その55:もう、時効ですよね? その2
ソースは自分がこの耳で聞いた、というものなので、真偽の程は定かじゃないんですが。
かなり昔のこと。当時、お世話になっていた企画会社の社長に、どこぞの忘年会に連れていかれました。いや、ハッキリ言っちゃうと、あれは本当に忘年会だったのか?と思うぐらい印象が薄いパーティです。
それなりのお店で、それなりの人数が集まっていたように思いますが、どういうつながりの人たちなのか、さっぱりわからず、知り合いもゼロという宴席。正直、居心地はあまりよくないシチュエーションでした。
で、すっかり手持ち無沙汰で、会場の隅でぽつねんと立っていたら、見かねた社長に呼ばれました。
「おまえと話の合いそうな人がいるぞ」
紹介された人物は、自分よりちょっと年上?の、ごくごく普通のサラリーマン風の人。自衛隊や米軍の関連企業とも取引のある金属加工メーカーの人だそうで、チタニウムの研究をしているんだとか。
とりあえず挨拶すると、先方はポケットから一枚の金属板を取り出しました。
爆発の衝撃で変形したチタンの試料で、爆発成形という技術なのだそうです。
「チタニウムは加工コストが高いんです。材料費の300パーセント」
なるほど……とうなずきましたが、パーティの席に何故そんなものを?
そうして話をしているうちに、相手はかなり重度のガン・マニアであることが判明。軍オタは銃オタを兼務している人も多いですが、微妙にベクトルの違う趣味です。
ちなみにその人はグアムに部屋を借りてて、現地で手に入れた実銃をキープしてるんだとか。
「今度、遊びにきてくださいよ。一緒にシューティングレンジに行きましょう」
「ええ、是非とも」
もちろん外交辞令です。
実はわたし、オモチャならともかく、拳銃という奴があまり好きではありません。
理由は危なっかしいからです。ちょっと手元が動くだけであらぬ方向に銃口が向くので、持っているだけでイヤな気分になります。自動小銃とかは担いでりゃいいので気楽なのですが。
で、サラリーマン氏に話を戻しますと、ご本人は知識と技術、それに設備や道具があるので、現地で実銃をカスタム化することもあるんだとか。
さらに仕事の関係で米軍基地に出入りしており「身元がはっきりしている&社会的信用がある」ということで、警察関係者とも関係が深いそう。仲良しになったあっちの警察官から頼まれて、フルオートでの作動が禁止されてる市販のサブマシンガンなどを、チョチョイと改造して、フルオート機能を復活させてあげたりもするのだとか。
「……それって違法なんじゃ?」
「向こうは“俺は警官だ。だから問題ないのだ”とか言ってるんです」
「いかにもアメリカンですねぇ」
「あいつらメチャクチャですよ。休日にバーベキューやりながらビール飲んでると、いきなりハンティングに行こう!とか言いだす」
「グアムでハンティングですか?」
「そうなんです。で、“獲物はなんだい?”と聞くと鶴だという」
「鶴? グアムに鶴なんていましたっけ?」
「僕もそう思って聞いたら、クルマに乗せられ(注・ドライバーは酔っ払った現職の警察官)、いきなり空港近くの空き地に連れてかれました」
「はぁ」
「で、どこに鶴なんているんだよ〜?って聞いたら、“ほらきた! 鶴だっ!”って叫んで、いきなり拳銃を抜き、空港にアプローチしてくる着陸態勢の日航機めがけてパンパンと撃ち始める!」
「なんですと?」
「まぁ、まだ十分な高度があるんで当たるわけないんですが、それ見た時は一気に酔いが醒めましたよ」
「そりゃそうだ……。しかし、そうなるとカンタス航空だとカンガルー狩りになるんですかね?」
「かもしれません」
もちろん酒の席で聞いた話ですので、真偽のほどは定かではありません。
日航の鶴丸マーク復活というニュースを見て思い出した話です。
そんなに日本航空に強い思い入れがある人間ではありませんが、それでもあの鶴のマークは復活してよかったと思います。撃たれちゃたまりませんが。
(2011/03/07)