ひとりごと

 毎日、学校や会社に行くわけではないので、わたしは一日の大半をひとりで過ごします。
 
そのせいでしょうか、とにかく独り言が多い。  
 気がつくとブツブツ言っています。家族と食事をしている時などでも無意識に出るらしく、よく文句を言われます。「キモチ悪い」と。  
 恥ずかしいけど仕方ありません。  
 駅のホームで奇声をあげている人を見かければ、誰だって距離をおきたくなるものです。そんなしょっちゅうあることではありませんが。  
 もちろん、わたしの独り言は「トして目せキー!」とか「宅もッ区はせしく!」とか言うものではありません。それではキチガイです。ほとんどの場合が仕事に結びついています。  
 ただ、それにしたってやはり良し悪し。  
 たとえば登場人物が、誰かを殺すシーンを考えているとします。色々と思案をめぐらすが、どうにもセリフが決まらない。
 「殺してやる」「死ね」「死ねば?」「死んじまいな」  
 うーん・・・どれもイマイチ。  
 はてさて登場人物はどんな気持ちで、どんなセリフを言うだろう?  
 考えているうちに、やはり独り言が出ます。実際に口に出して、色々とシミュレーションするわけですね。  
 まずいのは、これが夜道で散歩中だったりした場合。
 「死ね」とか「殺す」とかブツブツ言っている奴がテクテク歩いているわけです。冬場でコートを着込んでいたりすると、もう危険人物。  
 たまたま前を歩いていた勤め帰りのOLさんの歩調が速くなります。  

 すみません。  
 あの時は気がつきませんでした。   
 あなたをおどかすつもりはなかったのです。  

 これからは散歩中はガムを噛むことにします。