NO DOUBT〜C&Aにとっての”曲がり角”〜

あまりにも強烈なインパクトを与えた「群れ」から二ヶ月あまり。チャゲアス20周年の記念日に発売された「NO DOUBT」の感想を、できるだけ簡潔に書いてみました。さらりと読んで頂いて、「こういう受け取り方の奴もいるのか」くらいに認識してもらえたら幸いです。


1.no doubt

意外にも1曲目は失恋の唄です。発売前に出されていたシングル「群れ」に心を奪われていた僕にとってはいきなり意表をつかれた感じでした。アルバム11曲中、もっともチャゲアスのシングルらしい曲だと思います。胸を締め付けられるような歌詞は男の僕でも大変共感を覚えます。個人的にはすごく好きな1曲です。
「僕らは夏の肌が消えるように 別れた」サビのこの1節がインパクトありました。切ないです。

2.the corner

さわやかなギターサウンドが心地よいです。歌詞は「群れ」を前向きにしたような感じでしょうか。これこそが”我が道をゆく”ということなのでしょう。サビは結構棘のあることを言っているような気がしますが、「群れ」があまりに強烈だったのでそれほどショックを受ける人はいないのではないでしょうか。
 さわやかな感じの曲調にこの歌詞は賛否両論ありそうです。僕はお気に入りの1曲。

3.swear

「群れ」のカップリング曲です。正直あまりピンときません。曲調とアレンジと歌詞、全部う〜ん・・・。CHAGEのメインを覆い尽くさんばかりのASKAのコーラスは圧巻です。

4.僕がここに来る前に

子供の頃の思い出は恋愛とは別の意味で胸が締め付けられるような、なんともいえないものがあります。僕も小さい頃遊んだ場所を通ると時々そういった感情を抱きます。そしてその頃の自分が今の自分につながっているというのも大いに頷けます。
 ただ残念なことに、「菜の花の向こうにあるキャベツ畑」というのが僕には想像できませんでした。蝶々を捕まえにキャベツ畑に行く、という行為が僕の子供時代にはなかったことだからでしょうか。ぼんやり光景が浮かんできそうなこの曲調が好きなだけにちょっと残念でした。

5.熱帯魚

ASKAのコーラスを「必要なし」、とまで言ったことがまず特筆すべきことではないでしょうか(笑)。曲調も歌詞も深く重いものを感じさせます。1曲としてはすごくいい曲なのですが、アルバムの流れで聴くと、「僕がここに〜」と来てこの曲はちょっとつらいです。
 「GUYSの再来」という感想を目にしましたが、おそらくこの辺の流れを聴いてそのように表現したのではないでしょうか。

6.higher ground

ゲームを皮肉った歌詞でしょうか。このような歌詞を書かせたら右に出るものはいないような気がします。ベースの重い音を全面に押し出したようなアレンジが作られた冷たいゲームの世界を想像させます。
 「自分がゲームの主人公になったらどうなるだろう」というテーマなのでしょうが、ヒーローになって謎を解くでもなく、悪を倒すでもなく、「生きることを与えられた」とするあたり凄いです。
「季節も空も 用意されてる すべてが次を 用意されてる」ま、まさにその通りです・・・。 

7.two of us

70年代がテーマで、さらに「誰もが映像を思い浮かべられる」というのがテーマらしいです。個人的にはギターのシャキ―ンって感じの(よくわからん)アレンジがすごく気に入っている1曲です。
 「過去のことを書くのが好きやね」なんて突っ込みがどこからか聞こえてきそうです(笑)。

8.群れ

まさにファンの間で「物議を醸し出した」1曲。アルバムを聴くと、個人的にはこの曲がアルバム全体を引っ張っていくのかな、と思っていたので、意外にもこの曲のインパクトが薄いです。あくまでも「釘をさしておいた」というか、「1つポイントを作っておいた」1曲なのでしょうか。
 この手の曲は、作り手のもとを離れて良くも悪くもファンの間で育っていくというのがよくあるパターンなのですが(PRIDEなんかはまさにその典型ですね)、この曲に関してはどうなのでしょうか。僕はこの先そんなに人気曲にはならないような気がします。
 「しけたマッチで俺を湿らすな」といくら唄ったところで「知らない振り」をするファンが大半ですからね。(ちょっと皮肉)

9.もうすぐ僕らはふたつの時代を超える恋になる

前曲からのつながりのせいで、僕がこのアルバムの中で最も違和感を覚えてしまう部分。「俺を湿らすな」と叫んでおいて「アイラブユーで腰をぎゅっ」ですか・・・(笑)。
もともとASKAが作っていたようなジャンルの曲をCHAGEが担当した、というのが僕の感想。ASKAがサビでメインを取ってしまうあたりにこの曲の意味に疑問を感じますが、コンサートで歌った場合どういう反応をすればよいのか男の僕は今から心配です(笑)。恋する乙女のための1曲なんでしょうか。

10.vision

チャゲアス復活シングルの片割れ。僕は2曲ともお気に入り。互いにソロをやってきて、特にASKAのほうは「Kicks」でソロの究極系ともいう作品を作り上げた中で、いきなりチャゲアスとして1つの作品を作るのは困難だったと思います。この曲は二人のユニゾンや掛け合いの部分でお互いの個性とその融合を見事に表現していると思います。シングルとはアレンジが微妙に違っています。僕はこちらのバージョンのほうがしっくりきます
 やはり
「道なき道を〜」の掛け合いの部分がすごく好きです。この曲はただ素直に「好き」です(笑)。

11.この愛のために

これもアルバム用に、というか最後の曲だからなのか、出だしの部分がシングルとは違っています。この曲もかなり好きです。カラオケで歌うと高音がきついですがすっきりします。大声で歌うべし。コンサートでもなかなか盛り上がれそうな1曲。


アルバム全体としてはしっくりこない部分、好きな部分と色々ありますが、1曲1曲はバラエティーに富んでいてお気に入りの曲が多いです。この「はっきりとジャンルわけ出来ない微妙な音楽」が、もともと僕の好きなチャゲアスのサウンドだったわけで、「Kicks」のように極端に音楽性をはっきりさせた作品も好きですが、この「二人の個性が作り出す微妙なバランス」も大きな魅力だと思います。
 そしてこの辺は想像の域をでないのですが、アルバムの色を決定付けたのは、発売前に行われた「プレミアムライブ」だったのではないか、という気がします。あのライブで自分たちの昔の楽曲をアンプラグド形式で演奏することが、「シンプルな音作り」という点で多少の影響を与えたのではないか、と思います。アレンジなどにシンプルさを感じるのですが、特にそれを感じるのは1曲目の「no doubt」あたりでしょうか。一部に「おとなしい」という感想がでたのもこのプレミアムライブの影響を受けた部分のせいではないでしょうか。・・・あくまでも想像

最後に、このアルバムに自分なりに副題をつけるとしたら、「チャゲアスにとっての”the corner”」ってところでしょうか。今はあくまでも彼らにとっての過渡期のような気がします。これから先もチャゲアスが続いていくとしたら、今がまさに”曲がり角”なんだと僕は思います。この曲がり角の先にどのような音楽が待っているのかはまだわかりませんが、それを見てみたい、聴いてみたい、と思わせるだけの作品だったかどうか。・・・う〜ん、個人的にはセーフ(笑)。

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