ベルリオーズの大作《トロイ人(トロイアの人々)》は、「フランスの“リング”」というアオリ文句もつく全五幕の長丁場オペラ。ローマの詩人ウェルギリウスの叙事詩《アエネーイス》を題材とし、トロイアの陥落、カルタゴでのアエネーアスとディードーの恋と別れを描く。なにぶん長く、ヘビーな曲が多いため、上演、録音とも数は多くはない。しかし、聴いて損のない(観れればもっといいけど)オペラだ。
聴くとなれば、最近出たデュトワ/モントリオール(ロンドン/デッカ)のやつしか国内盤はない。対訳無しで聴くのは何なので・・・しかし、名盤となると、コリン・デイヴィス/コヴェント・ガーデン(フィリップス)。これを聴かないと「トロイ」を聴いたとはいえないという感じ。だが更に、これも聴いておかなければという盤が存在する!
まずはこれ。
*ヘルマン・シェルヘン指揮 コンセルヴァトワール・コンサート・ソサエティー・オーケストラ パリ声楽アンサンブル ( 全曲の第3幕から第5幕まで、いわゆる「カルタゴのトロイ人」バージョン)
[TAHRA TAH143/4]
シェルヘンというだけで期待大だが、期待を裏切らないところがシェルヘン先生。基本的には堂々とした、正攻法の安心して聴ける演奏なのだが、第1幕(全曲版での第3幕)フィナーレでいきなりネジが外れたように猛スピードに加速、凄いことになる。それについていってる皆さんも凄い集中力。
しかし、真打はこれだ。
*ラファエル・クーベリック指揮 ミラノ・スカラ1960年5月27日ライヴ ハイライト
[VAi AUDIO VAIA1026]
トロイ人を復活させた男・クーベリックによるスカラ座・ライヴ。イタリア語翻訳版だが、それはさて置き、何が真打といえば、アエネーアスが、マリオ・デル・モナコ!!
彼がもう、凄いんです。第5幕の「カルタゴを去らねばならぬ!」の絶唱は打ちのめされます。スカラのお客さんも拍手とブラヴォーの嵐。1分30秒続いてまだ鳴り止まぬところをフェードアウトしていくので、いったいいつまで続いたのやら・・・オペラ好きは、これを聴かねば死ねません、マジで。
しかしさらに2001年、ヘビーな逸品登場。
*サー・トマス・ビーチャム指揮BBC劇場合唱団、ロイヤル・フィルハーモニック管弦楽団(1947年録音、全五幕抜粋版、3CD)
[マリブラン・ミュージック]
これは見た瞬間買うでしょう。
でもまだ来るトロイ人。
*ラファエル・クーベリック指揮 ミラノ・スカラ1960年5月30日ライヴ
[MYTO RECORDS 3 MCD 021.256]
ふたつ上のCDの3日後のライヴ。こっちはカットなしでその日の演奏をすべて収めている。ただし台本は全5幕よりの抜粋、イタリア語版。
デル・モナコやほかの名手たちの技を存分に堪能せよッ!
ちなみに主な他のキャスティングは、
ディドー:ジュリエッタ・シミオナート
カッサンドラー:ネル・ランキン
コロエブス:リーノ・プリーシ
アンナ:アドリアーナ・ラッツァリーニ
アスカニウス:フィオレンツァ・コッソット
いかがです?
で、サー・コリン、再録音。
*サー・コリン・デイヴィス指揮 ロンドン交響楽団&合唱団
[ロンドン響自主制作CD、LSO 0010]
2000年12月、バービカンでのライヴ録音。
コヴェントガーデン盤に比べると、オケがちと機動性に欠ける印象。まとまってはいるんだけど・・・
カバーのサー・コリンの写真写り、マッド・サイエンティストみたいでベリーナイス。
アエネーアスはベン・ヘプナー、ディドーはミシェル・デヤング、カッサンドラーはペトラ・ラング、アンナはサラ・ミンガルド。
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