踊るナチス

 先日、ミュージカル映画の「プロデューサーズ」を見てきました。
 そんなに沢山見ているわけではありませんが、ミュージカルは結構好きだったりします。それから、もちろんミリタリーも好き。
 というわけで、ミュージカルにミリタリー・テイストも混ざっているという本作は、少々気になっていたのです。あんまり健全な関心の持ち方じゃないような気もしますが、ともあれ劇中劇「春の日のヒトラー」は、なかなか楽しい出来映えでした。
 元々がブロードウェイで大ヒットした舞台なだけに、脚本もよく練られています。面白かったのは「アドルフ・ヒトラーのミドルネームはエリザベスだ」というセリフ。
 もちろんウソですが、イギリス王室がハノーヴァー王朝と縁のあるドイツ系であることや、同じく王室がらみで大チョンボかましたナチスの副総統ルドルフ・ヘスのエピソードなんぞを思い出して笑ってしまいました。
 まぁ、そこまで考えて作られたセリフとも思えませんが。

 ところで、ミュージカル映画でナチスと言えば「サウンド・オブ・ミュージック」も外せません。「ドレミの歌」で有名な作品ですが、日本でも「トラップ一家物語」というタイトルでアニメ化されてます。ナチスの描写がとても濃いのは入念なリサーチの賜物でしょう。おかげでヨーロッパでそのまま放映できるとは思えない出来映えです。
 この「サウンド・オブ・ミュージック」は、実話が元になっています。
 舞台はオーストリアのザルツブルグ。時代はナチスによるオーストリア併合が迫る直前。トラップ一家は祖国に失望してスイスへ亡命し、最終的にはアメリカに渡ります。
 そんな彼らの姿は「祖国を見捨てた人間」という風に映るのでしょうか。地元オーストリアでは、映画の評判はあまり芳しくないのだそうです。
 その「サウンド・オブ・ミュージック」ですが、知り合いの方に面白いエピソードを教えてもらったことがあります。
 映画のラスト、スイスとの国境を目指して黙々と山を登るトラップ一家のシーンが出てくるのですが、なんと彼らが向かっている先はドイツなのだそうです。
 日本人のわたしたちにはわかりませんが、地元の人が見ると、周囲の風景などから一発でわかるのだとか。もちろんそれで映画の価値が損なわれるわけではありませんが、変なところでハリウッドだなぁと思いました。  

 余談になりますが、日本では劇団四季のミュージカルが有名です。
 やはり戦争とか歴史をテーマにしたオリジナル作品を上演しており、その中の「異国の丘」という舞台に、ちょっとだけ協力したことがあります。
 その後、公演を見ましたが、「さぁ、泣け!」というメッセージが舞台から千本ノックのように伝わってきて、いささか食傷気味になった記憶があります。
 こちらはこちらで、いかにも日本人らしい舞台だなぁと思いました。ミュージカルは明るくて笑えるものが好きです。