又の電光。
アッシリア時代にはアッシュールと名を変え、アッシュール市の主神、またアッシリアの国家神となった。カナアン地方ではバアル・ハダドと呼ばれた。


☆ニヌルタ

豊穣の神であると同時に戦いの神。「英雄」の添名がある。


☆ネルガル

もとは牧畜・農耕神、のちに冥界と疫病の神。14の病魔を従える。武器は疫病と電光。火星の神。
クタ市が信仰の中心で、旧約聖書・列王記下17:30に「クタの人々はネルガルを造り」とみえる。詩編91:6では、「真昼に襲う病魔」と形容される。


☆ナムタル

冥界神。また疫病の神。
詩編91:6では、「暗黒の中を歩く疫病」と形容される。


☆エルラガル

冥界神。


☆エラ

疫病の神。


☆マミートゥム

ネルガルの配偶神。運命を司る。


☆ニサバ

「麦」の意味。穀物の女神。頭から麦穂が伸びた図像であらわされる。


☆スムカン

動物・家畜の神。
シュメール語形シャカン。


☆グラ

イシン市の女神で、医術・治癒を司る神として崇められた。


☆シドゥリ

「酌婦」の添え名がある女神。イシュタルと同一視されたり、「知恵の女神」、「生命の守護者」と呼ばれたりする。


☆ナブー

「輝く者」の意。書記神で、知恵と文字の神。水星神。ギリシアのヘルメス、ローマのメルクリウス、エジプトのトートに対応。別名ネボ。バビロン近郊のボルシッパで崇拝された。彼の象徴は、文字を司るだけあって、楔。有名なネブカドネザル王の名の意味は、「ネボよ、我が国境を守り給え」。


☆マルドゥーク

バビロンの主神。エアの長子、ナブーの父。木星の神。
バビロニアではエンリルの性格を受け継ぎ、ハンムラビ王以降ベール(「主」の意)・マルドゥークとして絶大な崇拝を受ける。象徴は槍の穂先。
対偶神はベールティア(女主人。ベールの女性形)・サルパニト。金星と同一視された。


☆カイマーヌ

土星の神。


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