テンポイントのおかげです

僕は弱冠二十歳です。                             
今年ようやく21になります。                         
テンポイントは僕が生まれる前に走っていた馬ですが、              
僕と競馬との出会いにはテンポイントがいました。                
それは、杉本清さんの「あなたの、そして私の夢が走っています」         
という、本の中です。                             
当時、まだ、中学か、高校ぐらいです。                     
実況を綴った文を読みながら、その光景を脳裏に浮かべ、             
涙を流したのを今でも覚えています。                      
テンポイントという、美しく、そして強い馬。                  
競馬を知る前の僕に、競馬をギャンブルとしてではなく、             
もっと別な見方を教えてくれた馬です。                     
最初に知った馬が、彼であったということは、僕にとって幸せ以外の        
何物でもありません。                             

僕の目に止まった、テンポイントと同じ栗毛馬がいました。            
当然、現存する映像でしか、テンポイントを見たことのない僕です。        
比べることはできませんが、僕の中で強烈な印象を残した馬です。         
その名はサイレンススズカ。                          
スズカのデビュー当時まだ学生でした。                     
クラスの人らに、とんでもない馬がデビューしたって言いまくりました。      
5歳になって、彼は本格化し、その大逃げは、僕の少ない競馬歴の中にはない、   
とんでもない馬になりました。                         
しかし、スズカも、あの秋の天皇賞で、この世を去りました。           
レース後、無事を祈り続けていました。                     
しかし、NHKのニュースで無情にも安楽死を告げられました。          
頭が真っ白になり、自然と涙が流れてきました。                 

テンポイントとは比べられることでは、できないかもしれません。         
ただ、同じように血を残すことのできなかった名馬。               
そして、同じように多くの人に愛されていた馬です。               
僕は本で出会い、映像の中にしかいなったテンポイントと             
サイレンススズカをダブらせるようになったのは、                
スズカがあの世に走り去ってからです。                     
海外遠征の話もありました。                          
僕は、スズカと出会い、とんでもない悲しみに遭遇しました。           
しかし、それ以上にたくさんの夢を見せてもらいました。             
スズカには、本当にありがとう、お世話になりましたって言いたいです。      
そして、競馬を見るきっかけとなったテンポイントにも、心底お礼が言いたいです。 
貴方のおかげで、本当にすばらしい馬と出会えました、と。