Check it ! Winsbacher Knabenchor


私は、とりあえずはメンデルスゾーンの声楽曲を見つけたら一も二もなく買うことにしているのだが、あるとき新しい《エリヤ》を見つけたので、手に取ってみた。レーベルはバイヤー・レコーズ。名前からしてドイツのレーベルだろう。オケはミュンヘン放送管、指揮はカール・フリードリヒ・ベリンガー。知らん。ソリストも、エリヤ役のミヒャエル・フォッレ以外は聞いたことがない。合唱には、「ヴィンズバッハー・クナーベンコール」とある。「テルツァー・クナーベンコール」が「テルツ児童合唱団」と訳されているので、これは「ヴィンズバッハ児童合唱団」となるだろうか。
「少年合唱か・・・この大曲を歌いこなせるんか?」
パッケージの絵も簡素で、いかにも軽そうな印象だったが、信条に従い買った。

帰って、聴いてみる。
ミヒャエル・フォッレのエリヤはまずまずいい(一番はテオ・アーダムだけどな)。エリヤの序唱のあと、序曲が鳴り響き、そしてそれが絶頂に達し冒頭合唱「助けたまえ、主よ!」へ。・・・うん、力不足だ。ここらへんの、心が張り裂けるような絶叫はさすがに子供には無理か。だが、少年合唱にありがちなふわふわした軽さはなく、芯が通っていて美しい。アリアが続き、激しいコーラス「されど主は見そなわしたまわず」に。激しさには欠けるが、子音がきちんと立っていて歯切れがいい。よく統制されている。次の二重カルテット「彼はその御使いたちに命じて」は、これは美しかった。ソプラノの高音での伸びがとてもきれい。「主を畏れる者は幸いなり」もよし。これはライヴ録音だが、喉も温まってきたようだ。焦りに満ちたバアルの祭司たちの合唱も劇的に、歯切れよく歌いきる。そしてエリヤとバアルの祭司の対決のクライマックス、天から火が降るシーンでは、アレグロ・コン・フォーコの合唱を一糸乱れぬアンサンブルで歌ってみせた。声量には欠けるが、その分子音をビシッと立てて毅然としている。第1部ラストの「神に感謝あれ」は・・・感動した。もうほとんどパーフェクト。歌い終わった後、間髪入れず拍手と(まだ第1部が終わっただけなのに)ブラヴォーが鳴り響くが、それも当然の、凄まじく素晴らしいコーラスだった。

第2部もおおむねよし。三重唱「山に向かって目を上げよ」から合唱「見よ、イスラエルを牧するものは」の流れは美しいことこの上なし。主が顕現する場面や、エリヤが火の戦車に乗って昇天する場面ではさすがに力強さに不足。最後の2曲の合唱のテンポ設定はもっと速いほうが良かった、と私は思う。特に終曲は最後にリタルダントかけすぎ。クルト・マズア盤くらいのテンポならよかったのに。ちょっとだれた感じがしたのが残念。それともばてたか。

しかし、この合唱団、名前はそれまで聞いた事がなかったが、いい合唱団だ。最近の英国の聖歌隊のようなヘタレたところがなく、芯の通った硬派なコーラスを聴かせてくれる。他にはCDを出してないか、と思ったら、こういうのが出ていた。ともにドイツのロンドー(RONDEAU)・レーベルから。

*ガルス、J.バッハ、J.L.バッハ、メンデルスゾーン、ブラームス、ブルックナー、マウエルスベルガー:モテット集
*J.S.バッハ:モテット集、マニフィカト ニ長調

前者、ア・カペラの曲でのアンサンブル&ハーモニーが絶妙。指揮者のベリンガーは結構テンポなどいじっているが、それにぴったりついていっている。これは1987年と1996年の録音で、年代の開きは9年。当然メンツは入れ替わっているはずだが、それを感じさせない。高い水準を保っているということだ。後者のバッハのモテットも上手い。マニフィカトはさすがにガーディナーやヘレヴェッヘらの名演に比べれば一歩譲る。

ロンドー・レーベルからさらに発売。

*J.S.バッハ:カンタータ第215番、195番
*J.S.バッハ:モテット集BWV225−230
*シュッツ:ダヴィデ詩篇集(1619)

バッハのカンタータはさすがに並みいる名盤に一歩を譲るものの、密かに期待していたシュッツはよかった。


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